ピー・シー・エー(PCA)は10月、ストレスチェックソリューションなどを手掛けるドリームホップの株式を100%取得し、同社を連結子会社化した。重要視するHR領域の強化を目的に、これまでの協業関係を発展させた形だ。今後はドリームホップ製品を自社グループのソリューションとして提供し、顧客基盤の拡大を進める。働き方が多様化する中、HR領域の重要性はこれからも増すとみており、他社との連携を含めて製品ラインアップの拡充を続ける方針だ。(齋藤秀平)
“1丁目1番地”の重要課題を
現場主導型のM&Aで解決に導く
握手を交わすPCAの玉井史郎・取締役営業本部長(右)とドリームホップの椋野俊之社長
ドリームホップは、従業員50人以上の企業を対象に2015年から義務化されたストレスチェック業務の運用代行ソリューション「ALART」を提供。官公庁や民間企業など累計1万事業所、100万人を超えるユーザーが利用している。
PCAは、14年からドリームホップと協業関係を構築。17年には、給与計算システム「PCA給与DXクラウド」とALARTの連携ソリューション「PCAストレスチェックALART」の提供を開始した。
PCAはこれまで、HR領域については、ドリームホップを含む協業メーカーの製品と自社の人事管理・給与計算ソフトを連携させる形でカバーしてきた。しかし、ここ数年で働き方改革が浸透し、情勢が変化。PCAの玉井史郎・取締役営業本部長は「新しいスタイルの働き方が望まれる中、HR領域は1丁目1番地といえる重要な課題となり、人に携わる部分のソリューションを強化していくことは必須になってきた」と語る。
PCAは、HR領域を強化する手段として、約1年前からドリームホップに対するM&Aを具体的に検討してきた。一般的に、M&Aはコンサルティング会社や金融機関からの提案で進むことも多いが、今回は現場主導で実現したという。
担当したPCA戦略企画部プロダクトマーケティングセンターの石井憲明氏は「ストレスチェックの義務化に加え、最近はパワハラ防止の義務化や残業規制の問題があり、メンタルヘルスや健康経営の分野は、中長期的にITソリューションの市場が拡大していくだろう。スピード感や開発リソースの問題を考えても、PCAがHR領域のソリューションを強化するには、ドリームホップとの協業をさらに一歩進めたものにしていく必要があると考えていた」と振り返る。
トータル提案で差別化する
価格競争の面でもアドバンテージ
一方で、市場のポテンシャルへの期待感を高めているのはPCAだけではない。多くのストレスチェックソリューションが市場に登場しているが、他社ソリューションと明確な差別化ができるかが拡販の重要なポイントになる。
ドリームホップの椋野俊之社長は「法律で定められた義務化の部分への対応ツールという側面だけを見ると、機能としての大きな差別化要素はなく、あとは価格の違いだけになる。しかし、メンタルヘルスケア全体で考えると、製品とコンサルティングの両面でトータルに提案できることが他社との大きな差別化要素だ」と強調する。
玉井取締役は「ドリームホップが加わったことで、PCAの人事給与、子会社であるクロノスの勤怠管理も含め、HR領域のソリューションをワンストップで提供できるようになるのが最大の強み。価格競争の面でも優位に立てるため、われわれとしては非常に大きなアドバンテージになると考えている」と語る。
さらに「PCAグループ全体のデータを次のビジネスに生かしていくことを将来像として描いている」と説明。ドリームホップが保有するデータの価値、さらにはその活用ノウハウを高く評価しているという。基幹業務アプリケーションの提供だけにとどまらず、企業の経営を支援する「マネジメントサポート・カンパニー」を目指す全社目標の実現に向け、今回のM&Aは「基盤の一つになる」との考えも示す。
ドリームホップは、官公庁市場で豊富な導入実績があり、売上高に占める割合は半分以上を占める。玉井取締役は「われわれは官公庁市場でのノウハウがないため、副次的な効果が出るのではないか」と述べ、顧客基盤の拡大にも期待する。
HR領域のポートフォリオ整備の方向性については、「自ら開発し、自分たちで課題を解決できる部分もあるだろうが、それではスピードが追い付かない場合がある」とし、自社開発とM&A、連携するパートナーの拡充を並行して進めていく方針。
また、「開発の戦力強化だけでなく、ソリューション提案の現場でもスペシャリストを作っていかないといけない」とし、ソリューションの価値をしっかりと市場に訴求できる体制の構築についても検討するとしている。