日本製紙は、組織の再編に人事・給与パッケージソフトが追随できない状態に見舞われた。グループ再編などによって組織が大きく変わるなか、既存の人事・給与パッケージは、カスタマイズやアドオンを重ねてきたため、容易に手が加えられないだけでなく、バージョンアップもままならない状態だった。旧バージョンのサポート期限が切れるタイミングもあって、日本製紙は東芝ソリューションの人事・給与パッケージソフト「Generalist(ジェネラリスト)」への乗り換えを決めた。
【今回の事例内容】
<導入企業> 日本製紙日本を代表する製紙会社。2014年3月期の連結売上高は1兆812億円、営業利益は285億円。グループ従業員数は約1万3000人
<決断した人> 日本製紙
望月秀敬 情報システム部調査役(左)
宇梶和男 人事部主席調査役(右)情報システム部の望月氏と、人事部の宇梶氏がタッグを組み、東芝ソリューションと二人三脚でプロジェクトを進めた
<課題>外資系の人事・給与パッケージソフトを利用してきたが、カスタマイズが増えすぎて、維持やバージョンアップが難しい状態に陥った
<対策>カスタマイズを前提としたサービス設計を特徴とする東芝ソリューションの人事・給与パッケージ「Generalist」を採用
<効果>維持コストを半減するとともに、Generalistの複数法人対応の機能によってグループの再編にもスムーズに適応
<今回の事例から学ぶポイント>歴史のある大企業の業務システムは、カスタマイズやアドオンソフトの追加が不可避。こうしたことを見越した対応が求められる
相次ぐ再編への対応を可能に
日本製紙は外資系のメジャーな人事・給与パッケージソフトを利用してきたが、使い込んでいくうちにカスタマイズやアドオンソフトの種類が増えてきた。歴史があり、独自の業務フローが確立されている日本製紙にとって、既存のパッケージソフトの機能だけではカバーしきれない部分が少なくなく、「最終的には全体のおよそ9割に手を加えていた」と、同社情報システム部の望月秀敬調査役は話す。さらに、そのパッケージソフトの保守期限が迫っており、新バージョンへ移行しなければならないが、カスタマイズした部分が多すぎて、「ゼロから新しいシステムを組むよりは若干安い程度のコストメリットしか得られない」(望月調査役)状況だった。
そこで、カスタマイズを加えても、維持コストやバージョンアップ費用がかさみにくい新システムに乗り換えることを決断。人事・給与システムを開発する7社に声をかけて比較検討し、最終的に東芝ソリューションの人事・給与パッケージソフト「Generalist」を選定した。海外のいわゆるグローバルスタンダードのERP系人事・給与パッケージも魅力的だったが、カスタマイズやアドオンにより柔軟に対応できるのは国産系パッケージであるという理由で、Generalistに決めた。もう一つの選定理由は、複数の事業会社、複数の人事制度が併存しても、一つのシステムで対応できる機能がすぐれていた点にある。
日本製紙は、グループ再編が断続的に発生しており、人事・給与についても「できる限り、同一プラットフォームで運用したい」(宇梶和男・人事部主席調査役)と考えてきた。実際のところ、Generalistが本稼働した2012年6月には旧日本製紙、旧日本大昭和板紙、旧日本製紙グループ本社の3社3システムが、同一データベース上で稼働する形態をとるなど、Generalistの「複数法人対応機能」が存分に生かされている。現実には、すでに合併して旧会社は存在しないのだが、「システムは、一定期間は個別に動かすケースは珍しくない」(望月調査役)という事情があって、日本製紙の場合はこうした運用を行っているのだ。
人事・給与の維持コストを半減

東芝ソリューション
坂根 恵 氏 Generalistには、旧社システムに加えて、2014年8月をめどに日本製紙クレシアの人事・給与システムが移管。さらに、10月には日本製紙とすでに合併している旧日本紙パックと旧日本製紙ケミカルの2社2システムが、Generalistのプラットフォーム上に移行してくる予定である。規模が小さい旧持ち株会社だったグループ本社は、本稼働後に旧日本製紙のシステムに吸収していることから、今年秋には旧日本製紙、旧日本大昭和板紙、旧日本紙パック、旧日本製紙ケミカル、日本製紙クレシアの計5システムが稼働する見通しだ(図参照)。
予定では2015年10月をめどに、日本製紙クレシアを除く旧4社分のシステムを一つに統合する準備を進めており、「複数法人に対応するGeneralistの機能と、カスタマイズへの柔軟な対応力を高く評価している」(宇梶主席調査役)と太鼓判を押す通り、期待どおりの効果を発揮しているようだ。東芝ソリューションで「Generalist」を担当するHRMソリューション技術担当の坂根恵氏は、「カスタマイズを前提としたサポート体制を組んでいる」といい、バージョンアップするときも、カスタマイズされたシステムを見越してサービスが設計されていると胸を張る。
Generalistへ移行してからは、Slerへのカスタマイズのための発注分を大幅に減らすことができたことで、「維持コストが半分になった」(望月調査役)と、コスト面でのメリットも大きいと満足げだ。複数法人への対応とカスタマイズを前提としたGeneralistのサービス設計が、ユーザーの課題とニーズにマッチした事例といえそうだ。(安藤章司)