百貨店を運営するプランタン銀座(笹岡寛社長)では、既存のPOS関連の基幹系システムが老朽化していた。そこで、POS売上/ポイント管理をはじめ、仕入/棚卸/売掛金/買掛金/管理会計などの基幹業務機能を提供する日本NCR(諸星俊男社長兼CEO)の「百貨店システム クラウドサービス」を導入。これによって、システム運用にかかる手間とコストを削減して、百貨店本来の業務である店頭での販売に集中できるようになった。
ユーザー企業:プランタン銀座
フランス・パリの伝統ある百貨店「プランタン」の日本との提携店として、1984年、東京・銀座にオープンした。ファッション衣料を中心に、生活雑貨、スイーツ、ワインなどを販売している。
サービス提供会社:日本NCR
プロダクト名:百貨店システム クラウドサービス
【課題と決断】安全性と税制改正への対応に問題

業務推進部
堀真洋担当長 プランタン銀座は、東京・銀座の百貨店として知られている。他の大手百貨店と異なり、複数の店舗をもたずに単店舗で事業を展開している。
プランタン銀座では、売上実績を管理するPOS基幹系システムをオフィス内に構築していた。システムは安定して運用していたが、およそ10年前に構築したものなので、老朽化は避けられなかった。業務推進部の堀真洋担当長は、「耐用年数を過ぎていたので、数年前から新システムへの刷新を検討していた」と振り返る。
システム刷新にあたって、堀担当長には懸念していたことがあった。その一つは、システムの安全性だ。「複数の店舗をもつ百貨店なら、各店舗にバックアップをとって、万が一の災害でシステムが停止したときにも安全性を確保できる。しかし、プランタン銀座は、単店舗。このままオフィス内にシステムを残せば、災害時に対応できない可能性があった」(堀担当長)。
また、2014年の消費税改正への対応も問題となっていた。「仮にシステムを刷新しても、税制が改正されれば、再びシステムを改修しなければならない。消費税は税率8%と10%の2段階で引き上げられる予定なので、対応には多額のコストと手間がかかる。そのうえ、百貨店には基本的に休みの日がないので、改修のためにシステムを停止することができない」(堀担当長)というネックがあったのだ。
システムを刷新するつもりだったが、事はスムーズに運ばなかった。既存システムの提供元を含めて数社を検討したが、堀担当長の懸念を払しょくする決定打がなく、採用には至らなかったのだ。
【効果】手間のかからないシステムを実現
自社に適したシステムを探しているうちに、堀担当長は日本NCRが「百貨店システム クラウドサービス」を提供していることを知った。結果的にこのクラウドサービスを採用したのは、課題を解決することができると思ったからだ。POS売上/ポイント管理をはじめとする仕入/棚卸/売掛金/買掛金/管理会計などの基幹業務や、商品/顧客情報分析などの百貨店業務に必要な基本機能を提供する百貨店向けクラウドサービスで、ユーザーは、個別にシステムを構築する必要がなく、投資コストを削減できる。
検討した他のベンダーは、すべてオンプレミス型のシステムだったが、「百貨店システム クラウドサービス」は日本NCRのデータセンター(DC)を活用するシステムで、データ管理や通信回線の冗長性を確保しており、災害への対策にもなる。また、税制改正後には、日本NCR側で対策を講じるために、プランタン銀座側でシステムを改修する手間がなく、本来の販売業務に集中できる。堀担当長は、「百貨店にとって重要なことは、システムの運用・管理に労力を投じることではなく、来店していただいたお客様に満足していただくこと。自社内にシステムを構築せず、手間のかからないクラウドサービスだったことが採用の決定打だった」と説明する。
また、山形の百貨店での導入実績があることや、サポートが充実していたことも導入決定を後押しした。「POS基幹系システムのクラウドサービスを先駆けて開始しているなかで導入実績があったので、システムの安定性に信頼を置くことができた」(堀担当長)。サポートに関しては、採用を決定した12年の7月から現在まで、従業員に対する教育を継続して行っている。
サービスは今年3月1日に稼働したが、今のところトラブルは起こっておらず、将来の不安要素もない。堀担当長は、「今後は、クラウドサービスのメニューに組み込まれているPOSデータの分析機能を、商品の仕入れや店頭の販売に活用して、営業収益の向上につなげたい」と意欲をみせている。(真鍋武)
3つのpoint
クラウドで実績がある
災害時にも安全を確保できる
税制改正に対応できる