NTTデータの本間洋社長は、長引くコロナ禍の市場環境を「『追い風』と『逆風』が同時に吹いている」状況だと表現する。「追い風」は、社会全体のデジタル化が加速したことによって新しい案件が世界規模で生まれている点。「逆風」は旅行業をはじめ打撃を受けた業種が多くある点を挙げる。売上高伸び率では厳しい状況が続くなか、業務の自動化、効率化を推進し、競争力のある商材づくりに投資することでレジリエンス(踏みとどまる力)を発揮。難局を乗り切っていく考えだ。
コロナ禍きっかけの案件増える
――長引くコロナ禍で情報サービスビジネスは、どのような変化があったか。
旅行業や飲食業など打撃を受けた業種が多くあり、当社業績にもマイナスの影響が出ている。一方、コロナ禍をきっかけとした案件が生まれたのも事実で、例えば北米では110万人規模の生徒や教師にオンライン教育の仕組みを提供。欧州では、医療機関向けにオンライン診療や、新型コロナの感染者/濃厚接触者の継続的なモニタリング、データ収集と分析に関するシステムを納入した。感染拡大の防止に役立つ機能を拡充したことで医療機関から高い評価をいただけた。国内でも、コロナ禍の特別給付金の業務に追われる自治体の業務自動化でRPA「WinActor」を役立ててもらった。
NTTデータ 本間 洋 社長
――2021年4月から3カ年中期経営計画の最終年度が始まる。連結売上高2兆5000億円、営業利益率8%を目標としている。
売上高伸び率では相当厳しいと認識している。中計2年目の今年度上期(20年4-9月)は前年同期比トントンで着地できたが、通期では楽観していない。私は復元力や弾力性を意味する「レジリエンス」をキーワードとして、コロナ禍の逆風にあっても「踏みとどまる力」を発揮するように世界53カ国・地域、約13万3000人の従業員に指示している。
――具体的には、どのような取り組みか。
まず、付加価値があまりないと言われるITアウトソーシングやBPO系のビジネスでも、自動化や効率化を意欲的に進めることで、より多くの利益を確保できる体制にすること。当社の場合、国内はシステム構築の比率が高く、海外はITアウトソーシングの比率が高い傾向にある。国内は不採算案件を抑制することが利益確保のポイントになるのに対して、海外はアウトソーシング業務の自動化、効率化で粗利が大きく変わってくる。次に「超上流」の領域のデザインスタジオの暗黙知を形式知に変えて、全社規模でビジネスに生かすこと。先進的なデジタル技術を駆使して新しい顧客体験を創り出すことで、従来のSIにはなかった価値が生まれる。システムや空間、マーケティングなどを統合したデザイン力で先行するイタリアやスペインの当社デザインスタジオの知見を日本を含む他の地域でも共有することで、全体的なレベルアップにつなげる。
デザイン力とオファリングで勝負
――顧客企業にとっての新しいビジネスを創り出すビジネスに、より比重を移すという意味か。
この中計で重視しているのは、金融や健康、小売り、自動車、情報通信といった重点分野で新しいビジネス創出につながるような商材(オファリング)をつくることだ。とりわけ多くの有力ITベンダーが熾烈な競争を繰り広げる北米市場では、重点分野で競争力のある20件ほどのオファリングの創出に力を入れている。ほかにも欧州発のオファリングを北米などの世界主要市場に横展開したり、日本からも世界市場に売り込めるオファリングを積極的に発信していく。
――国内でも「デジタル庁」構想を中心に中央省庁の業務や行政サービスのデジタル化を推し進める動きが活発化している。
この下期からデジタル社会の需要に応える「ソーシャルデザイン推進室」の活動をスタートさせた。行政のデジタル化は、欧州ではどう進んでいるのか、アジアなら「台湾がすごい」と言われる理由は何なのかを研究開発部門などと連携して解き明かしていく。デジタル庁の活動は中央省庁だけにとどまらず、地方自治体や金融、産業のそれぞれのセクターとの官民のサプライチェーンにも影響が及ぶ。システムのみならず、先のデザインスタジオの知見も取り入れ、社会全体を俯瞰したサービスの全体像を提案していくことで競争力を高める。
――リモートワークに象徴されるように業務の完全デジタル化が、コロナ禍によって加速した。
今般のコロナ禍は、追い風と逆風が同時に吹いている。ビジネスでは厳しい局面があるが、社会全体のデジタル変革をもとに戻してはならない。国が掲げるサイバーとフィジカルを高度に融合させ、経済発展と社会的課題の解決を両立させる「Society 5.0」は、まさにデジタル変革そのものでもある。当社はグローバルで培った知見や技術をもって、デジタル変革を推進し、顧客とともに逆風をはねのけていく。
PROFILE
NTTデータ 本間 洋 社長
1956年、山形県酒田市生まれ。80年、東北大学経済学部卒業。同年、日本電信電話公社入社。2001年、NTTデータ情報ネットワークビジネス事業本部カードビジネス事業部長。07年、広報部長。09年、執行役員広報部長秘書室長兼務。10年、執行役員流通・サービス事業本部長。13年、常務執行役員第三法人事業本部長。14年、取締役常務執行役員エンタープライズITサービスカンパニー長。16年、代表取締役副社長執行役員法人・ソリューション分野担当。18年6月19日、代表取締役社長就任。