サントリーグループはデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのメインのITインフラとしてAWSを採用した。10月27日、アマゾンウェブサービスジャパン(AWSJ)が発表した。AWSJの岡嵜禎・技術統括本部長執行役員は「トランスフォーメーションを推進している企業には、共通してシニアリーダーシップの強い決意と協力体制、トップダウンでのアグレッシブなゴール設定、人材育成への投資、最後までやりきる文化・風土がそろっている。サントリーはその典型だ」とコメント。老舗グローバル企業のDXにおけるAWS活用の先進事例としてアピールした。

 サントリーは2014年に米国最大手の蒸留酒メーカーを買収するなど、グローバルでビジネス基盤を拡大しているが、そうした動きに伴う課題も顕在化していた。サントリーホールディングス経営企画・財経本部の城後匠・BPR・IT推進部部長は「五つのリージョンでITインフラはそれぞれ独立していて、業務システムもグループ会社各社が個別に構築・運用していた。DXに向けたグループ全体での迅速な意思決定のハードルになっていたこともあり、各リージョンのCIOと協議の上でグローバルのITインフラをクラウドで統合するという決断をした」と振り返る。

 パブリッククラウドは、コストや将来的なサービスの発展性、さらには日本本社が先行して採用していた実績を考慮してAWSの活用を決定。ユーザー基盤が強固で情報が多く、何か問題が起こっても自分たちで解決できる余地が大きいことも採用を後押ししたという。

 具体的なITインフラ統合の方針としては、世界に300社以上あるグループ各社のシステムは基本的にAWSに移行。どうしても移行できないものに限定してプライベートクラウドに移すが、「グローバルオペレーションセンタ」を構築し、グローバルのITインフラ統括チームとともに統合的な運用を行う。

 このプロジェクトは18年4月にスタートし、グローバル全体の実行計画や全体設計、標準ルールづくりを進めてきた。19年4月には、先陣を切って日本でAWSへの移行を開始。受発注、売上予測、コンシューマー向けサイト、顧客データ管理システムなどで使っていた1000台以上のサーバーを含む全てのITインフラをAWSに移行し、シンガポールと日本で利用していたデータセンターを解約した。これにより、運用コストを含むインフラのコストを25%削減したという。

 今後は日本のAWS移行ノウハウをグローバルに水平展開し、22年中の移行完了を目指す。また、既存システムのクラウド移行だけでなく、各社が自律的にAWS上でクラウドネイティブな新規システムを開発しDXに取り組む環境を整え、グループ全体のガバナンスを効かせた上で各地域・市場のニーズに応じた施策を打っていく方針だ。(本多和幸)