デジタルサイネージビジネスが変容しつつある。ユーザー企業に販促のツールとして提案するという従来型のビジネスに加えて、業務効率化や営業現場の改善など会社の成長につながる情報共有のツールとして提案できる環境が整ってきた。ITベンダーにとっては、ビジネス拡大のチャンスが到来していることになる。デジタルサイネージの可能性を探った。(取材・文/佐相彰彦)
コンテンツ制作が市場拡大のカギ
「オフィス内の利用」が新たな用途に浮上
これまでデジタルサイネージを利用するシーンとしては、広告看板や交通広告などの屋外での利用、金融機関での接客サービスや大型商業施設などでの販売促進を目的とした屋内での利用が一般的だった。したがって、デジタルサイネージ関連ビジネスを手がけるITベンダーは、鉄道関連の企業、金融機関、商業施設を運営する不動産関連の企業、スーパーなどの小売業といった業界を対象にシステムの提案を進めてきた。
この屋外・屋内での利用は、今後も継続して拡大することが見込まれる。とくに、コンテンツ制作や配信サービスがビジネス拡大の決め手になりそうだ。調査会社のシード・プランニングは、国内デジタルサイネージ市場が2012年時点で2000億円規模になると見込んでおり、2016年には6倍以上にあたる1兆2634億円と予測する。1兆円を超える規模にまで膨れ上がる要因として、コンテンツ関連ビジネスがカギを握ると分析している。このような状況から、デジタルサイネージシステムを提供する際に、コンテンツ制作や配信サービスに力を注ぐITベンダーが多くなっている。とくに配信サービスについては、月額課金などのストック型ビジネスとして新しい収益源を確保しようとする動きがある。
また、最近では屋外・屋内の利用だけでなく、間接部門の業務効率化を目的にオフィス内でデジタルサイネージを導入する機運が生まれている。オフィス内の目に止まる場所や社員の集まる場所にディスプレイを設置して、社内の連絡事項や全社で共有すべき情報などを配信。ここでも、ハードをできるだけ安くしてユーザー企業の初期投資を抑え、コンテンツを配信するシステムやサービスでビジネスとして成立させようとしている。
以下、ユーザー企業の導入意欲をさらに高めていくためのITベンダー各社の提案例を紹介する。
【提案1】
[活用シーン=屋内]端末・サービスの課金制
●<グリーンハウス>
端末・サービスをパッケージ化月額課金で導入の障壁を低く グリーンハウスでは、初期投資が高いことを課題として挙げているユーザー企業が多いとみている。このネックを解消するために、初期コストを必要とせず、端末やコンテンツ制作・配信、販売促進企画サポートまでをパッケージ化した「デジタルサイネージセット」を提供している。
同社の山本剛司・本社法人営業部SP営業課長は、「導入する意欲はあるが、その一歩が踏み出せないユーザー企業が多いので、敷居を低くした」と説明する。
「デジタルサイネージセット」は、ディスプレイなどハードとコンテンツ配信などサービスを組み合わせたもので、コンテンツ制作のアドバイス、売れるコンテンツ制作セミナー、調査・分析とのマーケティングを踏まえた企画提案などを提供する。月額課金を基本に、料金はコンテンツサービスの量や配信場所の数によって異なるが、ユーザー企業が導入しやすいように月額1万5000円を切る価格に設定している。なお、ユーザー企業が2年間といったように、あらかじめ利用期間を決めておくことを条件としている。
このパッケージを導入することによるユーザー企業のメリットは、初期コストを抑えられることや、デジタルサイネージを使った販売促進のノウハウを蓄積することができる点にある。販社にとってのメリットは、2年間などユーザー企業が確実に使ってくれる期間があるので、収益が確保できることだ。収益確保に関しては、ユーザー企業が契約した期間分の合計金額を、グリーンハウスが販社にあらかじめ支払う「回収プログラム」と呼ばれる仕組みを用意している。
現在、中堅・中小の小売業を中心に拡販を図っている段階。昨年度(12年3月期)は、東日本大震災の影響による計画停電で、デジタルサイネージの導入機運が低く厳しい状況だった。今年度は、デジタルサイネージ関連ビジネスで前年度比2倍以上の売上高を目指している。
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