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<Special Interview>新任総経理の抱負 中国の日系 ITベンダー
2017/06/22 09:00
週刊BCN 2017年06月19日vol.1682 第2部掲載
例年、中国の日系ITベンダー現地法人では、上半期に経営トップ交代の人事が行われる。新たな経営トップは、どのような事業構想を描き、自社を成長に導いていくのか。今回は、2017年に就任した4人の総経理に、新任の抱負をざっくばらんに語ってもらった。(真鍋 武)
思誠思凱信息系統(上海)(SCSK上海)
──総経理としてどう舵を取っていきますか。
細谷 強みであるジャパンクオリティを生かしながら、仕事を愉しみ、そして新たな価値を創っていく。これを進めていきたいです。
例えば、当社は日本からきたお客様に対して、ITの提供を通してビジネスを支援していますが、この逆をやっていきたい。つまり、IoTやクラウドなど、中国の技術やビジネスモデルを日本にもっていって広めたいのです。中国にはすぐれた技術やユニークな発想をもつ人材がたくさんいて、チャンスは大きいとみています。
──もう少し詳しく教えてください。
細谷 具体的な例を一つ挙げますと、住友商事グループが出資している中国のIT企業との連携です。ビッグデータやネットワーク、IoTなど、すぐれたソリューションをもっている企業がありまして、彼らと一緒に中国の企業に対して展開したり、日本のお客様に提案したりしていきたい。すでに、そのための活動を開始しています。
こうした新たなビジネスは、投資が必要ですし、中国の市況もあって、これまで手が出せずにいました。しかし、天気は雨から晴れ模様に変わってきています。この好機を生かして、新たなビジネスに挑戦していきたいですね。
──一方、自社の課題はどんなところですか。
細谷 圧倒的に人が足りていないことですね。当社の社員数は約50人ですが、これではやれることが限られます。ですから、私の任期中には100人規模に拡大したいと考えています。
ただし、景気の波やお客様の投資動向によってビジネスが影響を受けるようでは、計画的な社員拡充は実施しにくい。これを行うには、しっかりとストックビジネスで土台をつくる必要があります。そこで、IT基盤の運用保守を強化していきます。基盤の運用保守が請け負えれば、都度でてくるシステム改修やリプレースの情報を早期収集したり、提案したりできるので、さらなるビジネスにつながります。現在、売り上げに占めるストックビジネス比率は4割程度。日本はほぼ6割がストックなので、この水準にもっていきたいです。
──先ほど、「雨から晴れに」とありましたが、市況は好転しているのですね。
細谷 日系企業については、過去1~2年はお客様がかなりIT投資に慎重で、様子見の姿勢だったと聞いています。今年は、これまで我慢してきたことを、やっていこうとする企業が増えているのでしょう。例えば、我慢しすぎてリプレースしなければいけないシステムも出てきているはずです。とくに、IT基盤はお客様が投資を我慢しやすい領域なので、今年は逆にチャンスだと捉えています。
──任期中にやり遂げたいことはありますか。
細谷 三つあります。一つは、先ほども申し上げた通り、社員数を100人にすること。これができると、売り上げも収益も伸びて新しいことにも挑戦しやすくなります。二つめは、働く環境を変えること。フリーアドレスやリモートオフィスの仕組みを導入するなど、働き方を変えていきたい。三つめは、社内の公用語を中国語にすること。そのために、私自身も中国語の勉強に力を注ぎます。佳報(上海)信息技術(JBCN上海)
──自社の強みについてどのように認識していますか。
久保 当社単体というよりも、JBグループとしての強みがすごく大きいと考えています。例えば、人材が豊富なJBグループの特性を生かして、中国にいるメンバーだけでなく、日本のサービス部門と連携して活動することで、日本の品質をお客様に届けることができます。
