システム構築(SI)やオフィス向け製品の販売を手がける大塚商会(大塚裕司社長)は、2014年度(14年12月期)、「全項目で過去最高の業績」(大塚社長)を記録した。とくに、SI事業の伸びが堅調で、ビジネス拡大を支えた。売上高は、前年度比7.3%の増をみせ、初めて6000億円を突破した。15年度は、SI事業がほぼ横ばいで推移すると慎重な見込みだが、他事業の伸長によって目標達成を狙う。また、システム上で管理手法などについて助言する「バーチャルマネージャー」という仕組みを活用し、業績の振るわない部署や拠点にテコ入れすることによって、販売活動の活性化を図る。
反動減は「リーマンのごとく」

大塚裕司
社長 大塚商会の14年度の売上高は、前年度比7.3%増の6057億6600万円、営業利益は同9.4%増の370億9700万円、経常利益は同13.8%増の381億4400万円、当期純利益は同15.7%増の234億5500万円と、いずれも過去最高を記録した。売上構成では、主要事業のSIが大きな伸びをみせ、13年度の3320億6700万円から、3620億6800万円に拡大。第二の柱であるサービス&サポート(S&S)は、13年度の2318億6800万円から、2433億1600万円に伸びた。
14年は、消費税率のアップや「Windows XP」のサポート終了によって、第1四半期(1~3月)にPCの入れ替えといったIT特需があった。大塚商会は、その恩恵を受け、3月までには、1口座あたりの売上高が増大。年商別の月次推移では、大手企業は2月に約25%、中堅企業は3月に約20%の伸びをみせた。しかし、4月以降はその反動が出た影響で、1口座あたりの売上高は落ち込み、「まるでリーマン・ショックが起きたときのように」(大塚社長)、10月までに右肩下がりで推移した。通期で業績が過去最高になったのは、特需があった1~3月の活況が大きく貢献したことが寄与している。
1口座あたりの売上高は、昨年10~11月を底に、回復傾向には転じているが、「今年1月も荒れている」(大塚社長)と語るように、本格的な回復にはまだ至っていないようだ。しかし、「(販売は)見込みよりいい方向に進んでおり、昨年末と比べ、手応えが戻ってきた感触がある」(同)という明るい兆しもあり、こうした手応えをいかに実売の活性化につなげることができるかが腕の見せどころになる。同社は14年も新規開拓に注力し、新規登録企業数を13年の3万5000社から4万1000社に増やした。今後、これらのユーザー企業に積極的に営業をかけ、案件ごとのボリュームを拡大することによって、売り上げの成長に結びつける方針だ。
セット提案に注力、利益を向上
15年度は、6180億円の売上目標を掲げている。内訳では、14年度に成長のけん引役になったSI事業がほぼ横ばいで推移すると見込み、オフィス用品を提供する「たのめーる」など、製品/サービスの販売を伸ばすことによって目標を達成する構想だ。「たのめーる」の売り上げは14年、1287億3300万円に伸びた。ユーザー企業の活発なオフィス移転や増設を背景に、「たのめーる」の需要は今後も旺盛と捉えている。売上目標6180億円の内訳では、SIが3626億6000万円、S&Sが2550億1000万円を占める。
今期、注力するのは、「製品のクロスセルやセット提案」(大塚社長)だ。複写機をはじめとする事務機に、サーバーやPBX(構内交換機)、回線サービスなどを付け加えて、オフィス向けのICT(情報通信技術)インフラを包括的に提供する。これによって、案件の付加価値を高め、中期計画として目指している「営業利益率・経常利益率ともに7%」の実現に取り組んでいく。今年7月15日(日本時間)のサーバー向けOS「Windows Server 2003」のサポート終了を機会に、サーバーの更新提案に力を入れ、サーバーを入り口として、ワンストップソリューションの受注を狙う。
さらに、バーチャルマネージャーの本格活用に乗り出す。社内システムの一環として構築している仕組みで、「苦しんでいるマネージャーを支援する」(大塚社長)ものだ。業績の振るわない部署や拠点の責任者に対して、ITを活用し、助言したり、部下の案件に入って受注に導いたりすることで、業績の改善を目指す。昨年度第4四半期からバーチャルマネージャーを全社で稼働しており、このところ、不振が続いた拠点で売り上げが伸びるようになったなど、「成果が出始めている」(同)という。今後は、本格的に活用し、販売活動にテコ入れする構えだ。(ゼンフ ミシャ)