【米オースティン発】米デルテクノロジーズが、コンバージドインフラの新製品「PowerOne」を発表した。近年話題に上ることの多いHCI(ハイパーコンバージドインフラ)ではなく、専用のストレージ装置を用いる従来型構成だが、新たに自律運用機能を搭載し、ITインフラの運用にかかる手間とコストを削減する。また、従量課金制での製品提供も適用範囲を拡大。オンプレミスのIT資産をクラウド感覚で利用できるようにする戦略を加速する。(日高 彰)
ハードウェア群とVMwareを自律的に一元管理
PowerOneは、サーバーの「PowerEdge」、ストレージの「PowerMax」、ネットワークスイッチの「PowerSwitch」、そして仮想化基盤の「VMware」を、検証・構成済みの形態で販売するコンバージドインフラ製品。米国時間11月12日、同社が米オースティンで開催した関係者向けイベント「Dell Technologies Summit」で発表した。今月22日より全世界で販売を開始する。
汎用サーバーにソフトウェア定義型ストレージ(SDS)を組みこむことで、サーバーとストレージを同一のハードウェアに統合したHCI製品の市場が拡大しているが、今回のPowerOneはHCIとは異なり、サーバーと別体の専用ストレージ機器を用い、それらの間をSANで接続する「3Tier(スリーティア、3層型)」のインフラ製品。ハードウェアに関してはむしろ伝統的な構成となっている。
PowerOneで新しいのは、これらのハードウェア群とVMwareを自律的に一元管理するコントローラーを搭載した点だ。これによって、アプリケーションの実行に必要となる仮想マシン数やストレージ要件を管理画面から指定するだけで、PowerOneにプールされているリソースから必要な分を自動的に切り出すことが可能となる。
例えば、開発環境で構築されたアプリケーションを本番環境に展開する際、従来はCPU・ストレージの確保や、IPアドレスの払い出しといった作業をIT管理者が手動で行っていたが、PowerOneではコントローラーが自動的に割り当てを行うため、管理者による操作のほとんどが不要となり、俊敏にアプリケーションを立ち上げることができるという。パッチの適用といったメンテナンス業務も自動化できるので、オンプレミスのITインフラでコスト要因となっていた運用・保守の手間を削減できるほか、サーバーやストレージの追加もダウンタイムを最小限に抑えながら行うことができる。
PowerOneが顧客として想定しているのは、大規模な基幹業務アプリケーションなど、現在でも専用ストレージを必要とするシステムを保有する企業だ。このようなアプリケーションをパブリッククラウドやHCIへ移行させるのは難しいが、PowerOneを用いることで、ハードウェアは従来と同じオンプレミスでの3Tier構成を引き継ぎながら、企業にとって課題だった運用・保守のコストを最小化できる。また、HCIとは違ってサーバーとストレージが別体となっているため、CPUとストレージのリソースを個別に拡張していくことも可能だ。
「Dell Technologies Summit」で発表されたコンバージドインフラの新製品「PowerOne」。
クラウド感覚の運用・保守が可能だという
「オンプレのクラウド」が
今後最も大きくなる
マイケル・デル会長兼CEOは、ビジネスの成功や社会問題の解決のためには、あらゆるデータを統合して活用することが不可欠になると訴える一方、データセンター、クラウド、そしてエッジ領域のそれぞれで異なるIT基盤が乱立しており「世界はデジタル化されつつあるが、その舞台裏はそれほど美しくなく、断片化が進んでいる」と指摘する。
マイケル・デルCEO
また、「企業は、クラウドとは場所を指すのではなく、運用モデルを指すということを理解しつつある。クラウドはどこにでも存在することが可能で、その中でも一番大きいのは『オンプレミスのクラウド』になると思う」と述べ、今後はクラウドの利便性をオンプレミスにも持ち込むことで、分散化が進むシステムに一貫性のある運用モデルを提供できると説明。それを実現できるのは、物理的なITインフラと、世界で最も多くの企業が使用する仮想化基盤であるVMwareを保有する、デルテクノロジーズだけであると主張する。
Dell Technologies Summitでは、ヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE)やレノボが既に提供している従量課金型の製品提供を、「Dell Technologies on Demand」の名称で開始することも発表した。Dell EMC製品でも、ストレージやPCでは、容量や台数に応じた月額課金形態での提供を行っていたが、これをサーバーやPowerOneなどにも拡張する。サーバーを含むITインフラ全体で、「使った分だけ払う」モデルを適用可能とすることで、初期の投資負担を低減し、運用・管理のみならず支払いに関してもクラウドライクな使い勝手を実現する。なお、Dell Technologies on Demandの具体的な提供方法については各地域ごとに個別に案内するとしており、日本国内でこの提供形態を実施するかも含め、現時点では未定だという。