北海道胆振東部地震に端を発する北海道ほぼ全域の大規模停電は、データセンター(DC)や通信設備の運用に多大な脅威を与えた。9月6日未明から9月8日頃まで続いた停電のなか、DCなど大規模施設では非常用発電機を起動させ、小規模な通信設備では非常用バッテリーでサービスを継続。さくらインターネットの主力DCで石狩市にある「石狩データセンター」は、実に59時間にわたって非常用発電機で運用を継続している。大規模停電に対する情報・通信設備の運用の危うさを改めて露呈した格好だ。

 多くの情報・通信設備を持つNTTコミュニケーションズは、9月6日に開催した役員懇談会を急きょ「情報交換会」に変更。被災地域を担当する幹部が一部欠席する状態のなか、同社の庄司哲也社長が災害対応の概要を説明した。庄司社長が、まず指示したのが非常用発電機の燃料輸送だ。胆振東部地震が発生してすぐ、長崎に停泊していた同社の海底ケーブル敷設船「きずな(8500トン)」を使った燃料輸送を計画。きずなは2016年に進水したばかりの最新鋭の海底ケーブル敷設船だ。災害復旧に向けて、物資を輸送するため20フィートコンテナを搭載できる。このスペースに燃料と関連機材を積んで北海道へ向かわせた。

 非常用発電機の燃料備蓄は通常48時間程度。さくらインターネットの石狩データセンターの燃料備蓄も48時間相当だった。発電機の起動に成功しても、すぐに燃料問題に直面するのは東日本大震災で経験済み。地元自治体や国との協定で、通信や放送、病院などに優先してタンクローリー車による給油を行う手はずになっているものの、発電機が稼働中という限られた時間の中で給油を継続するのは容易なことではない。NTTコムのきずなによる燃料輸送は、東日本大震災の経験を生かした。

 大規模な停電が起こると、情報・通信設備の運用はとたんに綱渡り状態になる。当初懸念されていたように電力復旧に1週間かかったとしたら、非常用発電機の耐久性の問題が危惧される事態となる。非常用発電機はあくまでも短期間の稼働を前提としており、恒久的な運転はできないからだ。庄司社長は「新しい非常用発電機は性能がよくなっているのでそれなりに長く動かせる」というが、連続稼働には限界がある。

 今回の教訓は、重要システムは「同時被災しない遠隔地」にバックアップを持っておくことだ。停電でシステムが完全に停止しなくとも、少しでも燃料やバッテリーを節約するため省エネモードに移行させ、通信速度やコンピューターの処理速度を計画的に落とすことも考慮に入れる必要がある。

 もし、首都圏で再び東日本大震災のような大規模な停電や電力不足が起きたら──。古いDCも数多くあり、非常用発電機の給油が途切れたり、耐久時間を超えた時点で使えなくなる。こうした事態を織り込んだ上で、同時被災の可能性が低い北海道や九州・沖縄にバックアップを持ち、いざというときはバックアップ先で本稼働できるようにしておく。万が一、北海道で運用しているシステムが止まっても東京で稼働させる。またその逆も可能にしておくことで、影響を最小限に抑えられる。

 今一度、情報システムの災害復旧や事業継続を点検、見直しすることが求められている。(安藤章司)