前号でソリューション提案の凄腕として紹介したNTTソフトウェアの増田直さんだが、スタートはあまり順調ではなかったようだ。相手の心に響く提案ができず、上司の評価がなかなか上がらなかったという。ターニングポイントになったのは、携帯コンテンツ事業者からサイトのリプレースの注文を受けた入社2年目の経験だ。今回は、増田さんのこれまでのキャリアにスポットを当て、上司が評する「トップクラスのソリューション営業」への道をなぞる。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
2年目の大口受注がターニングポイント
お客様の課題を分析して、解決につながる提案を心がけるようになったのは、入社2年目、初の大口案件の受注がきっかけだった。
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実は、入社1年目の私は営業になかなか馴染まず、苦労した経験がある。NTTグループ向け営業を担当したが、お客様に響く提案ができず、上司に「お前は営業のセンスがないな」と、匙を投げられたほどだ。
2年目に部署が変わり、製造業を中心とするNTTグループ外向けのお客様への営業を担当するようになった。異動になって間もなく、電子書籍など携帯電話向けコンテンツを展開するお客様に、サイトのリプレースを提案した。1000万円規模の大きな案件だ。お客様はコストを重視して、当社よりも価格が安い他社製品も検討しておられた。
私は、価格面では他社に勝てないとみて、安いということではなく、「バリュー」を前面に押し出して、他社との違いを明確にすることに力を入れた。当社の製品を使えば、具体的にどういうメリットがあって、どんなビジネス展開ができるかを示し、最初の提案から約3か月と短時間で受注にこぎ着けた。
この案件の受注を機に、お客様の立場になって課題解決を考える重要性がわかっただけでなく、いろいろ工夫して勝負に勝つことの楽しさも味わうことができた。これがターニングポイントとなり、以後、製品を売り込むというよりは、ソリューション提案を行うことを心がけてきた。
3年目にアカウント営業に移って、文字通り「お客様の立場」になる機会が多くなった。例えば、お客様が忙しいときに、その方が興味を示すセミナーに私が代わりに参加し、セッションの内容を報告することが何回もあった。これは、お客様とのパイプを築くことに役立ったのはもちろん、お客様はどんなことが知りたいかが直接わかるきっかけになった。
これまでの営業活動を通じて身につけてきたのは、お客様の課題を目に見えるかたちにして、解決の策をきちんと考えること。さらに、短期での課題解決にこだわらず、中長期的なセールスシナリオを描き、次に何を提案するかを意識することだ。私は、常にゴールを定めて、その達成に向けて動いている。
現在は、30歳の誕生日を目の前にして、これからのキャリアをどう築いていくべきかを悩んでいる。いつか、企業の経営に携わり、自分自身でサービスを提供したいと考えている。それに向けて、日々の営業活動を通じてお客様の課題を吸収し、解決を提案する腕をさらに磨いていきたい。
●日常使う営業ツール.......... 革表紙のメモ帳という、ごくアナログなツールを、ITのソリューション提案に生かしている。商談の場で客先の課題を文字化し、相手に手渡して確認する。こうして、次の提案へのヒントを得ることを心がけている。
●上司からのひと言.......... 「増田君は、お客様の課題を的確に捉え、それを解決する提案力を武器として、ソリューション営業でトップクラスの成果を上げている。自ら担当する案件の提案だけでなく、後輩の提案についても支援して、チームとしての業績向上に貢献してくれている。また、セミナー講師として情報発信を行っており、当社の顔として今後の活躍を期待している」(CRMビジネス推進部の長谷川貴広部長)