また、24時間体制でお客様のシステム運用監視を行う「SMAC」もJBCNの強みです。運用監視は他社さんも力を注いでいますが、当社は出来合いのサポートメニューをそのまま提供するのではありません。お客様の要望に応じてメニューをつくって、オーダーメイド的な形で組み合わせて提供することができます。「SMAC」は現在、既存のお客様への提案を徹底している注力商材となっています。
──一方、課題はどんなところでしょうか。
久保 日本でおつき合いがあるお客様が多いこともあって 、「JBCNはAS/400(現IBM i)の会社」というイメージが非常に強いことですね。お客様のなかには、これしかやっていないと思っている方もいらっしゃる。しかし、実際はそうではなく、当社のサービスのなかでAS/400はほんの一部分です。このことをいかに伝えていき、安心感をもって他のサービスを使ってもらえるかが、今後の重要な課題となります。
──顧客ターゲットについては、今度はどのように開拓しますか。
久保 現在、継続的に取引しているお客様は約180社ありますが、大規模から中小規模まで業種にこだわりなく提案しています。ただし、共通しているのはすべて日系のお客様だということ。この方針は、今後も変わりません。ローカル企業を開拓していく予定は現時点ではなく、あくまで日系に絞ります。
この領域では、日本と連携して提案していくことで、相乗効果を発揮することができます。中国に持ち込む価値のある日本ノウハウは、積極的に活用していきたいですね。
また、日本側のお客様が中国に進出する際、こちら側でしっかりサポートすることができれば、JBグループ全体としての評価も高まります。
──中国の日系企業のIT投資意欲については、どうみていますか。
久保 私は日系企業向けの市場が縮小しているとは感じていません。それよりも、いろいろなお客様を訪問してみますと、実際には困っていることが多い印象を受けます。ほとんどのお客様は、日本人がほんの2~3人で、残りはすべて現地の中国人で運営しています。その場合、責任者である日本人は多くの業務を抱え、不慣れなITに関しては不安も少なくありません。こうしたお客様に対して、しっかり窓口としての相談相手となることで、「JBCNに任せれば、トータルコーディネートしてくれる」と認めてもらえるようになりたいです。
──任期中に成し遂げたいミッションは何でしょうか。
久保 JBグループのなかで、JBCNを少しでも影響力のある会社にしていきたいと本気で考えています。筋肉質な会社を目指しその一環として、「SMAC」を中核としたストックビスネスを徹底的に強化します。現在、ストックの売上比率は3割程度ですが、これを大きく増やします。ストックビジネスに結びつかないことはやらないくらいのつもりで前進していきます。文雅科信息技術(ウイングアーク上海)
──どのように事業を拡大していきますか。
大金 プロダクトありきの提案からソリューション型の提案へ変えていくこと。これが、もっとも力を注ぐことです。これまで当社は、自社プロダクトの魅力を伝えることに力を注いできました。しかし、いくらスペックを巧みに説明しても、お客様の心には響くとは限らない。興味をもっていただくには、「このようにして課題を解決します」という具体的なプランの提示が重要です。
そのために、昨年3月にコンサルティング部隊を組織しました。お客様の社員になったつもりで、業務フローのなかに入り込み、課題や需要を深く理解する行動を始めています。これによって、ソリューション型の提案を進めていきたいですね。
また、営業組織に関しても、これまで分離していた日系とローカル企業向けの部隊を一つにまとめています。当社は社員数が限られていますから、意思疎通を活発化させることで効率的に運営していく狙いがあります。さらに、日本本社との連携を強化してます。日本のソリューションビジネスのノウハウをうまく中国に展開したいですね。
──今年の進捗状況はいかがですか。
大金 多くの引き合いをいただいている状況です。昼間はほとんどの社員が顧客訪問などで外出していて、多忙を極めています。とくに、製造業を中心としたIoT関連の案件で、情報活用ダッシュボード「MotionBoard」の引き合いが増えていますね。当社は業種にフォーカスした提案にも力を注いでいて、日本本社で豊富な経験・ノウハウをもつ製造業は、重要な領域の一つです。
