アイコトバ(田中謙二社長)は、飲食店や美容室などの店舗のクーポンを配信するウェブサイト「アイコトバ」を運営している。広告主がPRしたい任意のキーワードを穴埋めクイズとして出題し、利用者が正答することでクーポンを提供している。クイズの回答方法は、これまで手入力に限られていたが、広告となる穴埋めクイズを利用者により印象づけるために、アドバンスト・メディアが提供する音声認識技術「AmiVoice」を導入し、音声によって回答できるようにした。
ユーザー企業:アイコトバ
2011年4月5日に設立。資本金は2400万円。飲食店や美容室などのクーポンを配信するウェブサイト「アイコトバ」を運営。クーポン配信元から掲載料を徴収しない独自の収益モデルを構築している。
製品提供会社:アドバンスト・メディア
製品名:「AmiVoice」
【課題】音声認識で広告効果を高めたい

田中謙二社長 「アイコトバ」では、広告主がPRしたい任意のキーワードを穴埋めクイズとして出題し、利用者が正答することによってクーポンを提供するかたちをとっている。例えば、“クーポン配信サービスといえば?”というクイズに対して、利用者が“アイコトバ(任意のキーワード)”と回答すれば、クーポンを提供する。広告主は、単純に宣伝広告を利用者に見せるのではなく、“合い言葉”としてキーワードを主体的に入力してもらうことで、利用者に深く印象づけることができるわけだ。
独特のクーポン配信サービスなので、収益モデルも一般的なクーポンサイトとは一線を画している。クーポンの配信元となる店舗・企業から掲載料や販売手数料、システム利用料、成果報酬を徴収するのではなく、穴埋めクイズを出題する権利を広告主に販売する仕組みだ(特許出願済)。
「アイコトバ」のクイズの回答方式は、これまで直接指で文字を打ち込むに方法に限られていた。しかし、「アイコトバ」にとって、広告主のPRしたいキーワードを、より利用者に印象づけることが顧客満足度の向上につながる。そこで、「利用者の印象に強く残る方法として、音声による回答の入力を考えた。また、音声ならば、ユーザーがいちいち指で打ち込む必要がなく、利便性を向上するというメリットも感じた」(田中社長)ことから、音声認識ソフトの検討を開始した。
音声認識の製品はそれほど多くない。そんななかで、「試すことができるものは検証してみた。しかし、フリーソフトは品質が悪くて、海外の製品は柔軟な日本語に対応していなかった」(田中社長)という。結果的に、国内の音声認識ソフトでは、コンタクトセンターや医療機関などで実績の豊富なアドバンスト・メディアの「AmiVoice」を採用することに決定した。
【解決と効果】生き残りをかけて先手を打つ
「AmiVoice」を選択した理由は、「大規模な導入の実績が豊富で、大量の利用者が音声認識を利用してもトラブルを起こすことのない拡張性を実現していた」(田中社長)からだという。

声を発して入力することで、利用者に強い印象を与える しかし、コスト面では、初期費用が100万円ほどかかり、月額利用料も発生する。ベンチャー企業であるアイコトバにとって多額の投資は容易なことではない。また、音声認識は、クーポン配信サービスに不可欠な要素ではないとみることもできた。それでも導入を決断した理由について、田中社長は、「確かに、音声認識は不可欠ではないかもしれない。ただ、当社のようなベンチャー企業が生き残っていくためには、競合にはない新しい取り組みが欠かせない。『アイコトバ』の収益モデルはその一つではあるが、それだけでは追随する企業が現れてくる。だから、競合がいないうちに性能を向上して顧客を獲得し、この収益モデルでのパイオニアになる必要があった」と説明する。ベンチャー企業が生き残るための、社運を賭けた先行投資というわけだ。
音声認識を導入したアイコトバでは、クーポン配信サービスを拡大するだけでなく、「アイコトバ」の仕組みを他社に売り込んでいく構想を描いている。実際に、交通サービス企業が提供するクーポン配信アプリの中に、「アイコトバ」の仕組みを取り入れることが決まっている。利用者が主体となって、音声によって“合い言葉”を入力するモデルが高く評価されているのだ。
田中社長は、「他社と同じビジネスモデルでは、ベンチャー企業は勝てない。先手を打って新しい取り組みを進めたことが、今回の発注につながっている」と投資対効果への期待を語る。(真鍋 武)
3つのpoint
大規模な利用に耐えられる拡張性
国内での実績が豊富
生き残りをかけた先行投資