全製品の基盤となる統合プラットフォームをクラウドに

 SMB向け業務ソフト市場の王者であるオービックビジネスコンサルタント(和田成史社長)が、ビジネスのあり方を大きく変えようとしている。同社は近年、主力商材である基幹業務ソフト「奉行シリーズ」だけでなく、マイナンバーやストレスチェックへの対応など、法・制度の改正により発生する新しい業務を支援するSaaS商材のビジネス拡大にも積極的に取り組んできた。次のステップとして、将来的に同社の全製品の基盤となる統合プラットフォームをクラウド上に構築し、AI、ビッグデータ、IoT、FinTechといったキーワードも取り込みながら、基幹業務にとどまらない、ユーザー企業の業務全体を支援するソリューション群を整備していきたい考えだ。(本多和幸)

奉行と業務サービスの融合

 まずは、OBCの現在の主な製品ラインアップをおさらいしてみる。主力の奉行シリーズは、最新の「奉行10」でクラウドファーストを謳ってはいるものの、実際はIaaS運用に対応したというレベルだ。OBCとパートナーシップを結んだクラウドベンダーのパブリッククラウド上に販売パートナーが運用環境を構築する「奉行10クラウド(パブリッククラウドモデル)」、OBC自身が「Microsoft Azure」上で環境構築、運用、サポートまでを手がける「OBCクラウドサービス(オールインワンモデル)」という二つの提供方法を用意しているが、サブスクリプション型で利用できるSaaSとしての提供はしていない。現在、そうしたかたちで提供している基幹業務ソフトは、昨年12月にリリースした小規模事業向けの「奉行Jクラウド」のみだ。
 
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和田成史
社長

 一方で、同社が2015年に、「奉行に並ぶ柱に育てる」(和田社長)べく市場投入した新商材が、「業務サービス」だ。マイナンバーやストレスチェックへの対応のように、法・制度改正や社会環境の変化により、バックオフィス業務と深く関連はするものの、従来の基幹業務システムの機能の延長ではカバーしきれない新しい業務が発生している。こうした業務を支援するアプリケーションをSaaSとして提供するサービスだ。

 OBCのロードマップは、この奉行シリーズと業務サービスを、クラウド上に構築した統合プラットフォームで融合させるというものだ。両者を統合ソリューションとして提供するのはもちろん、個別の機能をプラットフォーム経由で外部サービスとAPIを使って連携させることもできるようにするという。これにより、企業の業務全体に横串を通してデジタル化し、中小企業のデジタル変革を支援していくコンセプトだといえよう。

 同社はこの統合プラットフォームを「OBC業務クラウドプラットフォーム」と名づけ、今年6月から8月にかけて全国で開催している「OBCパートナーカンファレンス2017」で、パートナーにその概要をアナウンスした。近くこのプラットフォームを構成する個別の機能もリリースする。

12月にプラットフォームの
中核製品を投入

 OBC業務クラウドプラットフォームについて和田社長は、「OBCの製品ポートフォリオがすべて単一のデータモデルで使えるプラットフォームを、Microsoft AzureのPaaS上につくったもの」と表現する。Azureを採用することで業務システムの要求に耐え得る可用性やセキュリティを確保し、多言語・多通貨の概念も標準搭載したほか、AIエンジンやBIも搭載し、業務の生産性を飛躍的に高めることを目指しているという。こうした機能は現時点ですべてを実装できているわけではなく、リリース後に順次追加していく予定のようだが、まずは具体的なプロダクトの第一弾として、OBC業務クラウドプラットフォームの中核を成すキーソリューション「ワークベース」を、今年12月にリリースする。機能はリリース後に順次拡張していく。

 ワークベースは、ワークフロー、外部システムとのAPI、マスタの一元管理、文書のフォーム設計、各エンドユーザーのポータル機能、インターフェースのマルチデバイス対応など、多様な機能を備えるミドルウェア的製品。「企業内のさまざまな既存業務をシステム内に取り込んで自動化、効率化できるほか、ワークベース内で処理される業務トランザクションの処理時間やプロセス単位の滞留時間もモニタリングできるようになっており、業務プロセスを段階的に改善・最適化するための開発を継続的に加えていくこともできる」(同社担当者)とのことだ。そのため、パートナーにとっては、「販売から導入までのイニシャルビジネスはもちろん、サポートや継続的な業務改善のためのコンサル、開発や他システムとの連携の拡大といったランニングビジネスのポテンシャルも大きい」としている。さらに、業務サービスや基幹システムを外部システムと連携させる場合のハブとなる製品でもあることから、ビッグデータ、IoT、FinTechなどのソリューション構築でも要となる。

 OBC業務クラウドプラットフォームは、当面、業務サービスと奉行Jクラウドのプラットフォームとして稼働することになる。業務サービスについては、経費精算サービス、労務管理サービス、BCP対策のための安否確認サービスなどを近くリリースする予定で、OBC業務クラウドプラットフォーム上でカバーできる業務範囲のさらなる拡大を図る。

 また、ワークベース、OBC業務クラウドプラットフォームと奉行10はSDKで連携することになるが、前述のロードマップのとおり、奉行10の次期製品は、OBC業務クラウドプラットフォーム上で提供するSaaSモデルになる。これにより、製品ラインアップの軸足を完全にクラウドに移し、基幹業務ソフトと業務サービスのシームレスな連携を実現する意向だ。次期奉行シリーズのリリース時期については、「明言はできないが、20年に5Gのサービスが開始されれば、クラウドの可能性はもう一段先に進む。それまでには市場を先取りした動きをしたい」(和田社長)としており、19年前後となる可能性が高い。