ソフトバンク・テクノロジー(阿多親市社長CEO)の子会社で、人型ロボット「Pepper」など、IoT(Internet of Things)デバイス向け開発会社のM-SOLUTIONS(エムソリューションズ、佐藤光浩社長)は、ドローンが撮影した画像データを簡単に活用できる独自サービス「Smart at drone」の販売を開始した。動画を再生しながら、手動でクリッピングしコメントを残す業界初の機能を搭載。近く電子証明書を利用したセキュリティを、年内には人工知能(AI)の画像解析機能などを実装する計画だ。グループ会社などを通じて発売し、初年度で50セットの販売を目指す。(取材・文/谷畑 良胤)

ローカル版とクラウド版を提供

 Smart at droneは、ドローンで撮影したデータやGPSに連動した航路情報、気になる箇所を手動でクリッピングしたコメント、履歴を一元管理できるサービス。同社のIoTデバイス向けアプリケーション開発拠点の「旭川開発センター」が、地元の農業関係者らと実証実験を重ね完成させた“力作”だ。

北海道の「旭川開発センター」では、農業関係者らと実証実験を繰り返した


 太陽光発電事業者向けソリューションを提供するエナジー・ソリューションズ(森上寿生社長)と昨年9月、共同でドローンを活用したソーラーパネル検査のツール化を行ったが、その際のノウハウやクラウド連携などの技術を生かしている。

 同サービスは、ローカル版ソフトを1ライセンス58万円(税別)で、クラウド版サービスを初期費用/1ライセンス20万円(同)、月額4万円(同)で提供する。顧客としては、農業、建設、警察、自治体などを想定している。M-SOLUTIONSの植草学取締役は、「農業を営む方からは、生育状態などを確認するだけの簡易なシステムが欲しいとのニーズがあり、パソコンにデータをアップロードし、レポート作成できるローカル版を用意した。クラウド版は、5ユーザーまで情報共有が可能で、建設業者などが関係者間でレポートを共有するのに適している」という。

実証実験で利便性を追求

 ドローンを使ったITソリューションは、多くのITベンダーが開発を手がけている。しかし、ドローンの飛行を操作して意図する航行を体得するまでには時間がかかるほか、画像・時間・場所のデータを紐づける管理方法が煩雑であったり、時系列の飛行ログ取得や累積飛行時間の管理が難しいなどの課題がある。

 Smart at droneは、ドローンの利用にまつわるこうした課題を解決するコンセプトで開発した。まず、ドローンの航行技術を取得するまでに時間がかかるという課題に対しては、難しい操縦を必要としない自動航行機能を搭載した。データ管理の煩雑さの解消に向けては、簡単に操作できるソフトを開発した。ドローンで撮影したデータにレポーティングを付加する場合、動画をパソコンで再生し一時停止しながら、必要な画像データを文書作成ソフトに貼り付けコメントを残すなど手間がかかっていた。同社のサービスは、動画を再生しながら、気になる箇所を手動でクリッピングし、コメントを入力でき、その履歴を一元管理できる。植草取締役は、「ドローンを飛ばすには、国に許可申請を出す必要がある。当社では、申請をオンラインでできるようにした」と、ドローンの利用者を増やすため、利便性を徹底的に追求している。
 

旭川開発センター
田中利英
Smart at drone
開発リーダー

 同サービスは、北海道旭川市にある旭川開発センターで開発した。田中利英・Smart at drone開発リーダーは、「例えば水田などでは、ドローンをどの位の高さで、どの程度のスピードで飛ばし、空撮でカメラの角度をどうすれば圃場で作物を育てる業者に満足する映像を撮影できるか、何度も飛行を繰り返し実験した」と、述懐する。

 ドローンを投入しなければ、数haにおよぶ圃場の中央部の葉色を確認するのは難しかった。通常は圃場の端から確認し、ビークルという畑を掘り起こす農機具で、生育の悪い場所まで行き農薬を撒く。だが、ビーグルを使うと、そこに向かうまでに畑を痛める危険性があるという。ドローンで病虫被害のありそうな場所を特定し、空中散布で農薬を撒くことが可能になる。田中リーダーは、「動画データをすべてパソコンやクラウド上に置くと、ファイルが大量になってしまう。当社のサービスは必要な画像だけを簡単に保存でき、クラウド上で共有できる」と話す。こうした機能も、農業関係者とひざ詰めで実験してきたから生み出された。

ソフトバンク C&Sなどから販売

M-SOLUTIONS
植草 学
取締役

 同サービスは、今後も継続的に機能拡充を行う。植草取締役によると、「年内にドローンの航行をより簡単に設定する機能や、AIによる画像解析機能を搭載する。近く、電子証明書を利用したセキュリティ強化機能も追加する」という。セキュリティ機能は、サイバートラスト(眞柄泰利社長)の証明書を使い、サービスを利用するための端末認証を行う「デバイスID認証」を搭載予定だ。クラウド版は、サイボウズ(青野慶久社長)のPaaS「kintone」をプラットフォームとしてアプリ開発している。

 利用顧客としては、農業だけでなく建設業者なども想定している。建物や道路を上空から撮影し、劣化状態や舗装道路の状況確認、交通事故現場の検証、災害時の被害状況の確認などで利用を促す。12月には旭川市で農業関係者から利用のアイデアを募集しより現場に即した機能を追加する。

 販売は、グループ会社の流通卸ソフトバンク コマース&サービス(溝口泰雄社長兼CEO)に同サービスを提供し、同社からドローン本体(3DR SOLO)とノートパソコンをセットにしたモデルを提供。同社のドローン情報総合サイト「DroneBank」にも掲載しウェブ上で幅広い層へ販売を行う。

 M-SOLUTIONSは、Smart at droneを含めSmart atシリーズとして、Papperを使った受付業務など向けの「Smart at robo」など8シリーズを提供している。ドローンのサービスは、「主力サービスだ」(植草取締役)と、グループ会社や二次店などを通じ販売し同社事業の柱に育てる計画だ。

 各種調査会社によると、国内のドローンビジネス市場は、2020年には16年に比べ6倍以上の1200億円規模に成長するといわれている。ドローン関連のサービスは、導入する側と販売する側も不慣れだ。導入方法や利用環境をいかに簡素化するかが成否をわける。