富士通、NEC、日立製作所(日立)の2015年度上期(4~9月)決算が出揃った。いずれもSI事業は好調だが、増益の日立に対し富士通とNECが減益となるなど、明暗は分かれている。富士通は収益性の改善が遅れる情報端末事業の分社化を発表した。各社が今後の成長分野として共通して力を入れるのは、IoTとAI、そしてアジアを中心とした海外市場だ。(日高彰)
国内最大手クラスのITベンダーである富士通、NEC、日立が2015年度上期(4~9月)の決算を発表した。企業の堅調なIT投資意欲に支えられ、各社ともSI事業は好調だが、会社全体の業績は三者三様。日立が前年同期から増収増益となったのに対し、富士通は増収減益(営業赤字)、NECは当期純利益で黒字を確保するも減収減益だった。
通信業界では設備投資の端境期にあることから、富士通とNECは通信事業者の投資減が売り上げの伸び悩みにつながった。また富士通は第1四半期にWindows XP特需の大きな反動減があり、第2四半期でややもち直したものの、上期では依然減収。NECは官公向けで前年同期に大型案件があったことから揺り戻しで減収となったほか、官公向けで不採算案件の増加もあり、減益となった。
一方の日立は、金融向けを中心にSI事業が好調に推移したほか、エレベータ、鉄道システム、北米向けの車載システムなどで堅調な売り上げを確保。営業利益は過去最高となった。
サービスに集中する富士通

富士通
田中達也
代表取締役社長 富士通の営業利益は、前年同期322億円の黒字から447億円悪化し、124億円の損失となった。通信事業者向けのネットワーク製品やパソコンで減収したことに加え、円安ドル高が部材調達コストを押し上げており、収益性が悪化している。
この決算にあわせて、同社はパソコン事業、携帯電話事業を分社化する方針を発表した。来年春頃までにパソコン、携帯電話のそれぞれで100%子会社を設立し、事業を移管する。情報端末事業は独立採算とし、富士通本体はソフトウェアとサービスに経営資源を集中する。同社の田中達也社長は、分社化の目的について「甘えの構造を無くし、持続的な利益成長を実現するため」と説明し、端末事業単独でも競争に勝ち抜けるよう事業の体質を変えていく方針を示した。
ただ、分社化によって経営判断の迅速化といった“身軽さ”は得られるものの、それだけで競争力を高めていくことが本当に可能なのかははっきりしない。同社は発表資料のなかでも、パソコンおよびスマートフォンの市場は「コモディティ化が年々進み、商品の差異化が困難」な環境になっていると分析しており、事業規模で圧倒的な差があるグローバルベンダーと戦っていくのは容易ではない。田中社長は今年度通期で3.1%を見込む営業利益率を、在任中に10%以上へ引き上げる目標を掲げており、分社化でも収益性の改善が不十分な場合、他社との合弁や売却など、さらに踏み込んだ構造改革を行う可能性も考えられる。
今後の成長分野に投資
3社が共通して今後の成長分野と位置づけ、戦略的な開発投資を行っていくのがIoT、分析、そしてAIの分野だ。富士通は前述の通りパソコン・携帯電話事業を分社化するが、単に現在の当該部門を切り離すのではなく、IoTに関連する技術や営業体制は、本体に新設するIoT部門に集約する。9月に発表した新プラットフォーム「MetaArc(メタアーク)」のビッグデータ分析、AI技術と組み合わせることで、顧客の意思決定の支援や、意思決定そのものの自動化を実現していくという。

日立製作所
中村豊明
代表執行役 執行役副社長CFO NECも、IoT関連の製品開発体制を強化し、この分野に振り向ける技術者を現在の300人から、来年度は1000人に増やす。グループで1万人いるシステムプラットフォーム事業の技術者のうち1割が、IoT事業に携わる格好で、とくに「エッジコンピューティング」と呼ばれる、クラウドとデバイスの間でデータ処理を行う部分に力を入れる。同社は顔認証や映像監視などのセーフティ分野について、国内外で営業活動を強化しているが、IoT投資の成果は同分野での競争力強化にも有効とみている。
増収増益を果たした日立は、今年度3550億円(売上高比率3.6%)の研究開発投資を、来年はさらに上乗せする方針。SI事業では、業務データや社員の行動をAIで分析することで、業務改革を実現するソリューションを提案しており、航空会社や銀行との間で実証実験を開始している。また、中村豊明副社長は「オートモーティブでは技術革新が相当に進んでいるので、研究開発していかないと市場を失う」と話し、好調な車載システム分野でも開発投資を増やし、シェアを維持・拡大していく方針だ。
中国経済成長鈍化の影響は
今年、中国の経済成長率が7%を割る見込みであることが中国政府系シンクタンクから発表されており、中国経済の成長鈍化傾向がみえてきた。また、中国市場の減速は、中国向けの輸出に依存度が高いASEAN経済にも影響し始めているといわれる。
最も大きな影響が予想されるのが、エレベータや建設機械の売り上げが大きい日立だ。この分野は案件の期間が長いため、中国の市況は下期以降の業績に跳ね返ってくると考えられる。ただ、ASEAN向けの公共インフラなどは堅調で、今年度通期では昨年41%だった海外売上比率を50%以上へ引き上げられる見通し。
富士通も「中国は経済鈍化の影響を受けて厳しい状態」(田中社長)だが、「タイは懸念があるがそれ以外のASEANは好調。アジアのポテンシャルは高い」(同)とみて、アジア事業はむしろ強化していく。具体的には、日本とアジアとの営業体制を一本化し、人材の融合を推進する。日本で培ったサービスデリバリ能力をアジアに展開するほか、各国市場でのニーズやノウハウを共有していく。

NEC
遠藤信博
代表取締役 執行役員社長 NECの海外売上比率は全体の約4分の1で、中国経済の影響はそれほど大きくない。遠藤信博社長は、「(将来的な海外売上比率は)半分はほしいが、まずは30%」と話しており、ASEAN向けを中心に海外販売を増やしていく考えだ。同社が注力する公共安全向けの製品は、景気動向に左右されにくいため、中国市場を含め引き合いは強いという。
各社とも組織や人員配置などの構造改革が進行中の段階だが、次にどこへ向かうか、そのためにどのような投資を行っていくのか、来年度以降の道筋は固まった形だ。各社とも戦略の実行段階に入るが、とくに海外市場では先行きが読めない部分も多く、環境の変化に対応できる柔軟性も同時に求められる。