この方式では、網終端装置を通らないため混雑の影響を受けないが、IPv6に対応していないホストに直接接続することはできない。しかしVNE各社は、IPv6ネットワークにIPv4パケットを流す「IPv4 over IPv6トンネル」サービスを提供しており、これを利用することで、IPv4にのみ対応する従来のウェブサイトなどにも、網終端装置の混雑に影響されず快適にアクセスできるようになった。
IPv4 over IPv6トンネルへの対応はコンシューマ向けのルータで先行していたが、今年5月には、中小企業向けルータ最大手のヤマハが、「RTX1210」および「RTX830」で、大手VNE・日本ネットワークイネイブラー(JPNE)の提供するトンネリングサービス「v6プラス」への対応を発表した。v6プラスが提供されているISPの利用者は、対応ルータを導入し、v6プラスを有効にするだけで、追加の回線料金を払うことなく通信速度を向上させることができる。
オフィス以外でも、例えば複数の店舗をもつ企業では、防犯カメラのリモート管理、デジタルサイネージのコンテンツ更新、オンラインストレージへのデータバックアップなど、WANのパフォーマンスに依存する業務システムが拡大している。IPv4 over IPv6のトンネリングサービスを活用することで、高価な接続サービスやネットワーク機器を利用しなくても通信環境が快適になれば、中小企業へのクラウド導入のハードルを下げることにもつながりそうだ。