ただし、IoTに関しては、キーワードばかりが先行していて、実際に自社でどのように活用していくのか、お客様も模索段階にある印象を受けます。お客様の声に深く耳を傾けて、幅広い提案をしていく必要があります。
──新たに計画している取り組みはありますか。
大金 パートナーやお客様のニーズを反映していくには、これまでのオンプレミス型だけでなく、クラウド型のビジネスにも力を注ぐ必要があると考えています。そこで現在、サブスクリプション方式の契約モデルを策定しているところです。
また、クラウドでは、日本のサーバーにアクセスする形だけでなく、中国国内からサービスを提供するやり方も検討しています。これを実現するには、パートナーの協力が不可欠となりますが、すでに協業に意欲を示してくれている企業も2社以上あります。
──今後の抱負について聞かせてください。
大金 まず2017年度は、昨年以上の業績を目指します。上半期に関しては、ここまで非常にいいペースで推移しています。この調子を維持していきたいですね。
また、当社は現在、約180社のユーザーを抱えていますが、大部分はBIツールのお客様です。今後は、もう一つの主力製品である帳票ツールの販売も伸ばしていきたい。そのための販売戦略を練っていく必要があります。
顧客ターゲットについては、日系企業向けのビジネスを軸足としつつ、引き続きローカル企業の開拓にも挑戦していく方針です。高律科(上海)信息系統(クオリカ上海)
──自社の強みや課題をどう認識していますか。
三村 製造業向け生産管理システム「AToMsQube」や外食産業・飲食業向け店舗・本部支援システム「TastyQube」といった自社ソリューションをもっていることが当社の強みです。お客様の要望に合わせてバージョンアップができますし、独自のヘルプデスクを設けて、きめ細やかなサポートを提供しています。
また、クラウド型でソリューションを提供していて、中国国内にデータセンター(DC)を置いていることも当社の特徴です。例えば、製造業向けではAToMsQubeの競争相手が複数社ありますが、オンプレミス型で提供していることが多く、中国国内からクラウド型で提供している競合はあまりありません。
ただし、クラウドのビジネスモデルでは、ユーザー数をいかに拡大するかが課題となります。そこで、日系企業だけでなく、中国のローカル企業も開拓していきたい。そのための具体的な戦略を練っていく必要があります。
──就任から数か月が経ちましたが、事業の進捗状況はいかがですか。
三村 2017年の上半期については、徐々に案件が増えている状況で、昨年度比では売上高が増えています。上期は目標値を達成できそうですね。日系企業の投資意欲が少しずつ戻ってきていて、環境的にはよくなっていると感じてます。とくに、IoTをキーワードとして、製造系の引き合いが増えています。
また、上半期は利益が大きく改善しています。昨年の後半頃から力を入れているプロジェクト管理体制強化の成果が出てきました。例えば、導入の計画フェーズをきちんと策定して、事前にお客様との合意を図るようにしています。あらかじめきちんと合意を得ることで、アドオン開発が必要なときには、追加費用を得やすくなるなどの効果がでています。
──中国のIT市場については、どのように認識していますか。
三村 モバイル決済の「微信支付(WeChatPay)」が急速に普及するなど、変化が早い市場だと感じています。当社も、こうした変化に適切に対応していく必要があります。
その一環として、「TastyQube」では「微信」や「餓了麼」(出前アプリ)などとの連携を進めています。例えば「微信支付」で決済したデータを自動的にPOSに登録したり、「餓了麼」のオーダー情報を自動登録したりするものです。こうしたデータ連携は、中国ではもはや“できてあたりまえ”のことで、お客様の要求レベルも高くなっています。
AToMsQubeでは、経営状況や在庫状況の可視化など、製造業の経営者により訴求できる機能をつくっていきたいですね。生産管理だけの機能でシステムが売れる時代ではなくなっています。
──ご自身の総経理としての使命はどのようにお考えですか。
