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サービス事業者 IoTを視野に非IT機器に活路 新しいサポートの創出へ

2017/01/12 09:00

週刊BCN 2017年01月09日vol.1660掲載

 ITシステムのサポート事業者が新たなサービスを模索している。有力候補は、IoT関連ビジネスの拡大で期待される非IT機器だ。ユーザー企業の社内ITシステムのサポート料は、ハードウェアの低価格化に伴って安くなっているのが現状。しかも、クラウドサービスの台頭でオンプレミス型システム構築の案件が減少し、サポート案件も減少している。そのため、新たな取り組みで収益確保の活路を見出そうとしている。(佐相彰彦)

 NECフィールディングは、「マルチメンテナンス」を切り口に、美容サロンの撮影スタジオ機、スーパーのペットボトル・古紙回収機、スポーツジムのフィットネスマシン、病院やレストランの自動精算機など、サポートするフィールドの拡大を進めている。サポート要員が現場に駆けつけて機器をメンテナンスする。中江靖之社長は、「全国網でサポート要員を配置しているからこそ実現できること」とアピールする。

 また、非IT機器のサポートの応用版として、施設全体をサポートすることにも取り組んでいる。一つの例として、病院をまるごとサポートしており、その対象機器・システムは病院内の業務ITシステムをはじめ、医療機器やファシリティ、周辺機器などさまざまだ。業務ITシステムでは、リモート監視とオンサイトサポートとの連携を実現している。周辺機器のサポートでは、光触媒環境浄化装置や医療カート、生ごみ処理機、自動おしぼり製造機までサポートしている。さまざまな非IT機器をサポートするノウハウを蓄積することで、「ほかの施設も、まるごとサポートしていく」(中江社長)との方針を示している。
 さらに、太陽光パネルやドローンもカバーしており、提供拡大に向けて広大な研修センターで実証実験を計画。敷地内をソーラー発電所に見立てて、リモートで運用監視することに加えてドローンで太陽光パネルの劣化も監視するという。

 医療関連の周辺機器やドローンなどをサポートするだけでなく、法人専用のオンライン通販「いーるでぃんぐ」でオフィス用品も販売している。「販売は堅調に推移している」(中江社長)とのことだ。

 東芝ITサービスでは、EV(電気自動車)の充電器や外貨両替機のサポートを手がけており、運用監視サービスを提供。「ネットワークにつながることを見据えたサポート」(永田友久社長)という。また、東芝グループ全体で社会インフラを主力事業の一つに据えていることに伴って、これまでITシステムをサポートしてきたノウハウと全国に点在する多くのサポート要員を生かして、「非IT機器をサポートしていきたい」(永田社長)考えだ。

 富士通エフサスでも、「オフィスまるごとイノベーション」と称して、ユーザー企業がオフィスを移転する際などに、業務システムやネットワーク、テレビ会議などIT関連のサービス提供に加えて、新オフィスのコンセプト立案やデザインといった非IT関連のサービスも提供。イトーキ、コクヨファニチャー、内田洋行などオフィス家具を提供する企業とのアライアンスで提供している。このようにサポート事業者が非ITまで領域を広げようとしているのは、国内IT市場が成熟し、とくにハードウェアを中心に利益が出にくい状況になっているなか、既存領域だけでは収益を確保することが難しいためだ。「クラウドサービスを導入するユーザー企業が増えているなか、ビジネスの幅を広げていくことが重要となる」というのが共通の意見で、そこで目を付けたのが非IT。「工場のIoT化が進みつつあるように、これまでネットワークにつながっていなかった機器がつながるようになることをユーザー企業は求めるようになる」(東芝ITサービスの永田社長)というわけだ。

 非IT機器のネットワーク化によって、すぐに現場に駆けつけてトラブルを回避するサポート要員が重宝される可能性がある。サポート事業者が今、取り組んでいることはIoT時代に確固たるポジションを獲得するための準備ともいえそうだ。
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