沖電気工業は2月4日・5日の2日間、名古屋・伏見の同社中部支社で「OKI中部ソリューションフェア」を開催し、愛知・岐阜・三重・静岡の顧客や販売パートナーに最新の製品やサービスを紹介した。中部支社が主体となって単独のソリューションフェアを開催するのは初の試みという。とくに、この地でICT需要が期待できる製造と流通の2業種に注力しているが、その背景には人口減という共通の課題があった。(取材・文/日高 彰)

映像コミュニケーション技術などを展示した「働き方改革」ゾーン人口減が共通の課題

沖電気工業
若旅健司
中部支社長 会場では、IT、通信、メカトロニクスなど沖電気がもつ幅広い技術をベースとしたソリューションを、「製造」「流通」「働き方改革」の三つのゾーンにわけて展示した。
中部支社は、同社の営業拠点としては100年近い歴史と実績を有しているが、公共需要や、ATMなど金融機関向け製品の売り上げ比率が高く、さらなる収益拡大には一般企業向けのニーズ開拓が課題となっていた。そこで近年注力市場としているのが、製造と流通という二つの業界だ。この地区は自動車産業をはじめとする国内随一の製造業集積地であり、それらの企業からのICT需要は大きい。また、流通業に関しては、大型商業施設のオープンが相次いでいるほか、訪日外国人のインバウンド需要も急増している。
沖電気工業の若旅健司・中部支社長は「働き手の数が減少するなか、とくに製造業では熟練技術者がすべての現場に張り付けないことが問題となっている。また、流通業ではパートやアルバイトの獲得競争が激化しており、人材不足が新規店オープンの遅れにつながるケースすらあると聞く」と話し、中部地区でも人口減が企業の運営そのものに影響を与え始めていると指摘する。
無線やHMDで製造業を改革
製造業向けでは、2012年に国内でもセンサネットワークでの利用が可能となった、920MHz帯の電波を使うマルチホップ無線機器などを展示。無線LANで使われる2.4GHz帯や5GHz帯に比べ、電波の到達性がよいのが特徴で、工場の生産設備におけるIoT導入等で需要が期待できる技術だ。国内の製造業では大量生産よりも、高付加価値製品の少量多品種生産へ重点戦略がシフトしている。1日の中でも午前と午後で作る製品が異なることがあり、生産ラインの組み替えが頻繁に発生するが、センサ網を無線化すると、ライン組み替え時間が短縮され、生産設備の稼働率向上にも寄与するという。

配線工事なしでセンサネットワークを構築できる920MHz帯無線 今回のフェアでは、将来の製品化に向けて開発中の技術も展示していて、製造業向けには、オフィスにいる熟練の技術者が、現場の保守作業員を遠隔でサポートできるシステムを提案した。作業員はカメラ付きのヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着し、自分の視界の映像をオフィスに送信。オフィスで熟練技術者が画面に向かって手を動かすと、その手の動きが作業員のHMD画面内に重ねて表示されるので、遠隔でも複雑な作業手順を容易に伝えられるというものだ。
入口映像からレジ混雑を予測
流通向けには、来店客の属性をもとにレジの混雑状況を予測するソリューションを参考出展した。沖電気ではカメラの映像に映った人物の年齢と性別を推定する客層分析システム「RESCAT」を開発・販売しているが、入店から会計までに要する時間には客層によって特有の傾向があるため、店舗入口のカメラ映像を分析することで、何分後に何人のお客がレジに到達するかが予測できる。小売店ではレジが混雑してくると店内放送で応援を要請する場面がしばしばみられるが、この予測ソリューションを用いることで、混雑具合が許容範囲を超える前にレジの増員をかけられる。

カメラ映像から顧客の属性を判別し、少し先のレジの混雑状況を予測する さらに、パートナー企業が開発する店舗運営ソリューションと連携し、将来的には店員のシフト計画も最適化できるようにする予定だ。来店客へのサービス向上を図りながら、人の余剰・不足を最小限に抑えることを目的としている。

遠隔地拠点との間で対話や資料の共有ができる「バーチャルオフィス」 働き方改革では、ビデオ会議と、「在席」や「会議中」といったプレゼンス表示を組み合わせることで、離れた拠点同士でオフィスの状況を共有できるバーチャルオフィスシステムを提案。大型ディスプレイに遠隔地の社内の映像を表示するとともに、必要な人に簡単に連絡がとれるよう、画面にタッチすることで音声通話などを開始できるユーザーインターフェースを設けた。現在、沖電気社内の複数拠点間で運用を試行しており、2016年度中の商品化を目指して開発が行われているという。
地域のニーズに根差す
中部支社が管轄するエリアは、生産・消費とも規模の大きい名古屋の経済圏を中心としており、エリア内で完結するビジネスも多い。若旅支社長は「人と人の関係を非常に大切する土地。東京出身企業であるわれわれも、地域に根ざす必要がある」と話し、単に商品を紹介するだけでなく、顧客の声を取り込むことにフェア開催の意義があったと説明する。
若旅支社長は、地域のニーズを今後の「OKIソリューション」に反映することで、地元の産業発展への寄与を拡大していく考えを強調した。