小米科技(小米=シャオミ、雷軍董事長兼CEO)は、今、中国で最も勢いに乗っているスマートフォンメーカーだ。設立は2010年と新しいが、14年度(14年12月期)上期には、前年同期の3.7倍となる2611万台のスマートフォンを販売。上期の売上高は、同2.5倍の330億元を記録した。同社の急成長を陰で支えているのは、コンタクトセンターだ。ユーザーとの密接なコミュニケーションを実現することで、巧みに顧客をひきつけている。
【今回の事例内容】
<導入企業>小米科技2010年4月に中国・北京に設立されたスマートフォンメーカー。低価格・高品質なスマートフォンやタブレット端末、テレビ、ソフトウェアを提供している。コンタクトセンターには約1700人が在籍している
<決断した人>楊京津
客服中心高級総監
小米のコンタクトセンターの運営・管理を統括している。当然ながら、自身も生粋の小米ユーザー
<課題>従来の窓口だけでなく、ソーシャルメディアからの問い合わせも統合して一元的に顧客対応がしたかった。また、追加のシステムも柔軟に拡張したかった
<対策>アバイアの「Avaya Aura Contact Center(AACC)」を中心とするコンタクトセンターソリューション群を導入した
<効果>電話やメール、ボイスメール、ビデオ会議、チャットなど、複数のコンタクト手段から寄せられる問い合わせに対応できるようになった
<今回の事例から学ぶポイント>導入後の事業展開を見据えてシステムを選択することが大切
ソーシャルを駆使して顧客と対話
小米のコンタクトセンターは、同社がスマートフォンを初めて発売した11年8月に完成した。最初は100席の規模だったが、ユーザー数の増加に比例して拡大を続け、現在は1200席に達している。センターの従業員は約1700人で、24時間365日の顧客対応サービスを提供している。
センターの特徴は、ユーザーとの交流が盛んなこと。小米のユーザーは中国では「米粉」と呼ばれ、若者が大半を占めており、ソーシャルメディアの利用率が高い。そこでセンターでは、独自に開発したチャットアプリの「米聊」や、「微博」「微信」などのソーシャルメディアを通して、日々、ユーザーに情報を発信したり、要望を吸い上げたりしている。センターの管理・運営を統括している楊京津・客服中心高級総監は、「小米は、ただ製品を提供するのではなく、人と人をつなぐ役目を果たすことをミッションにしている。コンタクトセンターにとって、ユーザーと密に会話することは欠かせない業務になっている」と説明する。
そのため、センターのシステムを構築する際には、従来の窓口からの問い合わせだけでなく、複数のソーシャルメディアからの問い合わせにも一元的に対応できることを重要視した。また、小米は設立当時からアジア地域を中心とする海外展開を目指しており、センターも海外ユーザー向けの顧客対応システムを開発・運営していく方針だったので、システムを柔軟に追加できる自由度の高いコンタクトセンター基盤を求めていた。
複数のコンタクト手段を統合
要件に合うシステムを導入するため、小米は複数のITベンダーを検討。最終的に採用を決定したのは、米アバイアが提供するコンタクトセンタープラットフォーム「Avaya Aura Contact Center(AACC)」を中心とする製品群だ。その理由について楊・客服中心高級総監は、「アバイアの製品は最先端の技術を提供しているうえに、中国のコンタクトセンター市場でシェアが大きく信頼性が高い。そしてAACCは、安定性と互換性にすぐれていた」としている。
AACCは、電話やメール、ビデオ会議、チャットなど、複数のコンタクト手段から寄せられる問い合わせに対応しており、微博や微信などの各種ソーシャルメディアはもちろん、チャットアプリの米聊も統合できる。さらに、管理者側の統合画面を通じて、各問い合わせを最も適切なエージェントに振り分けることができるので、効率的な顧客対応を実現する。また、SIP(Session Initiation Protocol)ベースのアーキテクチャを採用しているので、新たなシステムの拡張・導入も容易だ。まさに、小米にとってはうってつけだった。
センター内で要望を製品に反映
楊・客服中心高級総監は、「アバイアの製品を導入したことは、顧客対応のサービス品質を向上できただけでなく、小米が新天地を切り開く一つのきっかけになった」と説明する。システム導入以降、小米は従来の中国国内だけでなく、香港、台湾、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インド、インドネシアと、海外展開を順次推進。コンタクトセンターでは、新たに開発した海外ユーザー向けの顧客対応システムをAACC上に統合して、海外のユーザーとも密接に交流することに成功している。
さらに小米では、AACCに加えて、コンタクトセンター運用効率化ソリューション「Avaya Aura Workforce Optimization」を導入。従来、顧客対応とは個別に乱立していた、問い合わせの記録や品質管理、eラーニング、人事管理、データ分析などのシステムを一つのUI(ユーザーインターフェース)上に統合して、一か所で集中管理している。楊・客服中心高級総監は、「小米は、従来のコンタクトセンターとは異なり、問い合わせに対応するだけではなく、品質管理や技術開発など、9部門を設置している」という。センター内のシステムを統合することで、ユーザーの要望をよりすみやかに製品・サービスの向上に反映できる体制を整えているのだ。これこそが、コンタクトセンターが小米の急成長を強力に支援しているゆえんである。(上海支局 真鍋武)

小米のコンタクトセンター。従業員の平均年齢は23.4歳で、全員が小米のユーザー