BCN(佐藤敏明社長)とインテル(江田麻季子社長)は、2月20日、SIerを対象とする「パートナーのためのクロスセル強化セミナー」を東京・港区の青山ダイヤモンドホールで開催した。「『やってよかった』と言われるIT投資とは? モバイルが変える『働き方』を徹底解剖!」をテーマに、調査会社やITベンダー、ユーザー企業の担当者が、それぞれの視点でモバイルに関する講演を行った。SIerを中心に、約160人が参加した。(取材・文/真鍋武 写真/津島隆雄)
目的を明確にした
デバイス導入が不可欠
セミナーの冒頭、アイ・ティ・アール(ITR)リサーチ統括ディレクターの生熊清司シニアアナリストが、国内企業のIT投資動向について基調講演を行った。生熊シニアアナリストは、ITRの最新調査データを引用しながら、「2013年度の国内企業のIT予算は、リーマン・ショック以降で最も大きな成長となった。大企業の景況感が改善されたことによる影響が大きい」と状況を説明した。そのうえで、「これからのIT投資では、金額の大きさではなく、いかに戦略的な投資をして、企業の業績を上げていくのかということを考えていかなければいけない」と指摘した。
次に、インテルソフトウェア&サービス事業開発本部インテル・セキュリティー日本地区統括の坂本尊志氏が登壇し、名古屋市療養サービス事業団が、ウルトラブックとインテルCPU搭載タブレット端末を約300台導入して、訪問介護業務に活用したケースなど、最新デバイスの導入事例を紹介した。坂本氏は、「バッテリのもちが悪い、パフォーマンスが低いなどの理由で、従来のデバイスでは導入が難しかった分野に対して、最新デバイスの活用が広がっている」と語った。今年4月9日の「Windows XP」のサポート終了後には、現在高まっているPC需要が一段落することが予想されているが、「単純なリプレースの案件が落ち着くことは間違いないが、今後は、これまで導入が進んでこなかった分野での需要が期待できる」とした。

(左から)モデレータを務めた谷畑良胤『週刊BCN』編集委員、アイ・ティ・アールの生熊清司シニアアナリスト、ウェイズジャパンの関根文彦代表取締役、NECキャピタルソリューションの荒谷茂伸シニアディレクター、ワンビの加藤貴社長 続いて、矢野経済研究所情報通信・金融事業部コミュニケーションビジネスグループ長の土佐恒広氏が、業務上でのスマート・タブレット端末の市場動向について解説。土佐氏は、矢野経済研究所の最新調査で、業務でのスマートデバイスの導入意欲をもつ企業が44%を占めたことなどを紹介し、「スマートデバイスの普及と、その管理ツールの整備は多様なワークスタイルを実現するうえで絶好の機会だ」と説明。「働き方を変えることが目的なのではなく、何を何のために変えるのか、なりたい姿は何なのかをよく検討することが必要だ。これが経営戦略につながる」とアドバイスした。

(左から)アイ・ティ・アール 生熊清司 氏、インテル 坂本尊志 氏、矢野経済研究所 土佐恒広 氏モバイル・クラウドで
働き方を変える
ウェイズジャパンの関根文彦代表取締役は、クラウド型ファイル共有サービス「Fileforce」を紹介した。関根代表取締役は、従来のファイルサーバーの問題点として、「運用・保守にかかる費用の増大」「管理対象ファイルの増加によるセキュリティリスクの増大」「必要・不要なファイルが判断できない」「情報共有が円滑・タイムリーにできない」の4点を挙げて、「従来のファイルサーバーではない、クラウド時代のファイルサーバーが求められている。『Fileforce』は、クラウド上にファイルをアップロードして、時間や場所、利用デバイスを問わず、いつでもどこでも必要なときに必要なファイルを利用することができる」とアピールした。
セミナーでは、ユーザー企業も講演した。マンション・ビル管理事業などを手がける日本ハウズイングのシステム企画部部長の浅野尚執行役員は、タブレット端末を自社に導入した事例を紹介。約5000人の従業員を抱え、グローバルを含めておよそ50拠点を保有している同社は、限られた労働時間のなかで事務作業と現場業務を両立することや、印刷物の削減などを目的に、使い慣れたプラットフォームであるWindows搭載のタブレット端末を導入した。浅野部長は、その効果について、「現場力が向上してきた。役員が現場を巡回しながらタブレット端末に記録をとったり、現場作業員がタブレット端末で図面を見たりしている。タブレット端末上に日報やスケジュール機能を盛り込んだので、リアルタイム性も向上した。これによって、業務品質も向上している。現在、お客様の依頼事項をチームで共有する作業を進めており、顧客満足度の向上につなげようとしている」と語った。
セミナーの最後には、モバイルデバイスを使った働き方の変革をテーマに、4人のパネラーによるパネルディスカッションを実施した。「Windowsタブレット端末は普及するか」「ウェアラブル端末は法人領域でどのように活用されるか」「モバイル・クラウドを推進するうえでの課題は何か」などの質問に対して、パネラーのそれぞれが自説を展開し、会場を沸かせた。

(左から)ウェイズジャパン 関根文彦 氏、日本ハウズイング 浅野尚 氏