2021年のハードウェアビジネスは、テレワークと中堅・中小がキーワードになりそうだ。日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA、林宗治会長)の新春セミナーで、主要メーカー9社が21年の経営方針と営業戦略を発表。各メーカーは、注力する製品やサービスなどを示しつつ、パートナーとコロナ禍を乗り越え、ニューノーマル時代のビジネスを切り開いていくとのメッセージを打ち出した。(齋藤秀平)
PCはテレワーク用途を意識
ソリューション提案に注力の声も
JCSSAは例年、リアル会場で新春セミナーを実施しているが、今回は新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、オンラインに変更。日本マイクロソフトと日本ヒューレット・パッカード(HPE)、日本HP、Dynabook、富士通、日立製作所、VAIO、レノボ・ジャパン、NECの各プレゼン動画を1月25日から配信する形式とした。
ほとんどのメーカーが触れたのは、新型コロナウイルスの感染拡大による影響だ。富士通の櫛田龍治・執行役員専務システムプラットフォームビジネス部門長は「20年は新型コロナウイルスに翻弄された1年だった」と総括し、日本ヒューレット・パッカードの西村淳・取締役常務執行役員パートナー営業統括本部長は「われわれの生活や仕事のやり方を一変させた」と語った。
ハードウェアビジネスの市場では、「Windows 7」と「Windows Server 2008 R2」の延長サポート終了に伴う特需の反動減が懸念されていた。しかし、政府の緊急事態宣言などを受けて多くの企業がテレワークを導入し、特にPCの需要が上昇。メーカーのビジネスは伸長し、VAIOの山本知弘社長は「20年5月期は過去最高益を計上した」とした。
コロナ禍でPCの役割が変わったとの見方もある。日本HPの九嶋俊一・専務執行役員パーソナルシステムズ事業統括は「どこにいても、何をするにしても、必要不可欠なツールとしてのポジションが確立された」と分析した。
コロナ禍の終息が見通せない中、各メーカーは21年もテレワーク需要は継続するとみている。新製品では、テレワークでの用途を意識し、持ち運びやすさやセキュリティ性能などの強化点をアピールした。
レノボ・ジャパンの安田稔・執行役員副社長は「21年は、変化を当たり前として定着させ、未来に向かって再起動させるための重要な1年になる」とし、Dynabookの覚道清文社長兼CEOは「来たるべきポストコロナ時代に向けて、最適なPCやソリューションをいかに価値ある形で提案できるかが問われる1年になる」と気を引き締めた。
専任のIT管理者がいなくても
自動化で不安を解消する
テレワークの導入は、大企業が中心となっている。PCビジネスを拡大していくため、今後、中堅・中小企業向けの施策にも力を入れる姿勢を示したのがDynabookと日本HPだ。
Dynabookは、専任のIT管理者がいない中堅・中小企業向けに、Windows Autopilotを使ってテレワークの環境設定を自動化し、テレワーク導入の不安を解消するサービス「かんたんテレワーク スターターパック」を紹介。日本HPの九嶋専務は「中堅・中小企業が導入・運用しやすい提供形態を推進する」とした。
一方、HPEも中堅・中小企業向けの取り組みを加速させると説明。西村常務は、従量課金サービス「HPE GreenLake」について「今までは大企業の大規模システム向けに提供することが多かった」とした上で、シンプルな構成で低価格を実現し、中堅・中小企業をターゲットにした新しい従量課金サービス「Swift Program」を示し、「パブリッククラウドと比べて検討する時や、ハイブリッド環境でクラウドを使う時に非常に有効なソリューションになる」と語った。
このほか、データの活用に言及するメーカーもあった。日本マイクロソフトは「データを押さえれば、新しいビジネスをつくり、イノベーションを起こせる」と強調。日立製作所は、社会インフラの保守へのIoT活用について説明し、NECは、エッジのデータ活用を加速させる方針を示した。
林 宗治 会長
林会長はあいさつで「JCSSAは任意団体の発足から21年で30周年を迎える。これからの10年で、何に取り組んでいくかということをあらためて考え直すきっかけにする。ニューノーマルの視点で活動内容を見直すRe-frameを今年のテーマに掲げていく」と述べた。例年実施している賀詞交歓会を中止としたことについては「IT関係の13団体の中で、最後の最後まで開催に向けて粘ったが、残念ながら皆さんと直接お会いすることはできなかった」と悔しさをにじませた。