セールスフォース・ドットコム(SFDC)は11月24日、米国本社が買収したタブロー・ソフトウェアが提供するアナリティクス製品の統合に関する記者説明会を開催した。Salesforce Einstein AnalyticsとTableauを統合し、名称を「Tableau CRM」に変更することについて説明。重要性が増しているデータ活用を推進し、その先にあるデータの変革を支える製品として提供していく考えだ。(齋藤秀平)
優位性につながるデータ活用ビジネスの転換は待ったなし
SFDC 林 淳二 シニアディレクター
今回の製品統合の背景には、企業のデータが爆発的に増加し、データ活用の重要性が増していることがある。SFDCの林淳二・マーケティング本部プロダクトマーケティングシニアディレクターは「昨今のカスタマーサクセス(への道のり)において、データ活用はデファクトスタンダードになっているが、データ量の増加はとどまるところを知らない」と述べた。
米調査会社IDCが2018年にまとめたレポートによると、同年に33ゼタバイトだったデータ量は、20年に約1.5倍の50ゼタバイトに増加。25年には、さらに3.5倍の175ゼタバイトに到達する見通しとなっている。
林シニアディレクターは「膨れ上がるデータの有効活用は、企業の成長や優位性を築くための必須事項になっている」とし、データを十分に活用し、データ・インサイト主導型のビジネスを展開している企業には、新規顧客の獲得や顧客維持、収益性などの観点で優位性があると説いた。
ただ、米大手コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニーの18年の調査結果を引用し、10億ドル以上の売上高がある企業1000社のうち、92%が大規模な分析に失敗していると解説。「実現性が高まってきたデジタルトランスフォーメーション(DX)は、データの変革も意味する。データ・インサイト主導型ビジネスへの移行は待ったなしの状況になりつつある」と呼びかけ、今後、世界トップクラスの分析プラットフォームとなるTableau CRMで、企業の支援を強化する方針を示した。
Salesforceネイティブな分析で
成功への道を切り開く
Tableau CRMは、タブローが提供する製品ラインアップに新たに加わり、一つの独立した製品として提供される。特徴について、SFDCの岩永宙・マーケティング本部プロダクトマーケティングマネージャーは「セールスフォースのCRMとネイティブに統合されており、世界有数のクラウドプラットフォーム上で、数億行分の分析を簡単に行うことができる」と説明した。
具体的には「セールスフォースのCRMの画面内から分析を参照し、そのまま実行につなげることができる。AI機能が組み込まれており、リアルタイムを越えた未来の分析が行える。セールスフォースのCRMのセキュリティ機能をそのまま使えるので、役割などに基づいた情報参照権限を設定して利用することもできる」と語った。
さらに「セールスフォースのCRMとネイティブに統合されているため、その上で動いているさまざまな業種・業界向けソリューションとも連携可能で、専用の予測・分析テンプレートも豊富にそろえている」とアピールし、「すでに多くの顧客が、Tableau CRMを使い、データ活用について成功への道を切り開いている」と呼びかけた。
一方、タブローの佐藤豊カントリーマネージャーは「タブローがもともと持ってきた良さとセールスフォースが培ってきたすばらしさを一つにして、データ&分析プラットフォームの追求をさらに深める。あらゆる顧客のデータ分析環境の中心となってデータの変革を支援していくつもりだ」と強調した。
タブロー 佐藤 豊 カントリーマネージャー
今後の方向性については、四半期ごとにアーキテクチャーに対してイノベーションを進めるとし、「より広く、より深いプラットフォームを提供し、両社の顧客にシームレスな体験を届けていく」と説明。「DXとデータトランスフォーメーションを一緒に実現するために、セールスフォースの各クラウド製品との連携を強化していく」と話した。
日本での営業体制については「さまざまなビジネス課題に対応できるように、昨年から業界別のチームを編成しているため、各業界におけるデジタルやデータの課題を、セールスフォースとシームレスにサポートできるようになっている」とし、「ありとあらゆる領域で今後、データの変革が起きるので、それにかかわるすべての業種に対しての体制を整えていく」と紹介した。