豆蔵グループは10社ある主要事業会社のうち半数を4月1日付で再編し、組み込み系SIを中心とするグループと、業務系SIを中心とするグループの二つに統合した。持ち株会社の豆蔵K2TOPホールディングスの下に、事業会社を束ねる中間持ち株会社を置いてグループを形成。豆蔵など3事業会社を傘下に持つ豆蔵デジタルホールディングスはコンサルティングや組み込み系SIを軸とし、ニュートラルとオープンストリームの2社を傘下に持つオープンストリームホールディングスは製造や流通・小売りといった業務系SIを事業の柱に据える。中間持ち株会社に裁量権を大きく持たせ、グループ化による規模のメリットを生かす。(安藤章司)
相乗効果を意識したグループ構成で
成長の方向性を明確に
豆蔵デジタルHDは、グループ中核事業会社でITコンサルティングを強みとする豆蔵、制御系システムを手がけるコーワメックス、ERP導入のエヌティ・ソリューションズの3社を傘下に置く。三つの事業会社の従業員の総数は約800人で、ユーザー企業の業務プロセス変革を支援するITコンサルや、ハードウェアと密接に関わる制御ソフトや組み込みソフトの領域に力を入れる。
右からオープンストリームHDの吉原和彦社長とニュートラルの小屋晋吾社長
もう一つの中間持ち株会社のオープンストリームHDは、流通・小売業向けのシステム開発に強いオープンストリームと生産管理パッケージソフトなどを手がけるニュートラルを傘下に置く。半導体設計の事業会社ジェイエムテクノロジーからクラウドやIT基盤系の技術者約160人をオープンストリームに移管したことから、この2社を合計した従業員数は1000人以上に増えている(図参照)。事業会社のオープンストリームは首都圏の流通・小売業に強く、ニュートラルは東海地区の製造業を柱とする。ターゲット業種や商圏が異なることから「人材や技術の交流を通じて、新規顧客の開拓につなげていく」(オープンストリームHDの吉原和彦社長)と相乗効果を見込む。
中間持ち株会社を軸とする二つのグループの事業は、製造業などの業種領域が一部隣接するものの、「目指す方向性が大きく異なる」と、吉原社長は話す。豆蔵デジタルHDは製造業のビジネスモデル変革やハードウェアと密接するソフト開発を主軸に据えるのに対して、オープンストリームHDは生産管理など業務アプリケーション領域を主戦場とする方針だ。
例えば、豆蔵デジタルHD傘下のコーワメックスと、オープンストリームHD傘下のニュートラルは、ともに名古屋に本社を置き、地場の輸送機械関連メーカーの顧客を多く持つ。ただし、コーワメックスが生産ラインの制御を重点的に手がけるのに対して、ニュートラルは生産管理や需要予測といった分野に強みを持つ。「同じ製造業顧客の中で隣接する二つの分野だが、技術的な側面のみならず、営業先となる担当部門も異なるケースが多い」(ニュートラルの小屋晋吾社長)。敢えて二つのグループに分けることで、それぞれの役割と強みや成長の方向性を明確にする狙いがある。
「CASE」を見据えソフト起点の
設計プロセス変革を支援
豆蔵デジタルHDの注力分野の一つである自動車分野では、インターネットへの常時接続や自動運転、シェアリング、電動化を指す「CASE」が注目を集めている。CASEの具現化のカギを握るのはソフトウェアであり、ソフト起点の製品設計やサービス体系が必要になる。自動車のみならず、他の多くの製造業でも類似する課題を抱えており、豆蔵デジタルHDはここに大きなビジネスチャンスを見いだしている。
豆蔵デジタルHDの中原徹也社長は「ソフト起点でハードを動かすには、機械、電気電子、ソフト開発、AIの四つの要素が求められる」とし、機械や電気電子に強いコーワメックス、ソフトウェア工学やAIに一日の長がある豆蔵の持ち味を生かす。また、製造業ユーザー自身の設計プロセスも見直す必要が出てくるため、豆蔵が培ってきたコンサルティング能力も発揮して設計プロセスの変革を支援する。
豆蔵デジタルHD 中原徹也 社長
豆蔵グループはこれまで、M&Aを積極的に行ってグループ会社を増やしてきたが、主要な事業会社同士でより大きな相乗効果を生み出したり、発展の方向性を同じくする事業会社同士が連携する動きは限定的だった。今回のグループ再編は、まずは二つの大きな集団に強みを集約して大まかな成長の方向性を示した段階だ。中原社長は「グループ再編はまだ始まったばかり」として、今後のさらなる再編も示唆している。