日立グループのSIerであるニッセイコム(武本秀徳社長)は、昨年、韓国のリモートアクセスソリューションベンダーであるアールサポート(安千洪・取締役副社長兼日本支社長)の「RemoteView」を採用し、従来からの課題だった「シャドーIT」の排除と、社内のリモートアクセスユーザーを拡大することを実現した。これにより、情報漏えいのリスクを軽減したうえで、外回り業務の効率化も果たした。
ユーザー企業:ニッセイコム
日立グループに属するシステムインテグレータ(SIer)。SAPソリューションの導入支援や、ハード、ソフトのサポート保守、ERPパッケージ「GrowOne Cube」の開発・販売も手がける。社員数は約800人。
サービス提供会社:アールサポート
サービス名:クラウド型リモートアクセスツール「RemoteView」
【課題】シャドーITを排除できない
かつてニッセイコムでは、システムエンジニアが客先の現場で作業する際、社内のPC環境を遠隔で使うリモートアクセスツールを活用していた。
ただし、このツールには大きな問題があった。それは、セキュリティの死角となる「シャドーIT」を排除できなかったことだ。松元眞二・システム技術開発本部データセンタ情報管理課長は次のように振り返る。
「当時はセキュリティ対策を施した会社指定ノートPCをモバイル端末として使用していたとはいえ、社内システムからファイルの持ち出しが可能で、社内のメールの受信もできてしまうという状況。それを情報管理課が制御できなかった」
リモートアクセスツールの運用ルールを決めて、エンドユーザーであるSEには、モバイル端末側にデータを残さないよう指示はしていたが、運用状況を確認できず、情報漏えいのリスクを抱えたままとなっていた。
また、認証や接続の方法が比較的複雑で、「営業部門などで活用するにはハードルが高いシステムだった」(松元課長)こともあって、せっかく導入したリモートアクセスツールが社内で普及しないという問題もあった。
そんななか、従来のツールがサービス終了の時期を迎え、新たなリモートアクセスツールの導入を検討しなければならなくなった。同社は、このタイミングで従来の課題を解決する新たなソリューションを導入することを決意して、製品の情報収集を始めた。
【解決と成果】要件を満たしたのは「RemoteView」だけ
新ソリューションの選定にあたっては、「社内に資産をなるべくもたないという全社の方針があって、クラウド型のサービスであることを前提とした。また、データの持ち出しができないように、画面転送タイプのサービスであること、システム管理者が機能制御や端末の識別をできることを重視した」(佐久間功吉・情報管理課課長代理)という。また、将来的にはBYOD(個人端末の業務利用)も視野に入れていることから、これに対応できること、さらには通信速度も重要なファクターになった。要は、使いやすさとセキュリティの両立を求めたということだ。
その結果、選定したのがアールサポートの「RemoteView」だ。郡司憲男・情報管理課主任は、「選定の候補は4種類あったが、『RemoteView』だけが、われわれのニーズを過不足なく満たしていた」と説明する。社内での議論も「RemoteView」を推す流れがすんなりとまとまり、2012年10月から本格運用を開始した。
旧システムからの移行もスムーズに進んだ。「RemoteView」の販売を担当した丸紅情報システムズの松井邦宜・プラットフォームソリューション事業本部デジタルマーケティング営業部営業一課担当課長は、「ニッセイコムは技術力の高いSIer。本稼働の前に、通常よりも長い期間、無償ライセンスを提供して、製品をしっかり使い込んで評価していただいた。本稼働した後は『RemoteView』のポテンシャルを遺憾なく発揮するような運用を行っていただいている」と評価する。
こうした準備期間の成果なのか、「RemoteView」導入後は、SEだけでなく、営業部門にも活用の気運が広がり、顧客へのプレゼンなどでも、タブレットによるリモートアクセスを活用する場面が増えている。
アールサポートの菅田勝之・セールスマネージャーは、「先進ユーザーであるニッセイコムにはさまざまな要望をいただいており、製品の質を向上させるうえで非常にありがたい」と話している。(本多和幸)

左から、ニッセイコムの佐久間功吉・システム技術開発本部データセンタ情報管理課課長代理、松元眞二・同課長、郡司憲男・同主任、丸紅情報システムズの松井邦宜・プラットフォームソリューション事業本部デジタルマーケティング営業部営業一課担当課長、アールサポートの菅田勝之・セールスマネージャー3つのpoint
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