サイボウズ(青野慶久社長)は、11月8日、東京・文京区の東京ドームホテルで、「チームを強くするクラウド」をテーマに、独自開発のクラウドサービス基盤「cybozu.com」などを紹介するプライベートイベント「cybozu.com カンファレンス 2013」を開催した。基調講演やパートナー企業によるセッションのほか、サイボウズのエンタープライズ/中堅・中小企業(SMB)向けソリューションや、パートナー企業の製品・サービスを組み合わせた連携ソリューションの展示が行われた。(取材・文/真鍋武)

(左から)青野慶久 社長、山本泰宇 cybozu.com 運用責任者、シスコシステムズ 平井康文 社長世界に通用する日本製クラウド
カンファレンスの冒頭、青野慶久社長が、「チームを強くするクラウド」と題して基調講演した。クラウドサービスの利用について、「日本にデータセンター(DC)があって、日本人が運用を管理している『Made In Japan クラウド』を推奨したい。海外の企業も、安心・安全に使うことができる。ただ、日本にDCがあればいいわけではない。安定的に運用して、データを安全に保全し、強固な認証をとることが重要だ。当社の『cybozu.com』は、この三つを世界最高レベルで維持していると自負している」とアピールした。
次に、「cybozu.com」の運用責任者を務める山本泰宇氏が登場。「セキュリティに対する不安を感じるユーザーは多く、最近では、パスワードに対する攻撃が増えている。例えば、二つのクラウドサービスで同じパスワードを使用していて、片方のパスワードが流出してしまい、もう片方のクラウドサービスも悪用されるという事態が起こっている」と問題点を挙げた。そのうえで、「ユーザー企業だけでなく、提供する側も対策を講じなければならない。例えば、『cybozu.com』では、IP制限を設けて、会社のオフィス以外はアクセスできなくしたり、クライアント証明書を使った二段階認証などを実施している」と解決策を述べた。
その後、青野社長が再び登壇し、「現時点で『cybozu.com』の契約数は5000社に達した。来年からは、米国・中国での本格的な営業を開始する。強固なセキュリティを求める大企業での導入も進んでおり、東証1部上場企業の84社が採用している」とアピール。また、「セキュリティは安全でも、長期間の利用に際して、ディスク容量を心配するユーザーは多い。そこで、このたび『cybozu.com』で提供している主要サービスの基本データ容量を従来の2倍の2GBに拡張する」と発表した。

(左から)サイボウズの伊佐政隆Garoonプロダクトマネージャー、『IT Leaders』の田口潤編集局長、ほけんの窓口グループ管理本部の牧野内俊治システム部長と木川崇司システム課長クラウドでのアライアンスに注力
また、「“チーム”を強くするクラウドを提供したい」と主張。青野社長によると、「チーム」とは、ただの人の集まりではなく、共通のビジョンをもつメンバーが役割分担をして、相互に依存関係があることを指すという。青野社長は、「チームメンバーの全員が、同じ場所や時間で働くわけではない。ITを活用して“チーム”が“ワーク”するためには、メンバーを特定するための強固な認証基盤や、役割分担をスムーズに進めるためのプロセス管理機能、メンバーの相互依存関係を進めるためのコミュニケーション機能が求められる。当社では、こうした要件を満たすための製品をつくっている。ただ、これだけで十分ではない。アライアンスパートナーを求めている」とした。
ここで、サイボウズのパートナー企業として、シスコシステムズの平井康文社長が登場。「『Garoon』や『kintone』などのサイボウズの製品と、当社の『WebEx』を中心としたUC(ユニファイドコミュニケーション)を実現する製品を融合することで、新しい価値を提供したい」と意欲をみせた。
情報システム部に求められる会話のスキル
その後、青野社長は、「プロジェクトを管理するクラウド」「営業現場を強くするクラウド」などをテーマに、サイボウズのクラウド製品を導入した15社の活用事例を紹介。そのなかで、オンプレミス版の「Garoon」からクラウド版への移行を進めたほけんの窓口グループ管理本部の牧野内俊治システム部長は、「全国に約450の店舗をもち、毎年1000人ほどの従業員が増えている当社は、以前はオンプレミス版の『Garoon』を使用していたが、ユーザーが増えるにしたがって、リソースやネットワーク、セキュリティなどの心配をする必要があった。クラウド版に移行してからは、まったく心配せずに、すべてサイボウズに任せ切っている状況だ」と導入の効用を語った。
午後からは、パートナー企業や導入企業によるセッションが行われた。大企業向けのセッションでは、「新たなIT部門を創る~IT部門は積極的に火中の栗を拾え~」と題して、サイボウズの伊佐政隆Garoonプロダクトマネージャーと『IT Leaders』の田口潤編集局長、ほけんの窓口グループ管理本部の牧野内俊治システム部長と木川崇司システム課長が、情報システム部門のあり方について議論した。牧野内システム部長は、「情報システム部門にとって一番大切なのは、コミュニケーションをとること。現場に行って生の声を聞いて、それを反映していくことが大事だ」と語った。木川崇司システム課長は、「当社は、情報システム部門のなかで、従来の業務と新しい企画を立てるチームをつくって役割分担をしている。それぞれのチームが、各部門の課題をヒアリングして、解決策を探っていくというやり方をとっている」と説明した。