4月14日、熊本県益城町で震度7の地震が発生した。「平成28年(2016年)熊本地震」である。以降、熊本県と大分県を中心に地震が連続して発生し、現在も続いている。震災の被害が明らかになると、多くの企業が被災者支援や復興支援を表明した。善意の行為は被災地に届くのか。熊本地震にみる支援策から、震災発生時におけるITベンダーの役割を考える。(畔上文昭)
支援には慎重な判断も必要
九州新幹線が復旧したのは、4月27日。震災発生からわずか13日のことである。JR各社が協力して、復旧作業にあたったという。新幹線の早期復旧は、復興に向けた前向きなニュースとして、被災者に力を与えたに違いない。
交通インフラと同様、いまや生活に欠かせないのが通信インフラだ。通信キャリア各社は早期復旧への取り組みと支援策を表明しただけでなく、復旧作業の進捗状況などを連日発表している。不要不急の通話を控えるようにとの通信キャリアからの要請があったためか、つながりにくいということは少なかったとの声もある。
そうしたなかで、被災者支援を目的とした取り組みで批判されるケースもあった。例えば、LINEは同社のアプリから固定電話や携帯電話にかけられる「LINE Out」機能の通話料を最大10分間、無料にすると発表し、物議を醸した。「回線の混雑をあおる」というわけだ。LINEユーザーにとってはメリットがあるものの、被災地を混乱させては意味がない。LINEは批判を受け止め、同支援策を撤回した。被災者支援や復興支援の難しさを思わせる一幕であった。ちなみに、LINEは売り上げのすべてを寄付金とする「熊本地震 被災地支援スタンプ」を販売。こちらはスタンプ代の120円という少額から支援できるとして、支援の輪が広がっている。
製品の無償提供は是か非か
消費者向けの製品を提供している企業は、支援策を打ち出しやすい。多くの場合、自社製品を提供することが、被災者の支援へとつながるからだ。では、B2B向け製品を提供するITベンダーの被災者支援や復興支援は、どうだろうか。
東日本大震災では、多くのITベンダーが自社製品の無償提供を発表した。ところが、被災者支援や復興支援につながっていないと思えるケースも少なからずあった。
まず、無償提供といえども、多くが期間限定での提供ということ。ほとんどが数か月で無償期間が終了してしまう。その後は使用をやめるのか、料金を支払うのか、それが問題となる。この点を考慮すると、仮設住宅のように一時しのぎとしての使用に向いている製品でなければ、被災者の支援としては「試用期間と同様」と指摘される可能性がある。また、単なる宣伝行為の一つとして受け止められてしまうかもしれない。実際、東日本大震災では被災現場で使えない無償提供の製品に対し、批判の声が上がることもあった。
阪神大震災を経験した自治体が、自ら開発した支援システムの無償提供を被災地の自治体に提案するも、利用してもらえないというケースが過去にあった。「自由に使ってください」と遠方から提案されても、被災地の事情を把握していなければ、自治体同士といえども役に立たない提案となってしまう。
製品を無償提供するのであれば、被災地に入って支援するのが現実的だ。富士通は、南阿蘇村役場と西原村役場において、被災者の相談を自治体職員が受け付けるワンストップ相談窓口の開設を支援。クラウドサービスと職員の入力用PC10台を無償提供した。自社製品の無償提供を表明するのもいいが、現地に入ってこそニーズがみえてくるのである。
なお、正確な数は把握できていないが、熊本地震では、製品の無償提供を発表するITベンダーが東日本大震災の時よりも明らかに減った。被害規模との関係もあるだろうが、ITベンダーは東日本大震災で何が適切な対応かを学んだに違いない。
義援金という支援策
「お金が一番ありがたい」。震災直後の被災者の言葉である。被災地にはさまざまな支援物資が届けられるも、十分に足りているとなれば、避難所では置き場所がないことから、邪魔なモノとなってしまう。何が不足しているかは、現地で確認するしかない。そこで義援金による支援ということになる。

富士通は4月15日に300万円、4月19日に500万円の追加支援を決定。NECは4月15日に300万円、4月22日に700万円の追加支援を発表した。日立製作所は義援金とはしていないが、4月21日にグループ合計で総額5000万円相当の支援を表明している。また、熊本県の小国町で森林保全活動などをしているインフォテリアは4月17日、300万円の義援金を発表している。ちなみに、東日本大震災においてNECは、義援金やIT機器などで総額1億円を超える支援を行った。
ハードに関しては修理や代替機の提供という対応が有効だが、企業向けソフトが震災を機に必要とされるのはレアケースである。ましてや、避難所などでは生活必需品が求められるとすれば、B2B分野のITベンダーには義援金が現実的な支援策の一つとなる。
とはいえ、IT業界としては義援金で十分とするわけにはいかない。被災者支援や復興支援に最適なソリューションを生み出すのも、震災が多く発生する日本の役割でもある。熊本地震では、遠隔操作の重機やドローンが活用された。IoTソリューションの一つである。とくにドローンは撮影に使うだけでなく、被災地のデータを取得し、そのデータを支援策に生かすといったソリューションの普及が期待される。