その他
サプライチェーンのITコンプライアンスを商機に まだまだ低い製造メーカーの意識
2013/06/13 14:53
週刊BCN 2013年06月10日vol.1484掲載
米国が、製造業における不正競争防止の観点から、ITの不正利用を規制する動きを強めている。
従来、海賊版ソフトウェアなどの違法ITの利用は、各国とも、知的財産法(著作権法)によって規制してきた。しかし、米ルイジアナ州とワシントン州では、知的財産保護とは異なる軸でITの不正利用を規制する州法を施行している。バリューチェーンのなかで違法なIT利用を行っている製造者や販売者を、「不正な手段で不当に製品販売コストを下げ、公正競争を阻害した」とみなし、罰金などペナルティの対象にするという主旨だ。根底には、違法コピーソフトの使用率が高く、国内回帰が進む米国製造業の脅威となっている新興国、とくに中国や東南アジアへの警戒感がある。
「米国では、知的財産に関する法律・制度を貿易政策の道具として使う傾向が強まっている」と指摘するのは、英国に本部を置くIT政策シンクタンク「オープン・コンピューティング・アライアンス(OCA)」のアジア太平洋地域事務局長であるマイケル・マッド氏。2州法の適用事例はまだないが、既存法を活用した同様の規制は、米国全土に拡大している。
日本や欧州には類似の法規制はなく、米国の動きはかなり先鋭的にもみえる。しかしマッド氏は、「今後、カナダ、豪州、欧州など、輸出国の間で同様の規制が広がる可能性が高い。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)においても、知的財産保護の規定は非常に強力なものになるだろう」との見解を示す。
こうした潮流を踏まえてか、当の中国や東南アジア諸国でも、知的財産保護政策は活発化している。その筆頭が、TPP交渉にも参加しているタイだ。タイは、近年、輸出業者と製造業者の違法ソフトウェア使用防止に積極的に取り組んでいる。これらの動きは、日本とも無関係ではない。タイに製造拠点を置く日本企業は多く、今年1月にタイ警察が摘発した19件のソフトウェア違法使用のうち、2件は日本の自動車部品メーカー子会社によるものだった。
先進国のグローバル企業であっても、「サプライチェーン全体のIT資産管理やライセンスの監査に対する意識はまだまだ低い」(マッド氏)のが実状。新興国ではIT製品の流通にも課題があり、違法ITを堂々と流通させるディストリビュータも存在する。
日本のITベンダーにとっては、ここに商機があるはず。IT資産管理・ライセンス監査システムの提供はもちろん、信頼できる販路を提示することも、ユーザーのビジネスリスク低減につながる。不正なIT利用の規制に関する動向を率先して収集し、海外に製造拠点を置く日系メーカーのヘッドクオーターなどに対して、積極的な啓発活動を行う必要がありそうだ。(本多和幸)
米国が、製造業における不正競争防止の観点から、ITの不正利用を規制する動きを強めている。
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料)
ログイン
週刊BCNについて詳しく見る
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
- 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…