「セカンダリストレージ」の市場で頭角を現す米コヒシティが、ソフトバンクとの合弁で日本法人を設立した。データの増大を商機とみたソフトバンクグループは、投資先としてだけでなく実ビジネスでもコヒシティにコミットし、ストレージと通信サービスを統合した形での販売も視野に入れる。一方、コヒシティ製品に関してはネットワールドがすでに国内での販売・サポートを開始しており、商流には混乱が生じる可能性もある。(日高 彰)
コヒシティに資金が集まる理由
米コヒシティは、米ニュータニックスの共同創業者でもあるモヒット・アロンCEOが2013年に設立したストレージベンダー。昨年6月11日、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが主導する投資ラウンドで2億5000万ドルの資金調達を行っていたが、日本市場ではソフトバンクグループの中核事業会社であるソフトバンクが、実ビジネスに直接参画する格好となる。日本法人「Cohesity Japan」に対する米コヒシティとソフトバンクの出資比率は非公開だが、米コヒシティ側が過半を占めるという。
Cohesity Japanの江尾浩昌代表取締役(左)と、
ソフトバンクで法人事業戦略本部長を務める藤長国浩常務
コヒシティは、ストレージ市場の中でも同社が狙うセグメントを「セカンダリストレージ」と呼んでいる。バックアップ、ファイル共有用のNAS、開発/テスト環境などのストレージを指しており、基幹業務システムの「プライマリストレージ」ほど性能や可用性が求められない。一方で、このセグメントでは企業内の複数の部門が異なる製品やクラウドサービスを導入しているせいで、それぞれのストレージがサイロ化していることが多いという課題がある。コヒシティはソフトウェア定義型ストレージ(SDS)の提供によって、社内で断片化しているセカンダリストレージを統合することを目指している。
Cohesity Japanの代表取締役に就任した江尾浩昌氏は、SDSベンダーのスキャリティやスケールアウト型ストレージのアイシロン・システムズなど、先進的なテクノロジーを売り物とする海外のストレージベンダーで日本法人の立ち上げを経験してきた。江尾氏は「セカンダリストレージ上のデータの多くは、だれが管理していて、最後にアクセスしたのがいつかわからない状態。セキュリティーやコンプライアンスなどで重大なリスクとなる」と指摘。この問題を解決し、セカンダリストレージ上のデータを“死蔵”から“活用”へと転換できるのがコヒシティ製品であり、一見すると単なるバックアップアプライアンスのようにも見える製品のベンダーである同社に、多くのベンチャーキャピタルが出資しているのはこのためだと説明する。
ソフトバンクで法人向けビジネスの戦略を統括する藤長国浩常務は、Cohesity Japanに出資した理由を「ビジョン・ファンドが投資した企業の中でも、日本市場にインパクトのある技術をもっている。よりコミットした形で事業を展開したい」と説明。同社は主要なパブリッククラウドに対して、インターネットを経由しない直接接続のサービスを提供しているが、オンプレミスと複数のクラウドにまたがるセカンダリストレージを統合的に運用・管理できるソリューションとして、通信サービスやクラウドと、コヒシティの製品を組み合わせ、自らリセラーとなって国内企業に提案していくという。
間接販売比率は「100%」か
江尾氏は「製品販売については100%、パートナーを通じたアプローチを目指す」と述べ、ディストリビューターとリセラーを通じて日本全国をカバーする幅広い販売網を構築する意向を示す。5月20日までの期間限定で販促キャンペーンも実施し、早期に複数の大手顧客を獲得したい考えだ。
しかし、国内でのコヒシティ製品の商流に関しては、複雑性が増す側面もある。昨年6月1日に米コヒシティと一次代理店契約を結んだネットワールドに加え、日本法人の設立に合わせる形で、今回SB C&Sが国内2社目のディストリビューターとなった。今後はネットワールドおよびSB C&Sのパートナー各社がリセラーとなって製品を販売する形となるが、ソフトバンクが直接出資するCohesity JapanからSB C&Sが製品を調達し、それをSB C&Sの親会社であるソフトバンクも販売するという構造になっている。
理論的には、同じグループ内であるSB C&S、そしてソフトバンクを通じた商流のほうが、ネットワールドとそのパートナーを経由するルートよりも、有利な価格を提示可能ということになり、「100%パートナー経由」という表現には、若干の語弊がありそうだ。一方のネットワールドは、エンタープライズストレージの取り扱いで多くの実績があり、技術サポート力にも定評がある。コヒシティのような新しいカテゴリーの製品においては、リセラー向けの支援体制を武器にしていくと考えられる。