サイボウズ(青野慶久社長)が売上高100億円に王手をかけた。2月に発表した2017年12月期連結決算では、売上高95億200万円、営業利益8億200万円を記録し、18年12月期の業績については108億円~113億円に達し、100億円を突破する見込みであると発表した。グループウェアのパッケージ販売からクラウドサービスへのシフトを機に、10年代初頭の停滞から急成長に転じたサイボウズが次なる一手として打ち出したのは、グローバル市場への投資の本格化による成長のさらなる加速だ。(本多和幸)

クラウドシフト後の急成長

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青野慶久
社長

 サイボウズは、17年12月期の期初予想では売上高を89億円としていたが、フタを開けてみると実際の売上高は、95億200万円という結果になった。青野社長はその要因について、「クラウドが引き続き非常に好調で、パッケージの売り上げも思ったより減らなかった」と説明する。

 クラウドが同社の成長を支えているのは、数字からも明らかだ。中小企業向けグループウェアの「サイボウズOffice」や大規模・中堅企業向けグループウェアの「Garoon」のSaaS版、PaaSの「kintone」などを含む「cybozu.com」の有料契約社数は2万社を超えた。cybozu.comの17年12月期の売上高は56億4900万円となり、前期比で39.5%の伸びを示している。また、売上高全体に占める割合は、6割近くに達している。

 オンプレミスのグループウェアパッケージの販売を中心としたビジネスを手がけてきた同社が、クラウドサービスを提供し始めたのは11年のこと。10年12月期からの3期は、売上高が連続して減少するという状況にあり、それ以前も売上高の推移はほぼ横ばいだった。しかし、クラウドの実績が業績に反映され始めた12年12月期を起点に大きく成長し始め、ここ数年は加速度的な伸びをみせている。パッケージの売上高は漸減傾向にあるが、クラウドがそれを補っている。

 商材ごとのビジネスの状況をみても、クラウドシフトの効果は顕著だといえそうだ。17年12月期のサイボウズOfficeは、2期連続で最高売上高を更新した。青野社長は、「一時期売り上げが落ち込んだが、クラウド版を出してから息を吹き返した」と話す。また、Garoonについても、「クラウド契約が堅調に増加している」としている。

 さらに、これらのSaaS版グループウェア以上にクラウドの成長をけん引しているのが、ビジネスアプリ作成・運用のプラットフォームであるkintoneだ。青野社長も、「現在サイボウズが最も力を入れているプロダクトだといっていい」とあらためて宣言する。ノンプログラミングでフロント系の業務アプリケーションを構築できる手軽さなどから、業務部門が主体的に働き方改革を進めるためのツールとして市場に評価されたことが追い風になった。青野社長は、「働き方改革には業務そのものの改善が必須であるというのが、サイボウズがずっと訴えてきたこと。現場の人たちが自分たちの手で業務アプリをつくり業務改善に役立てていくのを、kintoneによって支援するというメッセージを発信し続けてきた。こうしたマーケティング活動の結果が出た」と手応えを語る。17年12月期の実績としては、導入者数は前期比1.7倍の8000社となり、売上高は具体的な数字を公表していないものの、前期比で1.5倍の水準に成長したという。

kintoneを核に海外でも成長

 サイボウズは、kintoneを全社の成長の核になる製品と位置づけており、市場の裾野を拡大するために、今年1月、kintoneを活用した業務の効率化・改善スキルを証明する「kintone認定資格制度」をスタートさせた。kintoneプロダクトマネージャーの伊佐政隆氏は、「業務改善を業務の当事者が自分でやるというトレンドを加速させたいというのが、認定資格制度を始めた目的。kintoneを駆使して業務改善を進めるノウハウをもつユーザー側の人材は、社内で重宝がられる一方で、職業定義がされておらず、正当に評価されないケースも多い。kintoneによる業務改善スキルを証明できる制度をつくることで、活躍の場を広げてもらう」と、サイボウズ側の意図を説明する。18年は、受験者数1100人、合格者数300人を目標に掲げている。

 この動きだけをみると、ユーザーによるセルフサービス化を進める方向にもみえるが、一方で、kintoneの公式パートナーは300社を超え、SIビジネスの規模も前期比で150%に拡大している。認定資格制度は、「パートナーにとってもカスタマイズスキルを客観的に証明してくれる制度であるとともに、スキルの底上げにつながる効果も期待できる」(伊佐氏)という。エコシステムを多面的に強化し、kintoneの活用場面を拡大していくことで成長を加速させようとしているとみるのが自然だろう。

 サイボウズは、18年12月期に売上高が100億円を突破するとの予測を示しているが、同社にとって、この数字にはどんな意味があるのだろうか。青野社長に問うと、「自分たちのソフトウェアサービスをグローバルに広げていくためには、100億円くらいの売上高のベースがあって初めて十分な投資ができる」との回答。この言葉通り、18年は海外市場での成長にも本腰を入れる姿勢を鮮明にしている。すでに中国では840社のユーザーを獲得しているが、18年以降、米国でのkintoneの拡販に本腰を入れる。

 海外でのサービス提供にあたっては、自社で運用しているcybozu.comの開発・運用基盤ではなく、既存のパブリッククラウドをクラウド基盤として採用し、サービス開発・提供にリソースを集中させていく方針を示していたが、米国では、AWS(Amazon Web Services)を採用。19年1月にAWS上での運用を開始することも明らかにした。青野社長は、「ミドルウェアは海外の大手ベンダーの市場というイメージだったが、kintoneには、それを払拭できそうな手ごたえを感じている。今年は米国で本気で戦っていく。具体的な数値目標は置いていないが、当社の理念をていねいに市場に浸透させていくことで、数字はついてくると思っている」と話す。一方、伊佐氏は、「米国ではITを活用した業務改善を担う人の職業定義がされ始めているが、大企業などで活躍する非常にハイスペックな人材として定義されてしまっている。kintoneはもっと幅広く使ってもらえるところにポテンシャルがあって、中小企業における現場の業務改善などで新しい市場をつくっていけると考えている」と話し、潜在的な市場は大きいとの見方を示している。