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<ストレージメーカー座談会>2013年も20%を超える成長を目指す パートナーと共にSMB市場を開拓

2013/03/21 19:56

週刊BCN 2013年03月18日vol.1473掲載

 2012年のストレージ市場は、2011年の東日本大震災やタイの洪水被害の影響を脱して本格的に回復した年となった。ストレージベンダー各社とも20%近い成長を遂げており、好調を裏づけている。さらに各社は、SMB(中堅・中小企業)市場の開拓を目指して、より簡単なストレージの提案をパートナーと共に訴求していこうとしている。2013年に向けて各社はどのような戦略を描いているのか、主要メーカー5社のキーパーソンにお集まりいただき、座談会形式で話をうかがった。

●出席者

(写真上列、左から)

EMCジャパン
システムズ・エンジニアリング本部
サービス・プロバイダSE部 部長
雨堤 政昭 氏

NEC
プラットフォーム販売本部
営業推進部長
藤原 一之 氏

デル
マーケティング統括本部
サーバー・ストレージ・ネットワーク
マーケティング本部 部長
小松原 真一郎 氏

(写真下列、左から)

日本ヒューレット・パッカード
エンタープライズ
インフラストラクチャー事業統括
HPストレージ事業本部
製品マーケティング本部
担当マネジャ
志渡 みず絵 氏

日立製作所
ITプラットフォーム事業本部
事業統括本部
統合プラットフォーム販売推進本部
販売戦略部 部長
馬場 正彰 氏


司会/『週刊BCN』編集長 木村剛士
写真/大星直輝


2012年の市場はおしなべて好調
各社ともパートナー支援に力を注ぐ

──まずは、2012年を振り返って全般的な市場観、販売実績について聞かせてください。

小松原(デル) 2012年は堅調でした。デルストレージ売上は順調に推移しており、とくに2008年に買収したEqualLogic製品が過去4年間の年平均成長率(CAGR)で50%近い成長を果たしています。その結果、iSCSI市場では17四半期連続ナンバーワンの売上シェアを獲得しています。

志渡(日本HP) 2011年は東日本大震災の発生があり、その後にタイ洪水の影響でHDDの供給が止まったことなどから販売が落ち込みましたが、2012年はそれを補って盛り返すことができました。総じてかなり好調な1年でした。

馬場(日立製作所) 当社も2012年はストレージ全体を通じて好調でした。とりわけ、NAS製品が大きな伸びを記録した年となりました。

藤原(NEC) 当社はシステムインテグレーションというかたちで、サーバー&ストレージを提供するビジネスの占める割合が大きいですが、ストレージ単体でも販売は好調で、台数ベースで前年比120%を達成しました。

雨堤(EMCジャパン) 成長率の鈍化が若干見られましたが、2012年はワールドワイドの数字で、売り上げで9%増、利益は11%増を達成しました。日本での数字は公表できませんが、この数字に準じた実績を残すことができました。

──具体的に取り組んだ施策とその成果を教えてください。販売が好調だった機種や販売を伸ばすのに効果的だったソリューションはありますか?

小松原(デル) 販売を伸ばすうえで効果的だったのが、仮想化ソリューションでした。デルはサーバーからクライアント製品までを包括的に揃え、サーバー仮想化からクライアント仮想化(VDI- Virtual Desktop Infrastructure)を含めて、仮想化案件を得意としてきました。これに仮想化ストレージであるEqualLogicが加わったことで、ストレージ仮想化における「勝利の方程式」が確立して、幅広い顧客に受け入れられたと思います。

 製品戦略では、2008年から多くの企業買収を行い、Exanetからはファイルシステム、Ocarina Networksから重複排除技術を、Compellent TechnologiesからはFC-SANと自動階層化の機能を獲得しました。これら各社の技術を取り入れて、統合した製品を市場に投入してきました。現在は、統合から革新フェーズへと移り、昨年9月には、世界初のブレードシャーシに格納できるエンタープライズ向け完全冗長型ストレージアレイを発表しています。

 マーケティング戦略では、日本発の取り組みとしてEqualLogicユーザーコミュニティを発足、数百名のユーザーに加入いただき、ユーザー間の情報交換の場として活用いただいています。またワールドワイドでは、ストレージの運用管理者、パートナー様に向けて2~3年先の製品ロードマップなども含めて最新情報を提供する「Dell Storage Forum」を開催しています。2010年以降、米国と欧州で、それぞれ年に一度の頻度で開催してきましたが、2月20日に日本で「Dell Storage Forum Tokyo」を初開催しました。こうした取り組みは、ユーザー様、パートナー様から非常に高い評価をいただいています。

志渡(日本HP) 2012年のトピックスとして、2010年に買収した「HP 3PAR StoreServ(スリーパー)」シリーズが伸び、前年比300%も成長しました。これほど大きく伸びたのは、使いやすさが強く支持されたことが最大の理由と考えています。ただ、実際に触れていただかないとそれがわかってもらえないので、使いやすさをアピールするために頻繁にデモなどを実施して訴求してきました。また、3PARによるソリューションでは、BCP対策が広く受け入れられました。以前は3PARのユーザーはハイエンド層が中心でしたが、東日本大震災以降はより広い層のユーザーに向けて、BCPなど災害対策のプロモーションを展開したことで、受け入れられるようになりました。ミッドレンジ部分では、iSCSIクラスタストレージの「HP StoreVirtual(LeftHand)」シリーズが伸びました。この製品はスモールスタートできる点がメリットで、パートナーの方々からもSMB向けに販売しやすいとの評価を受けています。

 パートナー様向けの施策では、製品知識、テクニカルの両面で教育を充実させるとともに、セミナー活動などを通じたサポートを強化してきました。これにより新たなパートナー様の獲得にもつながっています。ただ、これをやったから効果があったというよりも、これまでの地道な活動が実を結んできた結果だと考えています。

EMCジャパン
雨堤 政昭 部長


パートナー様が、EMCのテクノロジーをベースにしたクラウドサービス「EMC Powered Service」が開発できるように支援していきます。


「EMC VNXeシリーズ」

世界シェアNo.1。主な製品ラインアップはハイエンド向けに「Symmetrix」、ミッドレンジからローエンド向けに「VNXシリーズ」および「VNXeシリーズ」を展開する

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外部リンク

EMCジャパン=http://japan.emc.com/index.htm

NEC=http://jpn.nec.com/

デル=http://www.dell.co.jp/

日本ヒューレット・パッカード=http://www.hp.com/jp/

日立製作所=http://www.hitachi.co.jp/