さくらインターネット(田中邦裕社長)は、「宇宙データプラットフォーム事業」を始動した。政府衛星データを無料で簡単に利用することができるプラットフォームを構築し、これまで限定的だった産業領域での利用を促進。これによって、新たな市場を形成させる。田中社長は、「相当な経済への波及効果が見込める」と期待感を示す。(真鍋 武)

 全世界の宇宙産業は2015年時点で30兆円規模あり、欧米では民間企業が積極的に参入している。一方、日本では、政府衛星データが研究機関向けには公開されているものの、一般企業が利用しやすいフォーマットではないうえ、データ加工に高度な専門性や多額のコストが求められるため、産業利用が進んでこなかった。

 そこで経済産業省は、政府衛星データのオープン化による新たな市場の形成を目指して、「平成30年度政府衛星データのオープン化及びデータ利用環境整備事業」の委託先を公募。さくらインターネットが採択された。今後、JAXAから衛星データの提供を受け、産業ユーザー向けに公開する日本初の基盤インフラ「Open&Free Platform」を整備する。

 衛星データと地上空間情報などのデータを組み合わせて、ビッグデータやAI解析などの技術を用いれば、幅広い分野で新たなソリューションを創出することができる。例えば欧米では、衛星データをもとに建物のメンテナンスをしたり、リアルタイムの気象データをもとに、農業保険を組み立てたりといった事例がある。
 
(写真左から)東京大学空間情報技術科学研究センターの柴崎亮介教授、
さくらインターネットの田中邦裕社長、
経済産業省製造産業局宇宙産業室の靏田将範室長、
宇宙航空研究開発機構理事補佐・第一宇宙技術部門宇宙利用統括兼務の館和夫氏

 さくらインターネットは、衛星データを利用しやすいかたちに加工し、低解像度のデータは基本的に無償で、高解像度は有償で提供する。データ保管用の大規模ストレージも提供し、18年度は5PBを用意。ユーザーが、地上データと組み合わせたり、ビッグデータ解析したりする際には、クラウドサービス「さくらのクラウド」やGPUサーバー「高火力コンピューティング」、IoTプラットフォームサービス「Arukas」を活用できる。田中社長は、「(衛星データは)無償で使っていただけるが、多くの場合は、それ以外のデータをマッシュアップするためにコンピュータリソースを大量に使うことになる。これによって、当社のビジネスが成り立つ」と説明する。政府事業としての期間は無料利用枠を設定し、18年度は約2億円分を提供する。

 また、衛星データの利活用促進に向けたアライアンスを今夏に組成する。リーダーには、東京大学 空間情報科学研究センターの柴崎亮介教授が就任。宇宙関連産業を含む事業者や研究機関、団体で活動し、政府衛星データと組み合せる地上データの収集や人材育成などを行う。田中社長は、「当社の顧客は、アライアンスに入ることで、保有するデータをプラットフォーム上でマネタイズできる」と構想を話す。

 Open&Free Platformは、19年2月下旬に正式提供を始める計画。18年度の予算額は12億円あり、当面は政府の予算を使用するが、事業は4年目から完全民営化される予定だ。

 三菱総合研究所の試算では、政府衛星データの公開無償提供による経済効果は30年に3400億円となる見込み。このうち情報通信業は4.9%を占める。田中社長は、「少なくともその1~2割くらいの効果が当社単体であるだろう」と期待している。