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日本オラクル UNIXは終わってない!捲土重来を期すSPARC/Solaris

2017/02/16 09:00

週刊BCN 2017年02月13日vol.1665掲載

 日本オラクル(杉原博茂社長兼CEO)のUNIXサーバービジネスが、復活の兆しをみせているという。サーバー市場そのものが縮小傾向にあるなか、UNIXでハードウェアベンダーが成長することは果たして可能なのか。日本オラクルの山本恭典・執行役員クラウド・システム事業統括は、「現状を説明すると多くの人が驚くが、(同社のUNIXサーバーである)SPARCサーバーが好調なのは事実で、さらなる成長も十分に可能」と言い切る。(本多和幸)

専門チーム立ち上げで短期間のうちに盛り返す

山本恭典
執行役員クラウド・システム
事業統括

 米オラクルは、2010年1月にサン・マイクロシステムズの買収を完了し、RISCプロセッサである「SPARC」やUNIX OSの「Solaris」をポートフォリオに組み込んだ。もともとサン・マイクロシステムズは日本市場でのシェアが低落傾向にあったが、このタイミングで競合他社が攻勢を仕掛けたこともあり、「お客様が離れていってしまったことは事実」と、山本執行役員は振り返る。

 しかし、この1年でその状況は一変しつつある。その大きな要因となっているのが、昨夏に本格始動したSPARC/Solaris専門チームである「Server営業本部」の存在だという。山本執行役員は次のように説明する。「15年秋にSPARC/Solarisをみる立場になって、これは回復にかなり時間がかかりそうだと感じた。しかし、多くの人に驚かれるのだが、予想よりもずっと早く上向きになった。Server営業本部には、まず、SPARCサーバーを数万台使っていただいている既存のお客様に“ありがとう”と言いに行きなさいと指示をした。次に、“何か困っていることはありませんか”と聞いて、課題に応じてOSのバージョンアップやハードのリプレースなどの話をするようにした。端的に言えばそれをやっただけだが、オラクルがUNIXにこれからも本気で取り組むとご理解いただけたことが大きかった」。

 UNIXユーザーには、メーカーが製品開発を今後も継続するのかどうか不安視する声が根強い。一方で、UNIXに対するニーズも確実に存在する。山本執行役員は、「とにかく安定している、止まらないというUNIXの特徴は、とくにミッションクリティカルシステムのインフラとしては代えがたい価値になっている。一般企業の基幹系システムはもちろん、金融機関の市場系システムでは非常に多く使われているし、勘定系に近いところで使っているお客様もかなりの件数があることをServer営業本部の活動を通じて再認識した」と説明する。

 結果として、既存ユーザーのリプレース需要が活発化すると同時に、UNIXサーバーのかつての競合からの乗り換えの引き合いも急速に増えているという。具体的には、IBMのUNIX OS「AIX」製品や、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)のUNIX OSである「HP-UX」製品からの乗り換えということになる。「IBMは、UNIXサーバーのプロセッサとして開発、提供してきた『POWER』について、米グーグルとの接近などをきっかけにオープン化を推進しているし、HPEは、ミッションクリティカルサーバー製品においてx86サーバーを前面に押し出している」と山本執行役員。こうした状況を踏まえ、「UNIXとして先があるのはオラクルのSPARC/Solaris製品だけだとお客様が認識している」ことが、競合からの乗り換え需要増の背景になっていると分析する。明確にUNIXに注力するというメッセージを打ち出しただけでも、UNIXユーザーにとっては大きな加点ポイントになるということのようだ。

ソフトウェア・イン・シリコンで「ムーアの法則」を超えていく

 さらに山本執行役員は、プロセッサやOSの開発ロードマップも、「時代の要請に即したものになっているという評価を得られている」ことが、SPARC/Solarisの成長につながっていると話す。

 最新のプロセッサとしては、ミッドレンジからハイエンド製品向けの「M7」、ローエンド製品向けの「S7」があり、それぞれ15年末、16年秋に搭載製品を発売している。これらの最大の特徴は、ソフトウェア機能を直接プロセッサに組み込む「ソフトウェア・イン・シリコン」という設計思想のもとに開発されたことだ。ハードウェアそのものにセキュリティ機能を組み込んでより堅牢なシステムを実現したり、データベースの大幅な高速化などを可能にする。従来は、ハードウェア開発チームがプロセッサの設計を担ってきたが、M7やS7の開発にはソフトウェア開発チームも参画し、むしろソフトウェア側主導でつくり上げたという。「ムーアの法則も限界がみえてきて、それを打ち破るオラクルとしての解がソフトウェア・イン・シリコン。ソフトウェアとハードウェアの両方をもっているオラクルだからこそできることだと自負している」と、山本執行役員は力を込める。

 とくにローエンドのS7製品は、日本オラクルにとって、新たな市場開拓の期待を背負う製品でもある。最小構成132万円からという価格設定で、SMBや大企業の中小規模拠点などの基幹システムでの利用が拡大できると見込んでいる。さらに、従来製品に比べて安価でサイズや消費電力も小さく、スケールアウトしやすいという特徴があるため、クラウドサービスベンダーや、自社商材をクラウド化したいISVなどにも訴求できるという。山本執行役員は、「トレンドになりつつあるミッションクリティカルシステムのクラウド化は、x86サーバーに比べてセキュアで高い信頼性を誇るSPARCサーバーの市場として期待できる」と話す。

 また、M7搭載のSPARCサーバーをクラウドで提供するサービスも始めているが、これも好調で、S7製品ベースのクラウドサービスの提供も検討している。

 Server営業本部の発足は、既存ユーザーだけでなく、「一度はSPARC/Solarisから離れかけた何社かの大手リセラーを呼び戻すことにもつながった」(山本執行役員)。さらには、AIX製品、HP-UX製品を担いでいた大手リセラーと新規のパートナー契約を結ぶ直前まできているという。山本執行役員は、「ひとむかし前では絶対に組めなかったパートナーも、SPARC/Solarisの将来性を評価して、担ぎたいと言ってくれている。販売額はともかくとして、販売台数や取り扱うデータ量ベースで考えれば、UNIX市場を成長させることは十分に可能だ」と力を込める。

 なお、年末年始にかけて、Solarisの開発中止という情報が飛び交ったが、これについては「完全な誤報」だと強調する。「次世代のSolarisを、Solaris12ではなく、Solaris11.xというかたちにしたというだけの話。カーネルが変わるなどということではないので、お客様のアプリケーションのサーティファイをやり直さなくてもいいようにという配慮もあった。Windows10と同じコンセプトだと理解してもらえばいい」(山本執行役員)とのことだ。
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外部リンク

日本オラクル=http://www.oracle.com/jp/