日本IBMは6月5日、記者会見を開き、今年5月に新たに就任した山口明夫社長が経営方針を説明した。橋本孝之氏以来、7年ぶりに生え抜きの日本人として同社のトップに就いた山口社長は、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代に顧客のニーズに応えていくには、1社だけでできることは非常に限られている。あらゆる枠を越えて、(顧客やパートナーを含む)ステークホルダーと連携を強化していく」と話し、オープンなエコシステムで成長を図る方針を強調した。

 米IBMは今年2月にサンフランシスコで開いた年次イベント「Think 2019」で、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドを基本に企業のデジタル変革ニーズに応えていくことを明らかにし、オープンなエコシステムを志向する戦略に大きく舵を切ることをうかがわせた。山口社長は、「クラウドの時代はプラットフォーマーのサービスから必要なものを利用する時代だ」として、IaaS/PaaSの「IBM Cloud」やAIの「IBM Watson」といった自社商材の成長に注力はするものの、他社のAIやクラウドサービスを適材適所で提案する体制や環境づくりを日本市場でも進めていく意向を示した。
 
山口明夫
社長

 さらに、「近年、IBMはカルチャーを変える取り組みに果敢に取り組んできて、自社の業績だけでなく、ステークホルダーへの貢献が評価される土壌をつくってきた。お客様や社会の役に立つことにプライオリティーを置いている社員はたくさんいて、そうした社員のモチベーションを上げることにつながっている」とも話し、社内の変革も進みつつあることを示唆した。

 米IBMは基幹系を含め情報システムの8割はまだクラウド化やクラウドとの統合管理・運用ができていないと指摘しているが、山口社長はこれにも言及。「“残り8割”の変革を主導し、企業の情報システム全体でデータ活用、AI活用ができるコグニティブ・エンタープライズを実現していく。その先に、DXが企業連携や社会インフラまで広がる明るく豊かな社会があると考えており、今はそのベースをつくる大事な時期だ」とした。また、そうしたニーズに応えるために、コンサルやSI、アウトソーシングといったサービス事業について、縦割りを排して一体的に動ける体制整備も進める考えだ。

 昨年10月に米IBMが340億ドルで買収することを発表したレッドハットについては、ハイブリッドクラウド、マルチクラウド戦略で大きな役割を果たすとみられる。しかし、買収がまだ完了していないため「現段階でコメントできることはない」とした上で、「現在、最終の手続き中であり、買収が完了した段階で日本での具体的な事業展開について説明したい」と話すにとどめた。(本多和幸)