米アクセンチュアと米マイクロソフトの合弁会社の米アバナードは、アジア太平洋地域でのデジタルイノベーションスタジオの整備に力を入れている。昨年、オーストラリアでM&Aによりデジタル関連人材を倍増させたのに続き、国内でも今年5月にデジタルスタジオを刷新した。デジタルスタジオでは、主にマイクロソフトのAIやIoTといった最新のデジタルテクノロジーを駆使したビジネスを伸ばしていく。

 デジタルスタジオでは、ユーザー経営者や事業部門の担当者と協力して、テクノロジーを活用した新規事業の研究や企画などを行う。米アバナードではデジタルビジネスをリードするという意味の「デザインレッドシンキング」と呼ばれる手法を確立しており、デジタルスタジオでは、この手法に沿って「ユーザーを新しいデジタルビジネスに導いていく」(米アバナードのアナ・デ・シルベリオ成長市場担当社長)取り組みに力を入れている。
 
アナ・デ・シルベリオ
成長市場担当社長

 シルベリオ成長市場担当社長は、イタリア市場の責任者を担っていた2010年頃に、ミラノにデザインスタジオを開設。欧州市場で率先して「デザインレッドシンキング」手法を使ったデジタルビジネスの創出支援を手掛けてきた。今は、アジア太平洋地域を中心とした成長市場担当として、日本やオーストラリア、中国、マレーシア、シンガポール、ブラジルなどのデジタルビジネスを積極的に推進している。

 直近の事例では、マイクロソフトの音声認識エンジンを使い、経営者がコンピューターと会話しながら経営データを分かりやすく表示する経営ダッシュボードをオーストラリアのユーザーと協力して開発した。従来のキーボードを叩いてグラフを呼び出すのではなく、「言葉で必要なデータを分かりやすく表示させる新しいユーザーインターフェースによる“体験”を重視してデザインした」(シルベリオ成長市場担当社長)。

 DXの「X」はトランスフォーメーションだが、同時に「“体験”を意味するエクスペリエンスの“X”でもある」(同)として、ユーザー企業がこれまでになかった顧客体験を提供できるようにDXを後押ししていく。国内ではITインフラ層の刷新需要が高まっているが、その次のフェーズとして、「斬新な顧客体験を重視するデジタルイノベーションのニーズがより高まってくる」と見る。「デザインレッドシンキング」の考え方は、そうしたニーズを汲み取って、システムに落とし込んでいくのに役立つとしている。

 デジタルスタジオは、NTTデータをはじめ国内の大手SIerもこぞって開設している。職場という“日常”から離れ、ベンダー側と顧客側の混成チームで課題解決にあたることで、イノベーションを誘発する仕組みと言えそうだ。(安藤章司)