オンプレミス環境でありながら、利用量に応じて使った分だけ月額課金される、いわゆるITインフラの従量課金サービスが日本で本格的に拡大している。サーバーやストレージ、ネットワーク機器などをオンプレミス環境に置き、パブリッククラウドのように従量制で課金される。オンプレミスとクラウドのいいとこ取りをしたようなサービスだ。すでに大手のITベンダーが動き出している。それが日本ヒューレット・パッカード(日本HPE)とDell EMCだ。(山下彰子)

HPE、パートナー協業は手さぐり

 日本HPEは2月15日にオンプレミス消費型サービス「HPE GreenLake」の提供を開始した。顧客のオンプレミス環境にITインフラやパッケージソリューション群を配置し、利用量に応じて課金するサービスだ。HPE以外の製品を薄価で買い取り、月額プランにすることもできる。さらに、キャパシティ管理に専任のアドバイザーがつく。ITインフラの上で動くパートナーのソリューションも含め、サポート窓口や支払先を一本化できる。

 HPEは、オンプレミス配置型のIaaSを従量課金モデルとして米国で7年前、日本では4年前から提供していた。それが「フレキシブルキャパシティ」だ。今回、それをブラッシュアップし、「HPE GreenLake フレックスキャパシティ」に変更。さらに顧客のワークロード種別ごとにプリパッケージしたエンド・トゥ・エンドのソリューション群「HPE GreenLakeソリューション」を追加した。
 
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日本ヒューレット・パッカード
小川光由
執行役員
Pointnext事業統括

 4年前から取り組んでいるフレキシブルキャパシティは順調に伸びており、日本HPEの小川光由・執行役員 Pointnext事業統括は、「15年から倍々で伸びている。この勢いのままHPE GreenLakeも伸びていくだろう」と話す。また今後、ITインフラのビジネスモデルは従量課金モデルに切り替わっていくとし、「金額ベースで18年には50%、20年には80%が従量課金モデルになる」と強調。ITインフラを所有するビジネスモデルから消費するビジネスモデルに変わっていくとした。

 国内でスタートを切ったばかりのHPE GreenLakeだが、懸念が二点ある。一つは最低契約期間が3年と、やや長いことだ。IT市場の変化は速く、そのスピードも年を追うごとに加速している。3年の間にCPUはアップグレードし、新しいテクノロジーも誕生する。アップグレードや新しいソリューションのインストールなどは日本HPEがすべて請け負う。企業はITインフラの管理・運用をすべて任せることができる反面、自社の環境にITインフラがありながら触ることができない。

 もう一つがパートナー戦略だ。従量課金モデルでのパートナー制度については「現在検討中」(小川執行役員)という。例えば、支払い方法は一度、日本HPEにまとめられ、そこから日本HPEがパートナーにソリューション料金として支払う形を想定しているという。小川執行役員は、「すべてHPEが巻き取ってしまうと感じるパートナーもいるはず。でもそうではない。パートナーと協業するビジネスモデルを考えていく」と話しており、この点は大きな課題といえる。

Dell、パートナーとの協業は多様

 日本HPEよりも1年近く前に従量課金モデル「Dell Financial Services(DFS) Flex on Demand」「DFS Cloud Flex for HCI」をスタートさせたのがDell EMCだ。昨年の5月に米デルテクノロジーズが、従来の買い切りモデルに加えて、従量課金モデルを追加することを発表。日本市場でも取り組みを開始した。「DFS Flex on Demand」はストレージ全般、「DFS Cloud Flex for HCI」はHCIの「Dell EMC VxRail」「Dell EMC XCシリーズ」が対象となり、現時点ではサーバーは含まれていない。
 
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EMCジャパン
小川哲也
デルファイナンシャルサービス
日本・韓国地域ディレクター

 例えば、ストレージの場合、必要な容量に加え、将来的に使う可能性のある容量まで組み込んで企業の環境に設置する。企業は設置されたストレージ容量ではなく、実際に使用した分だけを支払う。事業拡大などで、増設が必要になったら、このバッファのストレージをすぐ使うことができる。EMCジャパンの小川哲也・デルファイナンシャルサービス 日本・韓国地域ディレクターは、「あらかじめ入れているのでリードタイムがない」と短時間で対応できるメリットを強調する。

 実は、EMCは15年ほど前からストレージの従量課金サービスを提供しており、この長年のノウハウが生きている。例えば課金単位だ。ハイエンド・ストレージの「Symmetrix」はGB単位、スケールアウト型NASの「Isilon」はノード単位、HCIや今後追加予定のサーバーやCPUはVM単位、スイッチはポート単位で課金される。課金の単位は企業の運用に合わせて相談できるという。

 もう一つ、ノウハウが生きている面がパートナーとの協調だ。15年前にストレージの従量課金サービスをスタートした頃からどうやって協調していくか、議論を重ねてきた。

 「パートナーごとに独自のやり方、ビジネス形態がある。案件単位で枠組みや調達方法などを相談し、対応してきた。なかには製品を提供するだけのパートナー、システムや付加価値をつけたいパートナー、そもそも従量課金サービスは取り扱わないパートナーもいらっしゃる。多種多様な取り組みがあり、柔軟に対応している」と小川ディレクターは説明する。

クラウドの代わりになるか

 今後、ITインフラは従量課金サービスに切り替わるのか。EMCの小川ディレクターは「従来通りの売り切りモデルはなくならない」と強調する。「将来の予測ができ、必要なリソースがわかっている基幹システムなどを従量課金サービスに移行する必要はない。それより従来型の方がコストメリットがある」と説明する。従量課金サービスの活用法としては、「デジタル革命を意識し、新しい事業に取り組んでいる企業は多い。新規事業でクラウドを利用している場合、事業が軌道に乗り、数年続けていくとなった時、コストを考えてオンプレミスに置きたいと考える企業もある。実際、クラウドからオンプレミスに戻る動きがある。また、オンプレミス環境に置きたいが、初期費用を考えてクラウドのような月額で支払いたいというニーズも今後高まっていくだろう。この受け皿が従量課金サービスだ」と小川ディレクターは説明する。今、クラウドへの移行を検討している企業のなかには、クラウドへはいかず、従量課金サービスに移行するケースも今後出てくるかもしれない。