最近のIT業界では、ハードやソフトを単なる業務インフラではなく、お客様のビジネスを改善するツールとして提案する動きが活発になりつつある。しかし、まったく新しい売り方なので、提案活動を行う営業の現場は、頭を悩ますことが多いだろう。その悩みの解決は、プロに聞こう。NTTソフトウェアの増田直さんは、昨年度、ビジネス改善を切り口とした大口案件を獲得した。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
[語る人]
●profile..........増田 直(ますだ なお)
1983年10月24日生まれ。埼玉県出身。2006年、立命館大学法学部を卒業後、NTTソフトウェアに入社し、営業に携わる。NTTグループ担当営業を経て、アカウント営業で新規顧客の開拓を担当する。2010年からCRM担当営業として、SFAソリューションやクラウドソリューションの立ち上げ、コールセンタビジネス拡大に向けた販売戦略・マーケティング戦略に従事している。
●会社概要.......... NTTグループの一員として、ソフトウェア開発やシステム運用を手がける。最近は、クラウドとビッグデータに注力。1985年設立。従業員数は1542人、本社は東京・品川。
●所属..........CRMビジネス推進部
営業担当
主任
●営業実績.......... コールセンターの大規模案件の受注に貢献したことが評価され、2012年度、社長賞を受賞した。
●仕事.......... 営業担当主任として、CRM(顧客関係管理)ビジネスの販売に携わっている。毎朝、午前8時前に出社して営業活動の準備を行い、一日に平均3社の企業を訪問する。「初回訪問こそがすべて」と捉えて、万全な準備を欠かさず、お客様との関係づくりに力を注いでいる。
クロージングは迅速に
私は営業活動を行うにあたって、「一つのソリューションを提案して終わり」ではなく、お客様の業務改善につながるツールを必ず追加で提案することを重視している。お客様にとって想定外の「サプライズ」を用意し、先方の決断が揺るがないうちに、商談を迅速にクロージングにもっていく。
こうしたやり方が実を結び、2012年度、5000万円の大口注文をいただいた。
この案件は、営業活動の一環としてコールセンターを運営するお客様に対して、PBX(構内交換機)のリプレースを提案したものだ。当社は現在、クラウドに注力しており、クラウド型の商材をいくつか用意している。今回のPBX置き替えにあたって、PBXによるコンタクトセンター機能をクラウド型で提供するソリューションを提案することにした。
お客様はコールセンターを営業部内に設けておられるので、ソリューションについてお話しする相手は営業部のメンバーが多かった。だから、システムの仕組みを詳細に説明するといったような、技術的な話をしたところで、相手の心には響かない。私はあえてシステムの説明はせずに、「なぜクラウドなのか」に絞って話を進めた。
クラウド型PBXの利点は、コンタクトセンター拠点を柔軟に追加することができたり、業務の拡大や縮小に合わせてシステムキャパシティの変更ができたりするところにある。お客様にとって、システムを業務のシフトに適合しやすいわけだ。私はこうして、ビジネスの話を前面に押し出して、お客様に納得していただいて受注にこぎ着けた。
しかし、ここまではあくまでも“助走”である。お客様の心をつかみ、継続的にパイプを築くためには、この先がポイントになる。私は、クラウド型PBXの商談を進めながら、「顧客情報をきちんと分析したい」というお客様の潜在的なニーズに気づいた。これを踏まえて、PBXの案件とは別に、コールセンターの進化を切り口にして、データ分析ができるCRMツールを導入することを打ち出した。つまり、サプライズを用意したのである。
お客様は、PBXの置き替えを中心に考えておられたので、CRMを提案したら、かなり驚かれた。私は、そのタイミングでCRM活用の可能性を示し、お客様に導入を決断してもらえるチャンスと判断して、クロージングをかけた。その結果、PBXだけではなく、CRMも受注した。今後もいろいろ提案し、お客様のビジネスを支援していくつもりだ。
(編集部)次号では、上司に「営業のセンスがない」といわれて苦労した増田さんの新人時代について紹介する。