EMC買収完了から8か月、目的地がみえてきた

【ラスベガス発】米デルテクノロジーズ(マイケル・デル会長兼CEO)は、5月8日から11日までの4日間、米ラスベガスで、「Dell EMC World 2017」を開いた。デル会長兼CEOは、以前から、デジタル変革を支えるインフラはハイブリッドクラウドこそが最適解だと主張してきた。Dell EMC World 2017では、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)への注力方針を示すなど、その裏付けとなるような新製品・サービス、施策の発表が目立った印象だ。旧EMCの買収完了から8か月、同社が目指す方向がより鮮明になったといえよう。(本多和幸)

オンプレの“最新化”を象徴するHCI

デルテクノロジーズ
マイケル・デル
会長兼CEO

 デルテクノロジーズはDell EMC World 2017で、サーバー、ストレージ、データ保護、ソフトウェアデファインドストレージ(SDS)、HCIなど、エンタープライズ事業を担うDell EMCを中心に多くの新製品(実際には既存ラインアップのアップデートがほとんどではあったが)を発表した。なかでも目玉といえるのが、第14世代のPowerEdgeサーバーだ。今夏リリース予定のインテルの次世代Xeonを搭載しており、次世代Xeonのリリースを待って、同じく今夏に市場に出る。デル会長兼CEOは、「新しいデータセンターの基盤として使われる製品で、オールフラッシュ、クラウド対応、スケーラブルという特徴がある」とコメントしている。

ヴイエムウェア
パット・ゲルシンガー
CEO

 ポイントは、第14世代のPowerEdgeが、HCI、ソフトウェアデファインドインフラストラクチャ(SDI)への活用を前提とした製品であることだ。HCIの「VxRail」については、昨年10月の「Dell EMC World 2016」でPowerEdge搭載版を発表。デルとEMCの統合による製品戦略や技術面での具体的な成果の第一弾となった。今回、最新のvSphereを採用した「VxRail 4.5」を発表し、第14世代のPowerEdgeのリリースとともにハードウェアもアップデートし、第14世代のPowerEdgeをベースとした新機能も提供する予定だ。また、ソフトウェアデファインドストレージ(SDS)の「ScaleIO」も、第14世代PowerEdgeに対応し、パフォーマンスや容量効率の大幅な向上を現実のものにするという。HCIのソフトウェア側のコア技術を担うヴイエムウェアのパット・ゲルシンガーCEOも2日目の基調講演で登壇し、「第14世代PowerEdgeは、vSAN(VxRailに採用されているストレージ仮想化ソフト)のベストパフォーマンスを引き出してくれる製品だ」と、大きな期待を寄せていることをうかがわせた。
 デル会長兼CEOは基調講演のなかで、「パブリッククラウドのみを使うという戦略では、長期的にみると競争力を失うだろう。というのも、オンプレミスのシステムも最新化され、ソフトウェア定義化されている。そして、自動化も使えるようになり、大幅に効率も上がっている。(ケースによっては)パブリッククラウドはオンプレミスの倍のコストがかかる。とくに見通しの利くワークロードではそれが顕著であり、私はそうしたワークロードが全体の90%ほどを占めると思っている」と話した。同社がハイブリッドクラウドの基盤と位置づけているHCIは、まさに“最新化したオンプレミスのシステム”の象徴だ。こうした製品群とパブリッククラウドなどを最適なかたちで組み合わせることで、デジタル変革の基盤となる新しい時代のインフラが構築できるというのが、デルテクノロジーズのメッセージだといえよう。

高まるヴイエムウェアの存在感

 さらに、今回のDell EMC World 2017では、こうしたハイブリッドクラウド戦略のなかで、デルテクノロジーズがヴイエムウェアを傘下に抱えることの意義が、従来に増して高まっているという印象も残した。

 ゲルシンガーCEOは基調講演で、「すべてのインフラはハイパーコンバージドになる」という従来の主張をあらためて掲げ、仮想化技術をはじめとする同社技術とDell EMCのITインフラ製品の組み合わせが、そうした世界を切り開いていくとの見解を示した。
 

Dell EMC
デヴィッド・ゴールデン
プレジデント

 ヴイエムウェアは、そのビジネスの性質上、旧EMCグループ時代から、各ハードウェアメーカーに対して中立的な立場を維持しようとしてきた。デルテクノロジーズ傘下となってもその方針に変更はないと当初はアナウンスしていた。しかし、Dell EMCのデヴィッド・ゴールデン・プレジデントは今回のイベント中、日本のメディアの取材に応じ、EMCフェデレーション時代のEMCとヴイエムウェアの関係を比べ、「Dell EMCとヴイエムウェアの関係のほうがより密結合的だ」という趣旨の説明をしている。

 また、ヴイエムウェアは、あらゆるデバイス、アプリケーション、クラウド(プライベートクラウド、各種パブリッククラウドを問わず)を、横串を通して一貫した展開モデル、セキュリティポリシー、ガバナンスのもとに運用するというビジョンを実現すべく、近年、具体的な製品を続々発表している。単にHCI向けに仮想化技術を提供するだけでなく、デルテクノロジーズのハイブリッドクラウド戦略における差異化ポイントを創出する役割を担っているともいえそうだ。

 HCIやストレージについては、「クラウド的」(ゴールデン・プレジデント)と表現する、初期投資不要、従量課金制・月額払いの新たな導入モデルも発表した(ちなみにPCについても、本体とソフトウェア、サポートサービスなどをセットで月額料金制のサービスとして提供する「PC as a Service」をグローバルで展開することをあらためて発表した)。Dell EMC World 2017では、デル会長兼CEOをはじめ、登壇した多くの幹部から、「クラウドとは場所の話ではなく、運用モデルのこと」というコメントが聞かれた。ここでいう「クラウド的」とは、サービス化とも表現できるだろう。オンプレミス、プライベートクラウドのインフラもサービス化することで、イニシャルコストのハードルが下がり、ハイブリッドクラウドによるデジタル変革のための最適なインフラ構築に、より多くのユーザーが踏み出すことができるというわけだ。

 ただし、この新しい導入モデルは、デルテクノロジーズとしてもどの程度市場ニーズがあるかは把握できていないという。チャネルパートナーのビジネスモデルにも大きな影響を与えることになる。グローバルでの状況はもちろん、日本市場にどのようなかたちで導入することになるのか、推移を注視したいところだ。