スターティアとエーティーワークスは、今年8月、業務・資本提携することを発表した。「ホスティングの技術支援と製品・サービスの共同開発、人材交流」を目的としていて、顧客とサーバーベンダーとして長年継続してきた良好な関係を、大きく発展させたかたちだ。提携の経緯や狙いについて、両社のトップにインタビューした。(取材・文/本多和幸 写真/津島隆雄)
スターティア
ネットワークインテグレーションやホスティングサービス、OA機器販売などを手がける東証1部上場企業。2014年3月期の売上高は、約82億円。1996年創業。05年にマザーズ上場、14年2月に東証1部に市場変更。強力な営業力を武器に、成長を継続している
エーティーワークス
サーバーベンダーとして近年急成長。リンクと共同提供するホスティングサービス「at+link」でも知られ、保守・サポートの技術力に定評がある。創業の地・富山市と東京の両本社体制で、富山市にはDCも置き、クラウドインフラサービスを提供している
ピッタリはまるピース

スターティア
本郷秀之代表取締役社長
兼最高経営責任者 ──業務提携のみならず、資本提携にも踏み込んだ理由からお話をうかがえますか。 本郷(スターティア) 一番大きいのは時代背景です。クラウドの時代になって、市場環境は急激に変化しています。データセンター(DC)を保有し、十分な数の営業部隊やエンジニアを抱えて、マーケティングにも投資していくことを、一社単独でやるには厳しい時代になってきました。そんなとき、身近に大切なパートナーがいたことに気づき、強固な協力体制を築こうと考えました。
当社は、ホスティングのインフラ運用の現場などで「困ったときのエーティーワークス」が合言葉になっていたくらい頼りにしていました。現場からは、「早く業務を全面的にお願いしたい」という声が出ていたんです。エーティーワークスさんの技術力、そして当社の営業力と顧客基盤。これは、凹と凸のようにピッタリはまるピースです。
伊東(エーティーワークス) 以前、本郷社長と会食したときにおもしろいことがありましてね。両社の担当者も同席していたのですが、社長の目の前でお互いがじゃれ合っているんです(笑)。それをみて、新しいことを一緒にやるべきだという意を強くしました。
本郷 企業の提携話は、トップ同士が勝手に決めて、現場がぎくしゃくするというのがありがちです。われわれの場合はまったく逆。現場同士はすでにガッチリ手を握り合っている。うまくいかないはずがありません。

エーティーワークス
伊東孝悦 代表取締役 伊東 マザーズ上場から東証1部上場まで駆け上がったスターティアさんは、営業力は当然強いですが、情報の発信力がわれわれよりもはるかに強いという部分に大きな憧れがありました。いいチャンスをいただいたと思っています。
──製品やサービスの共同開発も提携の目的としていますが、協業の現状は? 本郷 具体的な商品開発は、これからです。現在は、ホスティング用のサーバーを、自社DCからエーティーワークスさんのDCに移しているところです。移管後は、運用やサポート、保守をほぼお任せして、われわれは営業と拡販に専念します。
伊東 まずはスターティアさんの既存のお客様を大切にしなければなりません。われわれはホスティングのサポートの前面に立つことになるので、技術的な支援はもちろん、情報提供のニーズにもしっかり対応して、スターティアさんの評価が上がるような取り組みをしていきたい。当面はこれが最大の注力ポイントです。
ミッドマーケットを攻める
──SMB(中堅・中小企業)を中心に顧客開拓してきたという印象が強い両社ですが、重点的に攻める市場領域についてはどう考えていますか? 本郷 SMBのM、つまりミッドマーケットを重点的に攻めたいという構想はあります。クラウドは大企業から普及が始まりましたが、今年から来年にかけては中規模企業への普及が加速するとみています。この領域には、AWS(Amazon Web Services)などのメガクラウドを担いで成功しているベンダーがそれほどいないし、大手SIerもカバーしきれていないので、ホワイトスペースは十分にあると思っています。フットワークとスピードを生かして、お客様にいかにフィットした商材を適正なコストで提供できるかが、われわれの腕のみせどころです。
伊東 新商材の開発に関しては、当社も大きな役割を果たすことが期待されていますので、開発のリソースを拡充します。また、ホスティングのインフラ移設に関わる当社の技術者に加え、営業担当者もスターティアさんに常駐し始めていますので、まずはスターティアさんのお客様の特徴やニーズをしっかり勉強したいですね。それを吸収したうえで新しい商材開発ができれば、自然とスターティアさんが売りやすい商材に仕上がっていくと思います。お互いの技術開発部隊も定例会を開いて情報交換をしていますので、徐々にかたちになっていくと期待しています。
──2017年3月には、スターティアがエーティーワークスの総発行株式数の25%を取得するとか。 本郷 そうなると、スターティアグループの仲間入りとなるわけですが、配下に入っていただくというイメージではない。ただ、協業は強化していきたいと考えています。その効果のバロメーターとして、エーティーワークスさんにIPO(株式公開)を狙っていただくのもいいかもしれません。
伊東 スターティアさんのここまでの成長のスピードは見習うべきだと思っています。われわれ自身がいいサービスを提供したとしても、お客様には知られていない可能性があります。スターティアさんの知名度や営業力をどんどん利用して、お互いにとってプラスになる成果を出したいですね。