三村 中国人マネージャー層を育てることが、私のミッションだと自覚しています。ゆくゆくは、中国人のマネージャーたちが、自分たちで会社を運営していけるようにしたいですね。当社は日系企業ですが、本社からの支援だけで事業を拡大していくには限界があります。また、日系のお客様でも中国人担当者が増えています。
事業戦略の観点では、強みを磨くことに力を注ぎます。ソリューションの機能を強化するだけでなく、ヘルプデスクなど、アフターフォローも含めて、よりお客様をサポートできるよう努めていきたいですね。
思誠思凱信息系統(上海)(SCSK上海)
中国で夢ある未来を、共に創る
──総経理としてどう舵を取っていきますか。
細谷友行 総経理
生まれ年 1961年
出身 宮城県仙台市
趣味 ダンス、筋トレ
例えば、当社は日本からきたお客様に対して、ITの提供を通してビジネスを支援していますが、この逆をやっていきたい。つまり、IoTやクラウドなど、中国の技術やビジネスモデルを日本にもっていって広めたいのです。中国にはすぐれた技術やユニークな発想をもつ人材がたくさんいて、チャンスは大きいとみています。
──もう少し詳しく教えてください。
細谷 具体的な例を一つ挙げますと、住友商事グループが出資している中国のIT企業との連携です。ビッグデータやネットワーク、IoTなど、すぐれたソリューションをもっている企業がありまして、彼らと一緒に中国の企業に対して展開したり、日本のお客様に提案したりしていきたい。すでに、そのための活動を開始しています。
こうした新たなビジネスは、投資が必要ですし、中国の市況もあって、これまで手が出せずにいました。しかし、天気は雨から晴れ模様に変わってきています。この好機を生かして、新たなビジネスに挑戦していきたいですね。
──一方、自社の課題はどんなところですか。
細谷 圧倒的に人が足りていないことですね。当社の社員数は約50人ですが、これではやれることが限られます。ですから、私の任期中には100人規模に拡大したいと考えています。
ただし、景気の波やお客様の投資動向によってビジネスが影響を受けるようでは、計画的な社員拡充は実施しにくい。これを行うには、しっかりとストックビジネスで土台をつくる必要があります。そこで、IT基盤の運用保守を強化していきます。基盤の運用保守が請け負えれば、都度でてくるシステム改修やリプレースの情報を早期収集したり、提案したりできるので、さらなるビジネスにつながります。現在、売り上げに占めるストックビジネス比率は4割程度。日本はほぼ6割がストックなので、この水準にもっていきたいです。
──先ほど、「雨から晴れに」とありましたが、市況は好転しているのですね。
細谷 日系企業については、過去1~2年はお客様がかなりIT投資に慎重で、様子見の姿勢だったと聞いています。今年は、これまで我慢してきたことを、やっていこうとする企業が増えているのでしょう。例えば、我慢しすぎてリプレースしなければいけないシステムも出てきているはずです。とくに、IT基盤はお客様が投資を我慢しやすい領域なので、今年は逆にチャンスだと捉えています。
──任期中にやり遂げたいことはありますか。
細谷 三つあります。一つは、先ほども申し上げた通り、社員数を100人にすること。これができると、売り上げも収益も伸びて新しいことにも挑戦しやすくなります。二つめは、働く環境を変えること。フリーアドレスやリモートオフィスの仕組みを導入するなど、働き方を変えていきたい。三つめは、社内の公用語を中国語にすること。そのために、私自身も中国語の勉強に力を注ぎます。
佳報(上海)信息技術(JBCN上海)
お客様の立場に立ったサービスを提供
──自社の強みについてどのように認識していますか。
久保 亨 董事長総経理
生まれ年 1968年
出身 福岡県北九州市
趣味 街散策
また、24時間体制でお客様のシステム運用監視を行う「SMAC」もJBCNの強みです。運用監視は他社さんも力を注いでいますが、当社は出来合いのサポートメニューをそのまま提供するのではありません。お客様の要望に応じてメニューをつくって、オーダーメイド的な形で組み合わせて提供することができます。「SMAC」は現在、既存のお客様への提案を徹底している注力商材となっています。
──一方、課題はどんなところでしょうか。
