設立3年以内の“Exit”は吉と出るか

 ソラコム(玉川憲社長)がKDDI(田中孝司社長)の子会社になることを決断した。これまで、通信事業者の色がつくことなくIoTプラットフォームを提供してきたが、今後はKDDIグループとしてビジネスを手がけることになる。果たして、KDDI傘下の道を選んだ理由は何なのか。また、既存のビジネスに影響を及ぼすことはないのか。玉川社長は、「日本発グローバルプラットフォームを構築する」とアピールする。(佐相彰彦)


(写真左から)KDDIの新居眞吾本部長、ソラコムの玉川憲社長、KDDIの藤井彰人副本部長

 2014年11月に設立したソラコムは、IoT通信プラットフォーム「SORACOM」や通信コアネットワーク「SORACOM vConnec Core」を提供し、3年を待たずして7000以上の顧客を獲得している。350社を超えるパートナーによってIoTエコシステムを構築。短期間で「IoTといえば、ソラコム」というブランドイメージを確立しつつあるなか、KDDIの子会社に転じることを決断した背景には、いくつかの理由がある。KDDIとの共同記者会見で登壇した玉川社長が今後の課題として掲げたのは、「セルラーLPWA/5Gのサービスを早いタイミングで開始できるか」「SORACOM vConnec Coreで実現できる範囲の拡大」「グローバルでの交渉力、営業力」「さらなる資金調達、リソース調達」である。

 これまでソラコムはMVNOとしてビジネスを手がけてきたものの、「MVNOの立場では限界がある」と玉川社長。MVNOの場合、セルラーLPWA/5Gのネットワークを使うためには通信事業者からの貸し出し許可を待たなければならない。そこで、通信事業者の傘下に入ることが近道と考えたわけだ。また、KDDIの通信ネットワーク基盤とソラコムの技術を組み合わせて、将来的に次世代ネットワーク基盤の構築を目指す。SORACOM vConnec Coreの範囲を拡大できることになる。グローバルでの交渉力や営業力においては、KDDIによる海外通信事業者とのパートナーシップを生かし、ソラコムの技術を広めていく。このようなメリットに加えて、資金調達やリソース調達についても子会社になったほうが、今まで以上に安定した事業基盤を構築できるとの判断だ。

 KDDIにとっても、「過半数の株式を取得したのは、ソラコムのリソースがKDDIグループの成長に欠かせない」(新居眞吾・バリュー事業本部バリュー事業企画本部長)と判断したからだ。しかも、「世界各国で共通のIoTプラットフォームを構築し、IoTビジネスをKDDIとソラコムのハイブリッドで展開することができる」(藤井彰人・ソリューション事業本部ソリューション事業企画本部副本部長)としている。

 ソラコムは、KDDIの子会社になるものの会社は存続し、NTTドコモの回線や海外通信事業者の回線を使ったMVNOとしてのサービスも継続する。働き方やオフィス、社風など、ソラコムに根付いている文化も、経営陣も残るという。玉川社長は、「“Exit(出口)”というよりも、むしろ、これまで単独では届かなった領域に道を開く“Entrance(入口)”」と表現する。KDDIの子会社になったが、先行して世界標準の「日本発グローバルプラットフォーム」をつくり上げるために「初心は忘れないが、第2創業期と捉えている」という。ただ、これまで獲得した顧客を維持することに加えて、これまでのベンダーとのパートナーシップを継続することができるのかどうか。KDDIの子会社になったことによるデメリットも気になるところだ。