オンラインストアの「NTT-X Store」は、2000年のオープン以来、順調に売り上げを伸ばしてきている。好調の要因は、NTTグループという信頼性に加えて、自信をもっておススメする商品を厳選しているところにある。ただし、取り扱う商品が主にPC関連であることから、顧客の多くを男性が占めていて、今後の事業展開に向けて女性客を増やすことが必要だった。そこで、NTT-X Storeを運営するNTTレゾナントは、女性客の増加が見込める楽天市場への出店に踏み切った。
【今回の事例内容】
<導入企業>NTTレゾナントオンラインストア「NTT-X Store」を中心とするEC事業、ポータルサイト「goo」を中心とするメディア事業、SaaSサービスなどを提供するシステムソリューション事業の三本柱で事業を展開している
<決断した人>NTTレゾナント
横見進也メディア事業部コマース部門NTT-X Store主査(左)、松木久幸氏
横見主査はプロジェクトリーダーとしてiPaaSの導入を指揮し、松木氏は仕様を検討する役割を担った
<課題>NTT-X Store 楽天市場店の売上増に伴い、手作業で行っていた出荷システムへのデータの受け渡しが大きな作業負荷となっていた
<対策>NTT-X Storeで使用しているシステムとの連携が可能なサービスを探して、フュージョン・コミュニケーションズの「iPaaS」の採用を決めた
<効果>半日かかっていた注文データの確認とデータの受け渡しが、1時間以内に終わるようになった
<今回の事例から学ぶポイント>クラウドを採用することにより、RMSで仕様変更が実施されても、意識することなく運用できる
楽天市場に出店
月1回のセール「X-DAY」は、NTT-X Storeの名物イベントだ。昼の12時に始まると、人気商品はあっという間に完売してしまう。セールの特価品以外でも、NTTレゾナントが厳選した商品に対する信頼は厚く、NTT-X Storeには多くの固定ファンがついている。2000年にオープンして以来、売り上げは順調に伸びてきているという。
NTTレゾナントが顧客層を拡大するにあたって選んだのは、ショッピングモールの楽天市場への出店であった。それまでの販売チャネルは自社サイトだけだったので、初めての試みである。店名は「NTT-X Store 楽天市場店(以下、楽天市場店)」。2013年12月にオープンした。楽天市場を選んだ理由について、NTTレゾナントの横見進也・メディア事業部コマース部門NTT-X Store主査は次のように語る。「NTT-X Storeは男性客が中心なので、未開拓の女性客を増やすことを考えていた。楽天市場は女性客が多いので、出店先としては最適だと考えた」。女性客を意識して、楽天市場店では美容家電やキッチン関連を中心に扱うことにした。
手作業の販売管理が限界に
楽天市場は、出店者に「楽天マーチャントサーバー(RMS)」というネットショップ構築システムを提供している。出店者は、RMSを利用することで簡単にネットショップを開くことができる。NTTレゾナントもRMSを利用していて、当初は問題がなかったが、消費税が上がる前の駆け込み需要で課題がみえてきた。
「楽天市場店の注文データは、手動でダウンロードして商品の発送を担う出荷システムに渡していた。当初はそれで運用できていたが、売上件数が急激に増えたことで、その処理作業に一人の担当者が半日も費やすようになった。だから、なんとしてでもデータ連携を自動化したかった」(横見主査)。売上件数は大きく増加し、3月の家電部門で「ショップ・オブ・ザ・マンス」(月間MVP)になった。
自社サイトのNTT-X Storeでは、注文から発送までのデータ連携の仕組みができている。したがって、楽天市場店の注文データを既存の仕組みに渡せばいいだけの話だが、思うほど簡単ではなかった。
「RMSの仕様書を確認したところ、データのフォーマットが当社で実績のないものだった。開発言語も同様で、経験がなかったので、RMSを活用したデータ連携は難しいと判断した」と、仕様検討の役割を担ったNTTレゾナントの松木久幸氏は語る。そこで、RMSとのデータ連携を実現するためのサービスを探したところ、フュージョン・コミュニケーションズの「FUSION iPaaS(iPaaS)」にたどり着いた。iPaaSは、オージス総研のESB(Enterprise Service Bus)ツール「Mule ESB」上に構築した、RMSとのデータ連携を実現するAPIなどを提供するクラウドサービスである。楽天市場店の注文データをNTT-X Storeで利用しているシステムのフォーマットに変換する機能もある。「iPaaSなら既存の環境が使え、開発も容易だと判断した」と横見主査は経緯を語る。

NTT-X Store 楽天市場店
http://www.rakuten.co.jp/nttxstore/実質2か月で開発
iPaaSの採用を決めたのは、7月だった。8月に開発に着手し、9月末には完成した。本番環境でのデータ連携は、11月4日にスタートしている。「半日かかっていた作業が1時間以内で終わるようになった」(松木氏)と、すぐに効果が出た。残った作業は、「注文に関するメールがきているか」などを目視で確認するフローだが、今後はその部分の自動化も検討する予定だ。
iPaaSを採用したことで維持費が増えることになるが、「トータルでは割安になる」と横見主査は語る。というのも、RMSは仕様変更が頻繁に実施されるが、その分はiPaaSが吸収するためだ。NTTレゾナントは、RMSの仕様変更に伴う開発コストを意識する必要がない。
楽天市場店のシステム環境を整えたNTTレゾナント。さらに注文が増えても問題なく対応できることから、今後は楽天市場店でも商品点数を増やしていく予定だ。(畔上文昭)