ICT(情報通信技術)構築を手がける日商エレクトロニクス(日商エレ、河村八弘社長)は、サーバーやストレージを統合する仮想化基盤「Nutanix Virtual Computing Platform(Nutanix)」のパートナー販売の強化に動く。現在は「Nutanix」を主に直接販売しているが、今後、システムインテグレータ(SIer)などにプラットフォームとして提供し、SIerが開発したアプリケーションとセットにして、ユーザー企業に提案していく。「Nutanix」を活用することによって、パートナーがソリューションを納入するにあたってのリードタイムを短縮し、仮想化案件の獲得につなげる。(取材・文/ゼンフ ミシャ)
「Nutanix」は、ハイパーバイザー、サーバー、ストレージを統合した分散ファイルシステム型のアプライアンス。デスクトップ仮想化やサーバー仮想化に必要なインフラを「一つの箱に盛り込んで提供する」(マーケティング本部第二マーケティング部第一グループの近藤智基氏)というものだ。これによって、設置時間を短縮して、納入期間を短くする。米Nutanixが開発しており、日商エレクトロニクスは2012年以降、日本での販売を行っている。
今年度は50%増が目標

マーケティング本部
近藤智基 氏 ユーザー企業は仮想化の導入にあたって、多くの課題を抱えている。「初期導入コストが高いとか、システム運用が煩雑だとか、お客様はこうした悩みから仮想化の導入をためらうケースが多い」(近藤氏)とみる。そこで、日商エレは、「『Nutanix』を活用して仮想化システムを構築すれば、導入コストを他社製品と比べて数十%削減することができる。さらに、統合型なので運用もらくになる」(同)ことを訴求する。直接販売を中心に、大手SIerのTISなど、これまで約20社に「Nutanix」を納入してきた。
2014年3月期の「Nutanix」事業は、前年度比2倍の成長を記録した。直近でも、「6月に大きな受注を見込んでいる」(近藤氏)というように、案件が活発に動いている模様だ。「今年度は、少なくとも50%の拡大を目指したい」と、意気込みを示している。
実績を伸ばすために、パートナー販売の強化に取り組む。仮想化ツールを提供する米シトリックス・システムズの製品を取り扱う既存パートナーを巻き込むとともに、新規パートナーの開拓を図る。「Nutanix」の需要が旺盛とみているのは、システムが複雑化してきたことを課題とする製造業や金融業、データセンター(DC)運営会社などだ。「仮想化システムのインフラを当社が『Nutanix』でカバーし、SIerは『Nutanix』の上でアプリケーションを開発するかたちで、上流工程のビジネスに集中することができる」(近藤氏)と、販売パートナーにとってのメリットを訴える。
自治体などにニーズ
「Nutanix」は、仮想デスクトップ環境を50ユーザーのスモールスタートから始めて、規模を段階的に拡張できることを特徴としている。災害対策などとしてデスクトップ仮想化に取り組んでいる自治体や病院、教育機関に対して、「Nutanix」を活用したソリューションの提案が有効となりそうだ。「パートナーのアプリケーション開発力を生かし、案件の獲得に結びつけていきたい」(近藤氏)としている。
活用事例
TISがデスクトップ仮想化基盤に採用
大手SIerのTISは、「Nutanix」とシトリックス・システムズの仮想化ツール「XenDesktop」を採用して、デスクトップ仮想化環境を構築している。外部共有ストレージを排除し、初期導入コストを約40%削減した。短期間・少人数での構築や省電力設計などによって、運用管理コストも減らしている。
TISは、自社への導入を踏まえて「Nutanix」を用いた仮想化ソリューションの展開に取り組む。スモールスタートができることの訴求によって、導入のハードルを下げることを目指している。
TISは、自社でも将来デスクトップ仮想化を全社に拡張し、モバイル端末などを生かしながら、働き方の改革を進めていく。