製菓メーカーの森永製菓が取り組む「ウイダー事業」。その一環として運営しているのが、アスリート向けのスポーツジムである「ウイダートレーニングラボ」だ。同施設のトップを務める、ヘッドトレーナーの牧野講平氏は、選手データの管理方法について問題意識を抱き、より効率的にデータを管理する方法はないかと考えていた。ちょうどそのとき、知人から紹介を受けたのが、選手管理システムの「CLIMB DB」だった。
【今回の事例内容】
<導入企業>森永製菓 ウイダートレーニングラボ森永製菓が運営しているスポーツジム。同社ではウイダー事業としてサプリメントの販売やウイダートレーニングラボで、ウイダーと契約している日本のトップアスリートのサポートを手がける
<決断した人>マーケティング本部
ウイダーマーケティング部
トレーニングラボ ヘッド・パフォーマンススペシャリスト
牧野講平 氏
ウイダートレーニングラボのヘッドトレーナーとして、同施設の運営のほか、選手に帯同しフィジカル面のサポートを行う
<課題>紙ベースで、属人的な選手データ管理のため、選手のコンディションを共有して把握することが困難だった
<対策>CLIMB Factoryの選手管理システム「CLIMB DB」を導入。カスタマイズを重ね、最適な情報管理体制を構築した
<効果>手軽でリアルタイムな情報共有が可能に。また、トレーナー間で異なっていたエクササイズメニューを統一し、個人依存の管理体制から脱却した
<今回の事例から学ぶポイント>アスリートのデータを蓄積・分析できるシステムを導入することが、データの価値を上げることにつながる
属人的な情報管理体制に問題
ウイダートレーニングラボでは、ウイダーと契約しているアスリートのパフォーマンスを、トレーナーや管理栄養士がサポートする。ヘッド・パフォーマンススペシャリストである牧野講平氏もその一人で、ウイダートレーニングラボのトップとしてビジネス面を担当すると同時に、スキージャンプの高梨沙羅選手や、太田雄貴選手をはじめとしたフェンシングフルーレの選手らに帯同し、選手たちのパフォーマンスを支えている。
スポーツ界で活動するトップアスリートが、最高のパフォーマンスを発揮するには、毎日のトレーニングやコンディションなどのあらゆるデータを記録することが重要だ。牧野氏は、その選手たちのデータ管理について課題を抱えていた。例えば、選手たちのトレーニングプログラムの管理は、Excelで入力してプリントアウトし、ファイリングするという方法をとっていた。データを記入した紙は、4日に一枚程度のペースで増え続けるため、すでに膨大な量となっており、保管すると最後、「二度と見なかった」(牧野氏)。このため、過去のトレーニングデータが有効に活用できていなかった。また、各トレーナーがそれぞれオリジナルのエクササイズをもっており、それぞれの名称でデータを記入するため、ほかのトレーナーがみても理解できず、情報共有が困難だったという。さらに、トップアスリートは、海外遠征が多く、時差の関係もあり、リアルタイムの情報共有ができないという点にも問題を感じていた。

ウイダートレーニングラボ こうした選手データの管理方法を見直し、「何かシステムを使った方がいいのではないか」と考えていたちょうどそのとき、たまたま知人から「興味はないか」と話が飛び込んできた。紹介されたのが、選手のフィジカルやコンディション、食事、スケジュールなどのデータをクラウド上で一元管理できる、CLIMB Factoryの選手管理システム「CLIMB DB」だった。この偶然の出会いをまさに「運命だった(笑)」と語る牧野氏。迷うことなく、すぐにCLIMB Factoryに相談した。上司や予算管理者に必要性を訴え、晴れて導入にいたる。導入当初は運用にあわない部分があり、繰り返しカスタマイズを重ねたが、一年が経過する頃には効果を実感するようになってきたという。
データを新たなビジネスへ活用
CLIMB DBを導入したことで、牧野氏は「(作業が)全体的にシンプルになり、自分たちの頭が整理されたことで、指導にもプラスになった」と振り返る。トレーナーによって異なっていたエクササイズは、用いた器具や動作などの具体的な内容を、項目にそって選択して登録する方式にした。これにより、「当初7000種類以上あったエクササイズを1500種類まで、大幅に減らすことができた」という。シンプルになったことで、担当以外の人がみても、選手がどのようなトレーニングをしたのかを把握できるようになった。さらに、エクササイズの頭文字を入力すると、候補が表示される機能を搭載したことで、トレーニングプログラムの作成時間が短縮でき、業務の効率化が進んだ。
クラウドサービスであることから、選手のデータの確認は、「スマートフォンがあれば何とかなる」(牧野氏)と満足している。選手が遠征していても、トレーナーや管理栄養士は、リアルタイムで選手のコンディションや指導計画を把握し、サポートできるようになった。また、データの分析が可能になったことで、以前は「二度と見なかった」という過去のデータを活用できるようになり、選手に対する説得力も高まったという。
牧野氏は次のステップとして、「これまで蓄積したデータを生かし、新たなビジネスを生み出していく段階にある」と考えている。「現在、ウイダートレーニングラボ自体の売り上げはゼロ。今後は一事業部として、収益を上げられるビジネスプランを考えていかなければならない」と語り、「トップアスリートのデータというのは、それだけで価値がある。これまでのように、ただシステムを利用するだけでなく、データを活用して商品企画につなげるなど、次のビジネスを計画していく」として、一般市場へ訴求していく方針だ。(前田幸慧)