感染が拡大する新型コロナウイルスについて、海外でブロックチェーンなどの先進技術を使って蔓延対策をする動きが出ている。とくに国を挙げてブロックチェーンの推進を目指す中国では、大手IT企業を中心に、すでに実運用が始まっている。
日本テラデータ 中山思遠 シニアコンサルタント
「データの活用という点で、中国はかなり進んでいる」。国内のIT企業などでつくる一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)が3月6日にオンラインで開催したセミナーで講演した日本テラデータの中山思遠インダストリーコンサルティング金融サービスシニアコンサルタントは、中国の状況についてこう表現した。
感染の中心地となった中国では、対策へのIT活用に積極的だ。阿里巴巴集団(アリババグループ)は、大学の学生や教職員の健康状況、外出データなどを一元化するシステムに、ブロックチェーン技術を活用。グループ内で金融サービスを手掛ける「アント・フィナンシャル」は、解析技術を使って医療物資生産企業の現状を把握し、政府の医療物資調達などを支援するプラットフォームを構築した。また、通販大手「京東(JD.COM、ジンドン)」は、金融機関向けの音声認識システムを使い、電話などで問診ができるシステムを提供、190以上の地方政府が採用しているという。
ブロックチェーンなどの先進技術を使い、中国で続々と新しい仕組みが生まれているのはなぜか。官民で技術開発に取り組んでいることが理由の一つにあり、中山シニアコンサルタントは「中国は、政府や国営の通信事業者が、いろいろなデータベースを公開しているため、IT企業が同じようなことに取り組める」と解説した。
新型コロナウイルス対策で、ブロックチェーンを活用しているのは、中国大陸だけではない。台湾では、マスクの配布と数量のトレースにブロックチェーンが適用され、コスト削減につながったという。また米国では、米疾病予防管理センター(CDC)が、公衆衛生ネットワークの各組織で持っているデータの利用履歴の管理や更新プロセスの簡略化にブロックチェーンを適用し、自動化を狙う動きがある。
CAICAでブロックチェーンコンサルタント・プロジェクトマネージャーを務めるBCCCの奥達男エバンジェリストは「新型コロナウイルス対策にブロックチェーンを適用する事例を見ると、不特定多数の人が参加する仕組みでも、しっかりとデータを管理し、不正を抑制しながら処理を透明化することを目的にしているようだ」と分析した。
BCCC 奥 達男 エバンジェリスト
中国については「国の方針としてブロックチェーンを推進している。インターネットの黎明期にも同じような動きがあった。そういう意味では、日本とはかなりブロックチェーンに対する捉え方が違う」と持論を展開した。