ひと口に営業職といっても、いろいろなタイプがある。複写機などを展開する富士ゼロックスのソリューション営業のエース、鹿野理人さんは、ヘルスケア業界で活躍するいわゆる“専門営業”だ。客先である製薬会社の業務を詳しく調べて、込み入った情報や専門用語を処理する技法も得意技の一つとしている。お客様自身も把握していない業務プロセスや課題を可視化して、提案活動に励んでいる。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
[語る人]
●profile..........鹿野 理人(しかの みちひと)
大学卒業後、1996年、富士ゼロックスに入社。栃木県に配属され、新規顧客を開拓する営業を担当。その後、東京に異動し、鉄道・鉄鋼業界向けのソリューション営業に携わる。2009年10月に製薬業界のソリューション専任営業となる。現在は、ヘルスケア営業部で販売会社の営業担当者とタッグを組んで、製薬会社へのソリューション提案や新規ソリューションの開発を手がけている。
●会社概要.......... 複写機やプリンタなどオフィス機器を主要商材とするメーカー。設立は1962年。日本のほか、アジアなど海外でも事業を展開する。従業員数は4万5282人。本社は東京・赤坂。
●所属..........中央営業事業部
ヘルスケア営業部
●営業実績.......... 大手企業を中心におよそ300社のクライアントを担当。コンスタントに大口案件を獲得し、常に高いレベルの業績を上げている。
●仕事.......... 製薬会社を相手に、文書管理や業務フローの改善に関してのソリューション営業を担当している。直接エンドユーザーに提案するほか、各地の販売パートナーと連動する提案も手がける。合わせて、全国で約300社の製薬会社を担当。週のうち2日は営業訪問、3日は資料作成と、先方の要望に丁寧に応えるために資料づくりの作業に時間をかけている。
業務と課題を俯瞰する図を作成
今年3月、1年をかけて進めてきた案件がようやく受注に結びついた。大手の製薬会社に提案した情報管理の電子化ソリューションで、私が強みとしている「お客様の問題点の整理」が効果を発揮して注文をいただいたものだ。今回はこの案件の進め方について話そうと思う。
◆ ◆
私は、大学で航空機の設計を学んだ。その頃から、大量の込み入った情報を収集して、整理することを得意としてきた。「見える化」という言葉をよく聞くようになったが、私は営業として、まさにお客様の業務プロセスを見える化することに最も力を入れている。
3月に受注をいただいた製薬会社は、多くの部門が絡み合う大規模な組織だ。初めて電子化ソリューションの提案で訪問したときに、その会社の業務プロセスを全体として把握する人材が現場に配置されていないことに気づいた。これは自分の出番だ、と情報整理の腕をみせるチャンスを直感した。
地方の製薬会社は、まだ紙ベースで情報を管理していることが多い。だから、電子化ソリューションに関するニーズは高い。しかし、電子化によって業務がどのように改善されて、情報管理にかける時間やコストをどれほど削減することができるかを具体的に示す必要がある。つまり、こちらの提案を受け入れてもらううえで前提になるのは、お客様の業務の流れをきめ細かに把握するということだ。
今回の案件で、毎週のようにお客様の会社に足を運び、各部署の担当者に組織や業務について調べた。レコーダーで会話を録音し、会社に戻って、データの整理に取り組んだ。製薬会社だから、業務プロセスが複雑なだけではなく、難しい医療用語も頻繁に出てくる。打ち合わせの場ではすべての情報は処理しきれないので、録音して、後で追加情報を収集したり、用語の正確な意味を念入りに調べたりした。
目指したのは、お客様の組織・業務とその問題点を俯瞰することができるチャートをつくることだ。何回もお客様を訪問しながらチャートづくりを進めて、「これで間違いないですか」と訪問先で事実を確認しながら、最終的な図を描いた。先方にお渡ししたら、興味深く見てもらい、「自分の会社のことなのに、すごく勉強になった」と感謝の言葉をいただいた。
受注までの期間は1年と長く、うまく進まない時期もあった。とくにチャートづくりは地味な作業で、頭を使うので大変だった。しかし、最後に外部の人間である私が「勉強になった」とお客様にほめられたときは、「よし、やった」と満足を感じた。自分の得意技に改めて自信をもつことができた瞬間だった。