久保 日本でおつき合いがあるお客様が多いこともあって 、「JBCNはAS/400(現IBM i)の会社」というイメージが非常に強いことですね。お客様のなかには、これしかやっていないと思っている方もいらっしゃる。しかし、実際はそうではなく、当社のサービスのなかでAS/400はほんの一部分です。このことをいかに伝えていき、安心感をもって他のサービスを使ってもらえるかが、今後の重要な課題となります。
──顧客ターゲットについては、今度はどのように開拓しますか。
久保 現在、継続的に取引しているお客様は約180社ありますが、大規模から中小規模まで業種にこだわりなく提案しています。ただし、共通しているのはすべて日系のお客様だということ。この方針は、今後も変わりません。ローカル企業を開拓していく予定は現時点ではなく、あくまで日系に絞ります。
この領域では、日本と連携して提案していくことで、相乗効果を発揮することができます。中国に持ち込む価値のある日本ノウハウは、積極的に活用していきたいですね。
また、日本側のお客様が中国に進出する際、こちら側でしっかりサポートすることができれば、JBグループ全体としての評価も高まります。
──中国の日系企業のIT投資意欲については、どうみていますか。
久保 私は日系企業向けの市場が縮小しているとは感じていません。それよりも、いろいろなお客様を訪問してみますと、実際には困っていることが多い印象を受けます。ほとんどのお客様は、日本人がほんの2~3人で、残りはすべて現地の中国人で運営しています。その場合、責任者である日本人は多くの業務を抱え、不慣れなITに関しては不安も少なくありません。こうしたお客様に対して、しっかり窓口としての相談相手となることで、「JBCNに任せれば、トータルコーディネートしてくれる」と認めてもらえるようになりたいです。
──任期中に成し遂げたいミッションは何でしょうか。
久保 JBグループのなかで、JBCNを少しでも影響力のある会社にしていきたいと本気で考えています。筋肉質な会社を目指しその一環として、「SMAC」を中核としたストックビスネスを徹底的に強化します。現在、ストックの売上比率は3割程度ですが、これを大きく増やします。ストックビジネスに結びつかないことはやらないくらいのつもりで前進していきます。
文雅科信息技術(ウイングアーク上海)
顧客に深く入り込む
──どのように事業を拡大していきますか。
大金直樹 総経理
生まれ年 1971年
出身 東京都足立区
趣味 ギター
そのために、昨年3月にコンサルティング部隊を組織しました。お客様の社員になったつもりで、業務フローのなかに入り込み、課題や需要を深く理解する行動を始めています。これによって、ソリューション型の提案を進めていきたいですね。
また、営業組織に関しても、これまで分離していた日系とローカル企業向けの部隊を一つにまとめています。当社は社員数が限られていますから、意思疎通を活発化させることで効率的に運営していく狙いがあります。さらに、日本本社との連携を強化してます。日本のソリューションビジネスのノウハウをうまく中国に展開したいですね。
──今年の進捗状況はいかがですか。
大金 多くの引き合いをいただいている状況です。昼間はほとんどの社員が顧客訪問などで外出していて、多忙を極めています。とくに、製造業を中心としたIoT関連の案件で、情報活用ダッシュボード「MotionBoard」の引き合いが増えていますね。当社は業種にフォーカスした提案にも力を注いでいて、日本本社で豊富な経験・ノウハウをもつ製造業は、重要な領域の一つです。
ただし、IoTに関しては、キーワードばかりが先行していて、実際に自社でどのように活用していくのか、お客様も模索段階にある印象を受けます。お客様の声に深く耳を傾けて、幅広い提案をしていく必要があります。
──新たに計画している取り組みはありますか。
大金 パートナーやお客様のニーズを反映していくには、これまでのオンプレミス型だけでなく、クラウド型のビジネスにも力を注ぐ必要があると考えています。そこで現在、サブスクリプション方式の契約モデルを策定しているところです。
