日本事務器(田中啓一社長)は、ヘルスケア事業の重点領域を明らかにした。医療と健診、介護の3領域で発生するデータを統合的に分析・活用し、新しいサービスの創出を図るというもので、今後、こうしたデータを軸に新サービスを創出していく。同社は電子カルテやレセコン(医事会計)で長年の実績を積んできた有力SIerだが、今回の重点領域は、既存の事業に加え、新規領域を前面に押し出していくものだ。(安藤章司)
ヘルスケア重点領域では、医療と健診、介護の3領域で発生する情報を横断的に分析・活用するサービスをベースとして、これまで情報化があまり進んでいなかった在宅医療/介護領域に向けたサービスを展開。さらにデイサービス(通所介護)や介護従事者、高齢者に向けたサービスも創出していく。ポイントは医療・健診・介護の3領域のデータ連携であり、このデータ連携を基盤として、日本事務器の次世代のヘルスケア事業の成長を担うサービスの構築を目指す。
日本事務器は早くからデータ連携に着目しており、ヘルスケア情報連携サービス「PHRMAKER(PHRメーカー)」を開発してきた。これは主に医療法人内の業務アプリケーションのデータを「統合データベース」で管理することで情報を一元化。多くの医療法人の情報分析、活用に役立てられている。このデータ統合のノウハウを応用し、適応領域を広げていく。
日本事務器の今村哲也・取締役事業推進本部長は、「キーワードは“かかりつけ”の考え方」だと話す。“かかりつけ”は地域に根ざした診療所をイメージしがちだが、同社では診療所のみならず、病院や介護、健診にも“かかりつけ”の概念を広げていくことで、「患者/利用者のサービス品質の向上や、医療や介護の効率化、費用の抑制につなげられる」(徳永勝哉・ヘルスケア統括担当シニアマーケッター)と考えている。

今村哲也取締役(右)
徳永勝哉シニアマーケッター
現状、かかりつけ医なら、自身の担当する患者の疾病履歴をある程度、把握できている。しかし、健康診断の情報の多くは共有できていないし、高齢者で介護サービスを利用している場合は、介護を通じて新たにわかったことも、かかりつけ医は知る手段が限られている。逆に、かかりつけ医のもつ情報の多くは、介護従事者のあいだで共有できておらず、介護サービスに十分に生かせていない課題がある。これではデジタルの恩恵を生かした新サービスの創出は難しい。
そこで、まずは患者/利用者の医療・健診・介護のデータを連携するプラットフォームを日本事務器が構築する。閲覧権限や情報セキュリティを設定したうえで、AI(人工知能)など外部のサービスも活用。データを共有する医療・介護従事者が、「あたかも長く患者を診てきた“かかりつけ医”のように、患者や利用者のことを理解できるITサービス」(同)を展開するといった構想を描いている。将来的には、「例えば、かかりつけ健診、かかりつけ看護、かかりつけ在宅といった『かかりつけ○○』サービスを医療・介護ユーザーと協業しながら創り出していきたい」(同)としている。