米IBMが、量子コンピューターの実用化を見据え、量子人材の育成に注力している。まだ「黎明期」とされるこの領域では、人材不足が課題となっており、次世代を担う若年層を中心に教育などを進める方針だ。

小林有里氏

 日本IBMの森本典繁・執行役員最高技術責任者兼研究開発担当は、昨年12月17日の説明会で、量子コンピューターの実用化に向けて、ハードウェアやソフトウェアの研究が全世界で進められていると説明し「非常に重要になってくるのがわれわれの次の世代。いわゆる量子ネイティブといわれる世代の人材育成だ」と述べた。

 量子コンピューターは性能向上を続けており、IBMが進める産官学連携も広がっている。IBM東京基礎研究所量子コンピューティングQiskit開発者コミュニティー担当の小林有里氏は「量子コンピューティングの可能性が広く注目され始めている」と話した。

 しかし、人材については「まだ不足している」と説明。現在は、物理学や工学の教育を受けてきた人たちが量子コンピューターに研究の軸足を向けるなどしており、量子ネイティブの人材育成は始まったばかりだという。

 IBMは、若年層の人材育成に向け、量子コンピューター向けのSDK(ソフトウェア開発キット)「Qiskit」のコミュニティーを通じて年間1万人以上の学生にアプローチ。動画で教材を配信したり、世界規模の講座などを開催したりしている。今後は、世界で唯一無償公開しているIBMの量子コンピューターのほか、Qiskit、教育プログラムの三つを軸に、引き続き量子人材の育成に努める考えだ。

 説明会ではこのほか、IBMが昨年11月に開催した量子コンピューターの競技型オンライン・プログラミング・コンテスト「IBM Quantum Challenge」で、東京大学工学部物理工学科4年の長吉博成氏が、2000人の参加者の中から最優秀者に選ばれたことが報告された。(齋藤秀平)