また、クラウドでは、日本のサーバーにアクセスする形だけでなく、中国国内からサービスを提供するやり方も検討しています。これを実現するには、パートナーの協力が不可欠となりますが、すでに協業に意欲を示してくれている企業も2社以上あります。
──今後の抱負について聞かせてください。
大金 まず2017年度は、昨年以上の業績を目指します。上半期に関しては、ここまで非常にいいペースで推移しています。この調子を維持していきたいですね。
また、当社は現在、約180社のユーザーを抱えていますが、大部分はBIツールのお客様です。今後は、もう一つの主力製品である帳票ツールの販売も伸ばしていきたい。そのための販売戦略を練っていく必要があります。
顧客ターゲットについては、日系企業向けのビジネスを軸足としつつ、引き続きローカル企業の開拓にも挑戦していく方針です。
高律科(上海)信息系統(クオリカ上海)
強みを磨く
──自社の強みや課題をどう認識していますか。
三村和則 総経理
生まれ年 1977年
出身 神奈川県秦野市
趣味 サッカー
また、クラウド型でソリューションを提供していて、中国国内にデータセンター(DC)を置いていることも当社の特徴です。例えば、製造業向けではAToMsQubeの競争相手が複数社ありますが、オンプレミス型で提供していることが多く、中国国内からクラウド型で提供している競合はあまりありません。
ただし、クラウドのビジネスモデルでは、ユーザー数をいかに拡大するかが課題となります。そこで、日系企業だけでなく、中国のローカル企業も開拓していきたい。そのための具体的な戦略を練っていく必要があります。
──就任から数か月が経ちましたが、事業の進捗状況はいかがですか。
三村 2017年の上半期については、徐々に案件が増えている状況で、昨年度比では売上高が増えています。上期は目標値を達成できそうですね。日系企業の投資意欲が少しずつ戻ってきていて、環境的にはよくなっていると感じてます。とくに、IoTをキーワードとして、製造系の引き合いが増えています。
また、上半期は利益が大きく改善しています。昨年の後半頃から力を入れているプロジェクト管理体制強化の成果が出てきました。例えば、導入の計画フェーズをきちんと策定して、事前にお客様との合意を図るようにしています。あらかじめきちんと合意を得ることで、アドオン開発が必要なときには、追加費用を得やすくなるなどの効果がでています。
──中国のIT市場については、どのように認識していますか。
三村 モバイル決済の「微信支付(WeChatPay)」が急速に普及するなど、変化が早い市場だと感じています。当社も、こうした変化に適切に対応していく必要があります。
その一環として、「TastyQube」では「微信」や「餓了麼」(出前アプリ)などとの連携を進めています。例えば「微信支付」で決済したデータを自動的にPOSに登録したり、「餓了麼」のオーダー情報を自動登録したりするものです。こうしたデータ連携は、中国ではもはや“できてあたりまえ”のことで、お客様の要求レベルも高くなっています。
AToMsQubeでは、経営状況や在庫状況の可視化など、製造業の経営者により訴求できる機能をつくっていきたいですね。生産管理だけの機能でシステムが売れる時代ではなくなっています。
──ご自身の総経理としての使命はどのようにお考えですか。
三村 中国人マネージャー層を育てることが、私のミッションだと自覚しています。ゆくゆくは、中国人のマネージャーたちが、自分たちで会社を運営していけるようにしたいですね。当社は日系企業ですが、本社からの支援だけで事業を拡大していくには限界があります。また、日系のお客様でも中国人担当者が増えています。
事業戦略の観点では、強みを磨くことに力を注ぎます。ソリューションの機能を強化するだけでなく、ヘルプデスクなど、アフターフォローも含めて、よりお客様をサポートできるよう努めていきたいですね。
例年、中国の日系ITベンダー現地法人では、上半期に経営トップ交代の人事が行われる。新たな経営トップは、どのような事業構想を描き、自社を成長に導いていくのか。今回は、2017年に就任した4人の総経理に、新任の抱負をざっくばらんに語ってもらった。(真鍋 武)
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