SAPジャパン(福田譲社長)が、中堅・中小企業向けビジネスへの注力方針を打ち出してから、約1年が経過した。過去の挫折を踏まえ、「今回こそは本気で取り組む」として組織体制も大きく変革し、社内のリソースも増強。新たなパートナー開拓にもこの1年で積極的に取り組んできた。果たして、悲願の中堅・中小企業向けビジネス攻略はなったのか。(本多和幸)

案件数、売上高とも倍増


牛田 勉
常務執行役員
ゼネラルビジネス統括本部
統括本部長
 「この1年の中堅・中小企業向けビジネスは、非常に大きな手応えがあった。SAPに中堅・中小企業向けビジネスは無理、という結論を半ば皆さん期待されていたかもしれないが、期待を裏切って申し訳ない」。SAPジャパンの牛田勉・常務執行役員ゼネラルビジネス統括本部統括本部長は取材の冒頭、満面の笑みでそんな冗談を飛ばした。結論をいってしまえば、SAPジャパンの中堅・中小企業向けビジネス注力宣言は所定の成果を得て、次の一手を打てる状況になったということのようだ。

 具体的な数字をみてみよう。2017年度(17年12月期)、中堅・中小企業向けの案件は前年度比で倍以上に増え、売上高も倍増したという。さらに、パートナー経由での商談が2.5倍で、パートナービジネスの比率が高まった。牛田常務執行役員は、「デジタルマーケティング施策を打ったが、これが非常に有効だった。専用ウェブサイトを開設したり、ソーシャルメディアを使ったPRにより、ずいぶんとお客様の認知度が上がった」と説明する。とくにブログで中堅・中小企業向けの商材情報や事例をこまめに発信し、技術的な要素も入れて詳細な分析も加えた内容にしたことで、中堅・中小企業の情報システム部門の担当者が情報収集する際によく閲覧されるようになったという。「ITの現場の担当者にSAPが中堅・中小企業向けビジネスに注力していることをあらためて認識していただけたのが大きかった。SAPの調査でも、大企業向けと見られがちなSAPソリューションに対するイメージが変わったといえる結果が出ている」と牛田常務執行役員は振り返る。具体的な商材ごとのビジネスをみても、例えばSaaSで提供するクラウドERP「Business ByDesign」は、年商20億円~30億円規模の中小企業といえるユーザーで導入が急速に進んでいるという。また、これらの施策は新規顧客の獲得につながっただけでなく、既存顧客のクラウド化やERPの刷新に伴うHR、CRM、アナリティクス系の商材への追加投資なども進み、既存顧客の案件数も53%増となった。
 

中堅・中小向けこそ成長の余地が大きい


 数字をみると大きく成長したようにみえるが、一方でまだ中堅・中小企業向けビジネスの再スタートを切ってから1年が経過した時点での数字であり、もともとのビジネス規模もそれほど大きくないのも確か。牛田常務も、「やはりSAPは今回こそ本気なのか、というご質問はことあるごとにさまざまなな立場の方から投げかけられる」と明かす。それでも、「SAPの本気度に揺るぎはない」と牛田常務執行役員は言い切る。牛田常務執行役員はもともとゼネラルビジネス統括本部統括本部長の職にはあったが、常務執行役員に就いたのはごく最近の話。役職が一段階上がったのはその証左だという。「私がSAPジャパンの本当の役員になったのは、SAPジャパンとしてゼネラルビジネス(中堅・中小企業向けビジネス)の位置づけをしっかり格上げしているため」と話す。

 牛田常務執行役員のミッションはこの成長を継続させていくことになるわけだが、市場環境は良好だと考えているようだ。「グローバルにビジネスを展開するという流れが、大企業だけでなく中堅企業や中小の成長企業でも非常に増えてきた。さらに、基幹系も含めた情報システム全体のクラウドの流れも強まっている。ここでSAPが40年間蓄積してきたビジネスプロセスのノウハウを使い倒してやろうという動きが活発化している。さらに、情報システムを抜本的に刷新し、クラウドERPやEC、IoTなどを組み合わせ、クラウド化やビジネスそのもののデジタル変革を一気に進めてしまおうという動きは、実は中堅・中小企業でこそ活発化している」(牛田常務執行役員)。

 
山川敦士
ゼネラルビジネス統括本部
パートナー営業部
パートナーソリューションセンター
シニアマネージャー
 SAPジャパンは、こうしたニーズを着実にすくい取るべく、パートナープログラムも強化している。パートナーがSAP製品を使って開発したバーティカル・ソリューションなどをSAPが承認する「パートナー・パッケージ・ソリューション承認制度」を中堅・中小企業向けビジネスにも本格的に適用する。山川敦士・ゼネラルビジネス統括本部パートナー営業部パートナーソリューションセンターシニアマネージャーは、「テンプレート化して提供していくソリューションの質を担保していくための制度。質の高い安定したサービスを短期間で提供できるようになることでお客様も導入しやすくなるし、パートナーもより多くの案件を捌けるようになるし、一案件ごとの利益率も高まり、ビジネスチャンスは広がる」と狙いを説明している。パートナー経由の案件が増えているとはいえ、積極的に活動し成果を出しているパートナーとそうではないパートナーの濃淡が現時点でははっきりしてしまっているのも事実。パートナーの活動を幅広く活性化し、底上げにつなげていきたい考えだ。