システム運用管理システムのビーエスピー(BSP、竹藤浩樹社長)とデータ・システム連携のビーコンインフォメーションテクノロジー(ビーコンIT、新藤匡浩社長)のユーザー企業で構成する「Beaconユーザ会」(坪井祐司会長=LIXIL上席執行役員企画管理本部長)は3月7-8日の両日、滋賀県の大津プリンスホテルで年一回恒例の「Beaconユーザシンポジウム」を開いた。今回のシンポジウムは、30回を迎えた記念イベントで、参加者・社数ともに239社/725人で過去最高を記録した。年々参加者を増やす国内最大規模のユーザー会が開いたイベントを2回にわたってレポートする。(取材・文/谷畑良胤)

ユーザー企業を中心に725人が一堂に会した
(大津プリンスホテル。壇上で挨拶するのは坪井祐司会長)加盟社は過去最大の275社に
「Beaconユーザ会」は、1977年にユーザー相互の情報交換を目的に設立された。現在、LIXILなどのユーザー企業275社が加盟している。昨年、坪井会長は「次回開催は、記念イベントになるので、700人の参加を目標にしている」と宣言した通り、シンポジウムの参加者は、700人を大きく超えた(前回は226社/690人)。
Beaconユーザ会には、東日本、中部、西日本、九州の各地区に両社の製品・サービスに関連する情報活用研究会、システム運用研究会、ITフォーラムと称する研究組織がある。全国組織としてのマネジメント研究会と中国・上海にある上海ITフォーラムなどで構成されている。
シンポジウム当日は、底冷えする冬の気配が一変し、琵琶湖周辺は春の暖かさに恵まれた。初日にはBSPとビーコンITの両社の戦略の発表や事例紹介が行われ、二日目にユーザー企業の若手技術者らが一堂に会して、1年間研究してきた成果を発表し、活発な議論がなされた。
初日の冒頭で挨拶に立った坪井会長は、「ユーザ会の加盟社は、過去最大の275社になり、今回のシンポジウムに150人が初めて参加した。そのユーザ会が主催する今日の場は、業種業態、立場を越えたオープンな交流をする機会だ。明日のITを支える人材育成の場である」と述べ、ユーザー同士の活発な議論と交流を求めた。
シンポジウムで発表される研究会の内容は、かつては発表前に論文提出を義務づけて運営事務局が審査をしていたが、「論文作成に時間がかかり、研究内容が浅くなっていた」(坪井会長)との反省に立って、今回から論文を廃止し、当日の一発勝負とした。このため、連続参加者からは、例年に比べて発表内容に厚みが増したと評価する声が聞こえた。
BSPとビーコンITのシナジー強化
続けて、昨年6月22日に就任したビーコンITの新藤社長が、これまで1年間の総括と事業の新しい方向性を示した。「昨年8月に兄弟会社であるBSPとのシナジーを強化した。中国・上海の拠点で扱うBSPの主力製品を足場に、両社で事業展開できるよう当社製品を含め販売機能を統合した。当社は、顧客の願いを形にする集団『ソフトウェアマイスター』を目指している」としたうえで、同社のコンセプトであるシステムを統合的に考え、シンプルなITを実現する「Unify IT!(ユニファイ イット)」に関連する製品の進化を伝えた。
このうち、ビーコンITの主力製品である国産ETL(データ抽出、変換・加工、ロード)ツール「Waha!Transformer(ワッハートランスフォーマー)」の機能拡充について、事例を交えて説明した。例えば、スポーツ製品大手のミズノでは、35年間使い続けているメインフレームと連携するERP(統合基幹業務システム)をサブシステムとして導入し、その連携機能として「Waha!Transformer」を導入した。新藤社長は「世界最高速のETLを使いERPの差分・削除レコードなどの抽出をBSP製品のジョブ管理ツール『A-AUTO』で行い、出荷した」と、ミズノ導入の経緯を述べた。「Waha!Transformer」は、大量データ処理を可能にするためオラクルの「Exadata」とネイティブに連携、将来のビッグデータのニーズに応えるシステムへと進化していくという。
また、この後には、BSPの竹藤社長が製品の方向性を語った。3月6日、ITシステムのインフラから各種運用管理機能までをサービス化して提供するクラウドサービス「Be.Cloud(ビークラウド)」と、運用業務代行を行う運用BPOサービスを発表。竹藤社長は「ITシステムがクラウドへ移行していくと、システム運用はどうなるのか」と、問題を投げかけた。
そのうえで、「クラウドの普及で、過剰な自前主義を改め、クラウド環境を含めた保守・運用のサービスマネジメントをすべき時代が来た。既存のオンプレミスのIT資産を価値分析し、必要に応じて外部のクラウドリソースへ委託運用する傾向が強まる」と述べ、サーバー、ストレージ、ネットワークなどのシステムリソースを複数のクラウド上に構成することができる「Be.Cloud」などを使っていく必要性を説いた。初日はこのほか、両社の製品を導入したJX日鉱日石金属やトヨタ紡織などの事例発表と、連携製品をもつITベンダーの製品紹介のセッションが行われた。(つづく)