神戸レザークロスは、婦人靴などを販売する「ESPERANZA(エスペランサ)」のネット通販事業で「O2O(オンライン・トゥ・オフライン)」や「オムニチャネル」機能を導入した。ネットから実店舗へ顧客を誘導したり、スマートデバイス向けのユーザーインターフェース(UI)の大幅な改善、ネットと実店舗の在庫情報の共有などの一体運営によって顧客を囲い込んでいく仕組みを実現している。ネット通販システムは、アイティフォーの「ITFOReC(アイティフォレック)」を採用した。
【今回の事例内容】
<導入企業> 神戸レザークロス1966年、銀座に「ESPERANZA(エスペランサ)」を出店したのを機に小売事業をスタート。全国約60店舗とネット通販で婦人靴などを販売している
<決断した人> 小売事業本部 エスペランサWEB通販部課長 鍛治彰良 氏「ESPERANZA(エスペランサ)」公式オンラインショップの運営に携わる。「O2O」「オムニチャネル」への対応を推進してきた
<課題>「O2O(オンライン・トゥ・オフライン)」や「オムニチャネル」の仕組みが弱く、「ショールーミング」の脅威にもさらされていた
<対策>「O2O」「オムニチャネル」で実績のあるアイティフォーの「ITFOReC(アイティフォレック)」の導入を決めた
<効果>「O2O」「オムニチャネル」の実現で、ネットから店舗への顧客の誘導が容易になった
<今回の事例から学ぶポイント>実店舗とネット通販の在庫管理システムの共有化は「O2O」「オムニチャネル」の実現が必須条件。スマートデバイス対応も強く求められる
ネットと店舗の一体運営を重視
神戸レザークロスは、基幹業務システムの刷新のタイミングで、ネット通販事業の強化を検討していた。数多くの検討課題があったが、優先度が最も高いのは「ネット通販と実店舗の連携」だった。検討を始めた2012年は、日本でも「オムニチャネル」や「O2O」などが話題になり始め、既存の実店舗はネット勢に客を奪われる「ショールーミング」の脅威も現実のものとなり始めた時期であり、早急な対応が求められていたのだ。
ネット通販部分のシステムは、さまざまなIT会社が製品化しており、ショッピングカートをはじめとする基本的な機能は、どのベンダーも大きな差はない。そこで、実店舗へ顧客を誘導できる「O2O」機能や、実店舗やパソコン、スマートフォンなど、さまざまな販売チャネルを統合運用できる「オムニチャネル」機能、これらを実現する「在庫管理システムの連携」の三点を重視した。また、ITベンダーが過去に構築してきた他社のネット通販サイトの実績も仔細に分析した結果、百貨店・専門店などで多くの実績をもつアイティフォーの「ITFOReC(アイティフォレック)」の導入を決めた。
今回のネット通販サイト刷新プロジェクトを担当した神戸レザークロスの鍛治彰良・小売事業本部エスペランサWEB通販部課長は、「実店舗とネット通販という自社の販売網の中から顧客を逃さないこと」を重視した。
婦人靴をメインに販売する小売事業の「ESPERANZA」の店舗は、北海道から九州までおよそ60店舗を展開し、ネット通販の規模は、同社の中規模店舗ほどの売り上げがある。「ITFOReC」の導入に当たっては、店舗とネット通販の在庫の引き当てを可能にしたり、スマートフォンやタブレット端末での閲覧性を飛躍的に高めるなどしてきたが、最大の特徴は「ネット上で実店舗の在庫状況をチェックできるようにしたこと」にある。
7割はスマートデバイスで閲覧
ネット通販事業の課題は、実店舗の在庫との引き当てが難しかったことと、これによって実店舗とネット通販店舗との連携がスムーズにできなかったことだ。「ITFOReC」の導入によって連携を実現した後は、ネット通販サイトの在庫と、実店舗の在庫を消費者がネット上で把握できるようになった。消費者視点でみれば、ネットでそのまま購入してもよいし、実際に店舗へ足を運んで購入する選択肢も増える。実際、婦人靴の販売では、「試着したり、肌触りや色を自分の目や手の感触で直接確かめたり、店員からコーディネーションのアドバイスを受けたりと、ショッピングを五感で楽しむ機会を提供することが大切」(鍛治課長)という。
構築したネット通販サイトでは、商品の購入欄に「そのままネットで購入」と「実店舗の在庫を見る」の二つの選択肢がある。さらに、在庫がないものについては再入荷したときにメールで通知する「再入荷通知メール」の希望も受け付けるようにした。実店舗の在庫確認ボタンをクリックすると、店舗の名称と場所、電話番号、在庫の有無が一覧できる仕組みだ。再入荷通知メールを希望する顧客は、「購入確度がとても高い顧客」(同)と捉えて、再入荷したときに購入につなげられるよう積極的に促していく仕組みにした。
もう一つ、予想以上の効果が得られたことがある。「ITFOReC」が2013年4月に本稼働した後、顧客の動向を観察すると、エスペランサ事業のネット通販サイトを閲覧する消費者の実に7割は、スマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイスからアクセスしていることがわかった。主要顧客ターゲットが20代前半の女性で、比較的若いこともあって、スマートデバイスユーザーが多いことが裏づけられた。アイティフォーで「ITFOReC」事業を担当する古澤良英氏は、「スマートデバイス対応は『ITFOReC』で最も重視している項目」としており、神戸レザークロスの鍛治課長は「顧客満足度の向上で効果が期待できる」と手応えを感じている。(安藤章司)