ピー・シー・エー(PCA)の業務系クラウドサービス「PCA 会計 DXクラウド」とOSKの統合型グループウェア「eValue V」が、2020年12月からAPI連携できるようになった。両社は競合ベンダーによる新しい協力の形を示し、相乗効果でビジネスの拡大を期待している。自前主義が主流となっている業務ソフトの領域で、今回の取り組みは、ベンダーの垣根を越えた連携が広がる一つのきっかけになる可能性がある。(齋藤秀平)
PCA 宇野照夫 課長
PCAは、数年前からPCAクラウドのWeb-API戦略を推進し、他社の製品やサービスとの連携を進めてきた。OSKと比べると、早い段階からクラウド事業に注力しており、一日の長があるといえる。
PCAがクラウドの市場でパートナーエコシステムを拡大する中、19年秋ごろにOSKとの連携の話が具体化。約1年間かけて準備を進め、20年12月に今回のAPI連携機能の提供を始めた。
PCA営業本部戦略企画部プロダクトマーケティングセンターの宇野照夫・課長は「自前で製品を揃えることが多い業務ソフトの業界で、競合他社と連携することは珍しい」と前置きし、「ユーザーのニーズは多様化しており、ベンダー1社だけでユーザーの業務範囲をカバーしきれなくなっている。裏でデータを集め、会計ソフトに集約してスピーディーに処理する仕組みが求められているため、他社の製品と連携していかないと競争力は生まれない」と話す。
今回の連携は、経費精算の仕訳を自動連携することが柱。具体的には、PCA 会計 DX クラウドの勘定科目・補助科目・部門情報をeValue Vに、eValue V ワークフローの承認済み経費精算申請書から作成した仕訳データをPCA 会計 DX クラウドにそれぞれ取り込むことが可能になった。
宇野課長は「経費精算は自社ブランドを持っていないので、われわれの製品とバッティングする部分は少ない」とし、「ユーザーにとっては選択肢が広がり、われわれベンダーにとってはクロス提案が可能になる。両社の製品を取り扱っている販売パートナーは、提案の幅を広げることができる」と連携の意義を説明する。
OSKも「基幹系製品としては互いに競合することもあるが、各々自社で持っていない製品を連携することにより、お客様にとってはより快適に、販売店様にとっては製品の境界線を越えて販路を広げることができる」とし、「お互いの陣地を守ることから一歩踏み出して、相互乗り入れでお客様にとってのDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一翼を担っていきたいと考えている」と意気込んでいる。
PCAは、API連携する際、Web-APIを公開し、連携プログラムは連携先に開発してもらっている。しかし、同社の営業本部戦略企画部プロダクトマーケティングセンターの佐久間崇史・課長代理は「互いに連携できる仕組みはあるが、どちらが連携プログラムを開発するかで“お見合い状態”になることが課題としてあった」と語る。
そのため、今回はシステム間をAPIで接続する基盤サービスに、両社と関係性が深いJBアドバンスト・テクノロジーの「Qanat Universe(カナート ユニバース)」を採用し、開発の費用や期間を短縮した。佐久間課長代理は「連携のクッション役として、こうしたツールの効果は大きい。今後、いろいろな業種業態のサービスとの連携を進めていく際、今回のような枠組みは増えていく可能性がある」とみている。
宇野課長は「API連携機能の提供をしてから約1カ月なので、販売パートナーやユーザーの反応を見ながら、どうすれば共創を実現できるかしっかりと見極めていく」としつつ、「市場から求められるものは敏感にジャッジする必要性が出てくる。競合だからということで連携の土俵に上がらなかったベンダーも、連携することでメリットが生まれるかもしれない。共同でやっていける部分は一緒に推進していくべきだ」と主張する。